Ep.15 異世界にも厨二病っているんだ
すみません。十二話の投稿されていませんでした!
もしまだ読まれてない方がいたら、そちらからお願いします!
≪活動停止後しばらくして≫
(…………えっと~。ここなに?)
予想。おそらくダンジョンに還元されない魔導人形を廃棄する場所。
『鬼棲の原生林』第一層から最下層である三層まで貫く縦穴の最奥。
魔導人形の墓場。通称『ダンジョンのゴミ箱』内だと思われます。
死屍累々。周囲には過去破壊されたと思われる、おびただしい数の機能停止した魔導人形が山のように積み重なっています。見える範囲をざっと数えただけでも百体を超えていますね。
エースゴブリンは最後の一撃を回避した後、動かなくなった当機の身体を律儀に縦穴に墜としました。どうやら部屋の汚れが気になるタイプのようです。
それと無駄な破壊を嫌うようですね。あれだけハチが煽ったにもかかわらず、憂さ晴らしすることもなく五体満足でこの場所に捨てられたのがその証拠です。
(あ~、うん。おかげでこうやって話すことが、まだできるわけだけど……。どうするよ? 致命には至らなかったけど、状況は最悪だ)
現状確認。高所からの落下によるダメージは、先人たちがクッションになりある程度は緩和されましたが、左腕反応なし。右足首損傷。全身稼働域異常。
武装の炎霊狙撃銃『ほうき』は手放さなかったとはいえ、予備第三霊石は一つ。心許ないです。
満身創痍。弾薬枯渇寸前。非常用の内蔵第五霊石があるとはいえ、稼働時間は一分。その程度では出来る事は限られます。
(いまさらだけど、そのイグナリウムとかエーテリアルとかってなに?)
回答。世界を構成する五大霊素が結晶化したものをそう呼びます。
第三霊素『火』の結晶。第三霊石。
力強さ、情熱、情動、欲求を司る霊素で、結晶化した物は膨大な熱を秘めており、使用用途は幅広く、銃火器から生活家電まで使われます。
第五霊素『天』の結晶。第五霊石。
生命、魔法の根源、魂、意志を司る霊素で、結晶化した物は魔法発動媒体に使用したり、無機物に仮初めの命を吹き込みます。当機たち魔導人形には欠かせない動力源です。
(なるほどな~。いまはその命の結晶が切れたから動けないのか)
…………肯定。この世界――『アルティメシア』の常識なのですが、それを知らないということは、やはりハチは異世界からの来訪者なのですか?
(だからそうだって、言ってるでしょ。なんでいまさら真偽確認を――――そういえば、俺が異世界人って言ったとき痛い子扱いしてたね。それに関係ある?)
再度肯定。この世界には大昔に異世界から来た勇者が世界を救った伝承があります。
その逸話は様々なメディアミックスを経た結果。思春期の未成熟な心を直撃し、他者とは隔絶した存在になりたいという想いも合わさり、自身のことを『異世界人』と自称する子どもが続出。もちろんウソなので周囲からは白い目で見られ、イタい子扱いされます。
てっきり、ハチもその類なのだと当機は考えておりました。
ハチは当機が知る限り、現存する初の異世界人ですね。
(まって!? 俺って異世界版厨二病だと思われていたの!?)
再々度肯定。厨二病というものは分かりませんが、おそらくハチが想像しているものと一致するはずです。
補足するなら、ハチは最初に十八歳と名乗っていましたよね。
なので当機は「不憫。その歳になっても病気が治っていませんか」と憐れんでいました。
(言ってよ! かわいそうな子扱いする前に指摘してよ!)
謝罪。申し訳ありません。まさかハチが本物の異世界人と知らず無礼な態度を取りました。ゴーストをバスターする者たちを呼ばなくてよかったです。
(おぉう……。なんか急にしおらしくなった。いや別に怒ってるわけじゃないから、そこまで反省しなくても――――)
呼ぶべきは珍獣をハンターする者たちでした。世にも珍しい異世界人を高値で売り払う良い機会を逃してしまいました。
(なんの反省してんだ! 人身売買ダメ、絶対! それに追い出そうとしても、俺は絶対にここから退居しないからな!)
嘲笑。ハッ、当機の身体の大家は当機です。不法入居者の処遇を決める権利が当機にはあります。それが嫌なら他所の子になればいいのです。
幸いここには大量の魔導人形があります。好きなのを選んでください。より取り見取りですよ。
(全部事故物件じゃん! 見てあそこのマッスルな人形、頭パーンになってるじゃん! しかも全員、美形だけど判を押したように似た顔ばっかで不気味なんだよ!)
同意。あの魔導人形たちは量産機で個性というものがないです。気味が悪いというのは同意見ですね。
唯一ではなく、特別でもなく、どこにでもいるなにか。
決して誰の記憶にも残らず忘れ去られる存在――――当機はあんな風になりたくないです。
(オクトー…………)
結論。やはり唯一無二『究極の芸術』の魔導人形こそ至高。有象無象の魔導人形など比べ物になりません。
ハチが当機の身体から離れたくないのも理解できます。
(俺はそういう理由で出ていきたくない訳じゃ――――まあ、いいや。それで、どうする?)
疑問。どうするとは?
(オクトーはこれからどうしたい?)
次の投稿は12/17の7:00です。
Tips:『五大霊素+α』
世界を構成するメジャーな霊素。
『地』『水』『火』『風』『天』
すべての霊素を結びつける星廻魔導世界アルティメシアの根源。
『星』
『星』に対なり、すべてを無に帰す暗黒物質。
『虚』
この七つが星廻魔導世界アルティメシアで重要となる霊素だ。
ちなみにこの霊素の名前は、現世で言う一週間の曜日に当てはめられて。
月曜なら『地』。火曜なら『水』と言った感じで呼ばれている。
一週間の流れは↓の通りである。
・『地』~『風』の日が平日。
・『天』~『星』の日が休日。
・一ヵ月は↑の流れを五週。十二ヵ月繰り返す。
・年に数回ある『虚』の日が完全休日。
――――お分かりいただけただろうか?
そう、星廻魔導世界アルティメシアは週6日で、内2日が休み。
つまり4勤2休という、労働者にとって優しい勤務形態になっている。
…………まじ羨ましい。
なお、週休6日の某イクシーヴァ家のニートお嬢様には関係ない話である




