Ep.16 運命に逆らう言葉【それでも】
…………疑問。どうしたいもなにも、どうもできません。
当機たちはどうにもできない状況まで追い込まれています。
そんな状態で当機がなにか言ったところで――――
(そういうのはいい、いい。出来る出来ないじゃなくて、俺はオクトーがやりたいことを聞いてんだ)
…………困惑。やりたいことを聞かれても、当機は魔導人形。そういった欲求とは無縁です。
(最期くらい華々しく散りたいという願望くらいあります――――だっけ? お屋敷でオクトーが言ってた事だけど、なんでそんな願いを考えてたんだ?)
それは……――――意味なんてありません。
その場の戯言です。忘れてください。
(忘れねーよ。オクトーはさ――――どんな形でもいい。誰かの記憶に残りたかったんじゃないか?)
……………………。
(さっきも、誰の記憶にも残らず忘れ去られる存在になりたくないって、言ってたろ)
…………不要。もう、いいです。
(悪名でもいい、汚名でもいい。みんなに忘れられるよりずっとマシ)
……………………要請。もう、やめてください。
(自分がいた証を残したかったんじゃないか?
自分の存在をみんなの記憶に刻みたかったんじゃないか?
自分はここにいたんだと、高らかに叫びたかったんじゃないか?)
もういい! やめてください!
(………………)
正答! ハチの言う通り、当機は皆様の記憶に残りたかった、忘れてほしくなかった! 忘れられるのが嫌だった! なにも残せずに終わりたくなかったッ!
だから…………ッ。――――……愚かな人形として名を遺そうと思いました。
…………恥ずべき行為です。笑いたければ笑ってください。
(はーっはっはっはっは!)
…………無神経。本当に笑う人がいますか?
ハチは空気を読むことを知らないのですか?
(ハッ、オクトーが笑わせること言うからだろ。
恥ずべき行為?――――なにも恥ずかしいことなんてない)
――――ッ。……反論。ですが、当機は主に仕える魔導人形として間違った行動をしました。これを恥じずになにを恥じればいいのですかッ。
(間違いでもないし、恥ずかしくもない。誰かに自分のことを覚えていてほしい。――――それは『人』として当たり前の願いだろ)
…………否定。当機は『人』ではなく、命のない、『魂』のない人形です。
造物主が望んだ『究極』に届かなかった欠陥機です。
『究極の芸術』に終わりが設定されたのは、期待に応えれなかった罰なのです。
(ん? オクトーの事情は知らないけどさ。お前にはちゃんと『魂』があるぞ)
拒否。下手な慰めはいりません。
(いや、本当本当。なんたって俺をこの世界に送った邪知暴虐な超常存在さまのお墨付きだ。言ってたぞ「大事にされたものには魂が宿る」って、「魂が宿るものに俺をつめ込む」って)
当機に『魂』が…………?
…………もしそれが本当なら――――いえ。考えても無駄ですね。
この状況では手遅れ。気づくのが遅すぎました。
(まーた諦めてる……――――よし! じゃあ、ネガティブ思考なうじうじオクトーに俺がとっておきの『魔法』の言葉を教えてやろう)
疑問。魔法の言葉? ハチは国家認定の魔術師だったのですか?
(そういえば、ここって魔法の世界だった――――いや、本当の魔法じゃなくて、考えを前向きにするちょっとしたおまじないだ。絶望的な状況になったらこう言うんだ。【それでも】と)
それでも……?
(ああ、クソッタレな運命に逆らいたければ叫べ――――【それでも】!)
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