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Ep.17 運命は『変わる』ものじゃない『変える』もの

12/19修正済み



(さあ、リピートアフターミー。それでも!)



 理解不能。たかが言葉ひとつでなにが変わるというのです。

 理不尽な運命を認めたくない、と言えばなにか変わるというのですか。



(疑り深いなぁ。それと、()()()んじゃなくて、()()()んだよ。言葉ひとつで変えるんだ。後ろ向きな自分を。絶望的な状況を。理不尽クソッタレな運命を、な)



 …………ッ。否定。運命を変えることなど――――



(俺は変えてきたぞ)



 え?



(元の世界で俺は十五歳まで生きれないと言われたが、十八歳まで生きた。気に入らない運命を変えた。逆らってきた。マヌケな神モドキがいなかったらもっと生きてた。――――運命ってのは変えれるんだよ。オクトー)



 ですが、状況は絶望的ですッ。

 この墓場を脱出する手段などなく、動力となる第五霊石エーテリアルもなく、当機の身体もボロボロです! こんな状況でどうしろって言うのですか!



()()()()だ。ボロボロの身体を動かして、動力もどうにかして、この場所から脱出するんだ)



 ――――ッ。万に一つここから脱出したとしても待ってるのは絶望ですッ。

深淵ダンジョンの王』エースゴブリン【炎鬼レッドデーモン】を討伐しなければ出ることは叶いませんッ。現状の装備では到底敵う相手ではありません! 


 理解できますかッ。当機たちはこのダンジョンから出るのは不可能なんですッ!



()()()()だ。『深淵ダンジョンの王』だろうがなんだろうが、どうにか倒してここから出よう。不可能を可能に変えるんだ)



 ……ッ。……でもッ。…………ですがッ。

 ――――…………討伐したところで、ここから出れたとして、運命から逃げることはできません。


 当機はひと月足らずで機能を停止します……。

 これは避けることの出来ない確定事項なのです…………ッ。



()()()()だッ! 気に入らない運命なんか受け入れるな、逃げきれ! 確定事項だぁ? そんなもん未定に変えちまえ! オクトーはそんな運命イヤじゃないのかッ!)



 …………いや……です。



(聞こえねえ! もっと声を張れ!)



 嫌ですッ!



(おう、嫌だよな。じゃあ、もう一度聞く。オクトーはどうしたいんだ?)



 当機は……ッ。――――当機は……これまで長い年月稼働してきました。



(うん)



 約百年です。人種なら人生を充実に全うできる時間です。



(まあ、長いね)



 たくさんの出来事がありました

 たくさんの人たちと出会い、別れました。

 たくさんの思い出が記憶メモリーに保存されています。


 きっと、満足できる、良き一生と呼べるものです。

 これ以上を望むのは過分だとわかっています。

 でも…………ッ。



(でも?)



 それでも、当機は終わりたくない……ッ!!!



 頂いた『オクトー』の名を忘れてほしくないッ!

 大事な想いが詰まった『思い出』を無くしたくないッ!

 イクシーヴァ家の皆様から受けた『愛情』を返せてないッ!


 頂いた名前も、大事な思い出も、受けた愛情も。

 全部失わせたくないのです……ッ。

 全部、全部、当機の宝物です。この世界に残したいのです……ッ。



(オクトー…………)



 でも……当機がいなくなれば、忘れられたら、すべて消えてしまう……。

 それは嫌です……。嫌なんです……ッ。

 だから、当機は終わりたくない……。失わせたくない……。諦めたくない……ッ。



(そうだよな。大事なものは失いたくないよな。諦めるなんて無理だよな。――――じゃあ、最初にやるべきことは決まりだ)



 …………ぐすっ。やるべきこととは?



(もちろん脱出――――二人で運命に逆らおうぜ!

 理不尽を押し付ける、この素晴らしくクソッタレな運命さまにな!)



 当機は…………諦めなくていいのですか?



(諦めなくていい!)



 運命に…………抗えるのですか?



(抗える! 俺は生き汚さに定評のある男だ、信じろ!)



 ハチは…………当機を助けてくれるのですか?



(え? ヤダよ?)



 な……ッ。



(なに一人楽しようとしてんだよ。オクトーも頑張るんだよ。言っただろ。()()()運命に逆らおうって。俺たちは今、一つの身体に同居する二つの心。二心同体、運命を共有した二人だ。持ちつ持たれつ。一方的に『助ける』んじゃなく、『協力する』んだよ)



 …………協力。



(そう、協力だ。力を合わせて、知恵を振り絞って、一緒に苦難困難を乗り越えて。これからもこの世界で生き抜いて、人生を楽しく謳歌しようぜ!)



 ……そうですね。一方的に助けて貰おうなど身勝手な話でした。

 当機の問題をハチに丸投げするところでした。


 では改めて――――ハチ。当機に協力してください。

 当機だけでは乗り越えられない、受け入れがたい運命に抗うために。



(オッケーだ。じゃあ、オクトーはオレに協力してくれ。金なし、戸籍なし、体なし、常識なしでないない尽くしの俺がこの異世界で生きれるように)



 了承しました――――では当機は全機能を解放して、無知無学異世界人・ハチに、この世界で生きる手助けをすると誓います。ついでに当機の中に住む許可も与えます。当機とハチは運命共同体です



(了解だ――――なら俺は全霊をかけて、うじうじ美少女メイド・オクトーに、このクソッタレな運命をぶっ飛ばすと約束する。ついでに許可なく意識を入れ替わらないともね。俺とオクトーは一蓮托生だ)



 同じ道を征く当機たちに上下関係はなく。



(対等にいこうぜ――――相棒)



 かしこまりました。相棒マイバディ

 ――――ところで、もはや当機はあらがうことにいなはありません。

 ですが、どうするのですか?


 実際問題。現状は根性論でどうにかできる許容範囲をはるかに超えています。

 ハチに策はあるのですか?



(心配しなくても大丈夫――――舞台は()()()が整えてくれてる)



 あ……空から、()()が…………。



(さあ――――反撃の準備しようぜ!)



次の更新は12/19の7:00です。


それと誤字報告してくれた方、ありがとうございます!

すみません。はじめての報告なので気づくのに遅れました。


そういえばそんな機能もあったな……という感想です。


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