Ep.17 運命は『変わる』ものじゃない『変える』もの
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(さあ、リピートアフターミー。それでも!)
理解不能。たかが言葉ひとつでなにが変わるというのです。
理不尽な運命を認めたくない、と言えばなにか変わるというのですか。
(疑り深いなぁ。それと、変わるんじゃなくて、変えるんだよ。言葉ひとつで変えるんだ。後ろ向きな自分を。絶望的な状況を。理不尽な運命を、な)
…………ッ。否定。運命を変えることなど――――
(俺は変えてきたぞ)
え?
(元の世界で俺は十五歳まで生きれないと言われたが、十八歳まで生きた。気に入らない運命を変えた。逆らってきた。マヌケな神モドキがいなかったらもっと生きてた。――――運命ってのは変えれるんだよ。オクトー)
ですが、状況は絶望的ですッ。
この墓場を脱出する手段などなく、動力となる第五霊石もなく、当機の身体もボロボロです! こんな状況でどうしろって言うのですか!
(それでもだ。ボロボロの身体を動かして、動力もどうにかして、この場所から脱出するんだ)
――――ッ。万に一つここから脱出したとしても待ってるのは絶望ですッ。
『深淵の王』エースゴブリン【炎鬼】を討伐しなければ出ることは叶いませんッ。現状の装備では到底敵う相手ではありません!
理解できますかッ。当機たちはこのダンジョンから出るのは不可能なんですッ!
(それでもだ。『深淵の王』だろうがなんだろうが、どうにか倒してここから出よう。不可能を可能に変えるんだ)
……ッ。……でもッ。…………ですがッ。
――――…………討伐したところで、ここから出れたとして、運命から逃げることはできません。
当機はひと月足らずで機能を停止します……。
これは避けることの出来ない確定事項なのです…………ッ。
(それでもだッ! 気に入らない運命なんか受け入れるな、逃げきれ! 確定事項だぁ? そんなもん未定に変えちまえ! オクトーはそんな運命イヤじゃないのかッ!)
…………いや……です。
(聞こえねえ! もっと声を張れ!)
嫌ですッ!
(おう、嫌だよな。じゃあ、もう一度聞く。オクトーはどうしたいんだ?)
当機は……ッ。――――当機は……これまで長い年月稼働してきました。
(うん)
約百年です。人種なら人生を充実に全うできる時間です。
(まあ、長いね)
たくさんの出来事がありました
たくさんの人たちと出会い、別れました。
たくさんの思い出が記憶に保存されています。
きっと、満足できる、良き一生と呼べるものです。
これ以上を望むのは過分だとわかっています。
でも…………ッ。
(でも?)
それでも、当機は終わりたくない……ッ!!!
頂いた『オクトー』の名を忘れてほしくないッ!
大事な想いが詰まった『思い出』を無くしたくないッ!
イクシーヴァ家の皆様から受けた『愛情』を返せてないッ!
頂いた名前も、大事な思い出も、受けた愛情も。
全部失わせたくないのです……ッ。
全部、全部、当機の宝物です。この世界に残したいのです……ッ。
(オクトー…………)
でも……当機がいなくなれば、忘れられたら、すべて消えてしまう……。
それは嫌です……。嫌なんです……ッ。
だから、当機は終わりたくない……。失わせたくない……。諦めたくない……ッ。
(そうだよな。大事なものは失いたくないよな。諦めるなんて無理だよな。――――じゃあ、最初にやるべきことは決まりだ)
…………ぐすっ。やるべきこととは?
(もちろん脱出――――二人で運命に逆らおうぜ!
理不尽を押し付ける、この素晴らしくクソッタレな運命さまにな!)
当機は…………諦めなくていいのですか?
(諦めなくていい!)
運命に…………抗えるのですか?
(抗える! 俺は生き汚さに定評のある男だ、信じろ!)
ハチは…………当機を助けてくれるのですか?
(え? ヤダよ?)
な……ッ。
(なに一人楽しようとしてんだよ。オクトーも頑張るんだよ。言っただろ。二人で運命に逆らおうって。俺たちは今、一つの身体に同居する二つの心。二心同体、運命を共有した二人だ。持ちつ持たれつ。一方的に『助ける』んじゃなく、『協力する』んだよ)
…………協力。
(そう、協力だ。力を合わせて、知恵を振り絞って、一緒に苦難困難を乗り越えて。これからもこの世界で生き抜いて、人生を楽しく謳歌しようぜ!)
……そうですね。一方的に助けて貰おうなど身勝手な話でした。
当機の問題をハチに丸投げするところでした。
では改めて――――ハチ。当機に協力してください。
当機だけでは乗り越えられない、受け入れがたい運命に抗うために。
(オッケーだ。じゃあ、オクトーはオレに協力してくれ。金なし、戸籍なし、体なし、常識なしでないない尽くしの俺がこの異世界で生きれるように)
了承しました――――では当機は全機能を解放して、無知無学異世界人・ハチに、この世界で生きる手助けをすると誓います。ついでに当機の中に住む許可も与えます。当機とハチは運命共同体です
(了解だ――――なら俺は全霊をかけて、うじうじ美少女メイド・オクトーに、このクソッタレな運命をぶっ飛ばすと約束する。ついでに許可なく意識を入れ替わらないともね。俺とオクトーは一蓮托生だ)
同じ道を征く当機たちに上下関係はなく。
(対等にいこうぜ――――相棒)
かしこまりました。相棒。
――――ところで、もはや当機は抗うことに否はありません。
ですが、どうするのですか?
実際問題。現状は根性論でどうにかできる許容範囲をはるかに超えています。
ハチに策はあるのですか?
(心配しなくても大丈夫――――舞台はアイツが整えてくれてる)
あ……空から、ゴミが…………。
(さあ――――反撃の準備しようぜ!)
次の更新は12/19の7:00です。
それと誤字報告してくれた方、ありがとうございます!
すみません。はじめての報告なので気づくのに遅れました。
そういえばそんな機能もあったな……という感想です。




