Ep.10 お前のようなゴブリンがいるか
(拝啓。元の世界のみなさん、お元気でしょうか?
俺はこれから元気じゃなくなりそうです。
いき着いた先の異世界で俺はメイド人形になりました。
それで、これからお掃除しに危険なダンジョンを潜ります。
え? なにを言ってるか分からない? そうですよね。
俺にも分かりません。
ただ言えることは、ここからはヤらなければヤられる修羅の世界。
魑魅魍魎が跋扈する危険な原生林ダンジョン。
平和な国で育った俺にどこまで出来るのか不明です。
それでも精一杯頑張ってみようと思います。
元の世界の皆さんが俺と同じ目に合わないことを願っています。
敬具。
追伸:いまチート無双を切に望んでいます。
もし余ったチート主人公がいたら送ってください)
「さあ、いくのですわ、オクトー! お布施や、あわよくばお宝を見つけたり――――。とにかく、この配信でがっぽり稼ぐのですわ!」
「…………疑問。その間ご主人様はなにをおやりで?」
「もちろん。オクトーのサポートですわ。いまこの瞬間も配信の設定やら、ダンジョン入場許可なんかの煩雑な申請をこなして――――≪ギュィーーーン≫ハッ! キタキタ! 虹色演出がきましたわーーー!!!」
「…………まさか、ソシャゲのガチャ回してない?」
補足。配信の設定は開始ボタン一つで終わりですし、ダンジョン入場申請はすでに終わっています。
いまお嬢様がやってるのは廃課金前提のゲーム『無限黄金域:ガーデンボックス』
数分で一般家庭ひと月分の収入が消える廃ガチャキャラゲー。
別名『無限にお金が消えるゴミ箱』です。
いま使い込んだお金はクレジット払い。来月に引き落とされます。
浪費癖は先々代当主譲りですね。
「つまり?」
手持無沙汰のお嬢様は、当機たちが稼ぐ予定のお金で遊び惚けています。
(追々伸:いますぐクソニートをはっ倒したい気持ちでいっぱいです。
男女格差是正パンチを躊躇わないラノベ主人公がいたら至急送ってください)
矯正不能。お嬢様の性根は殴っても治りません。
以前当機が試しましたがダメでした。
「オクトーさん意外と容赦ないね――――って、ご両親はどうしたんだ! なんでこうなるまで放置したんだ!」
先代当主夫妻はここではない、はるか遠い世界に旅立たれました。
「それってまさか、死――――」
肯定。魔界に存在する『死海』で、巨大海獣『魔黒』を捕獲するために魔黒漁船に乗って旅立ちました。借金返済のためですね。
とても遠い場所なのでしばらく帰ってこれません。
「ちがった!? 想像の斜め上空をぶっとぶ答えがきた!? ――って、魔界!? そういえば、ここファンタジー世界だった!?」
意味不明。訳の分からないことを言ってないで装備の確認をしたらどうですか?
ゲームに夢中の役立たずを気にする余裕はないですよ。
「結構、毒吐くね……。じゃあ、俺が持ってるどデカい銃はなに?」
有名銃器メーカー『炎は黄金を証明する』の傑作。
IAー八式狙撃炎霊銃『ほうき』――お掃除道具です。
つけ加えるなら五十年前の骨董品です。
「物騒なお掃除道具だなぁ……」
装着された第三霊石は満タン。予備霊石は――――三つ。少ない……。
小型異次元収納はありますが、サブウェポンと、榴弾は無し……。
予備第五霊石も無し。
お嬢様ケチりましたね……。
「知らない単語ばかりでよく分からないんだけど、こんな厳つい銃で相手にする魔物ってなに?」
回答。ゴブリンです。
「ゴブリン! はぁ~、よかったぁ。ゴブリンか~」
疑問。なぜハチは安心しているのですか?
「だってゴブリンでしょ? 大抵の創作物で序盤に出てくる最弱の敵。異世界初の戦闘がチュートリアルモンスターで良かった~」
再度疑問。ゴブリンが最弱? ハチは――――なにを言ってるのですか?
「へ?」
む? 反応感知。噂のゴブリンが出現したようです。
原生林の奥。反応は一体。まもなく姿が見えます。
「あのー……オクトーさん? このガシャン、ガシャンって音は?」
ゴブリンの足音です。
「いや、おかしい――――え? なにあれ?」
出現確認。個体名識別開始。
【ライブラリ】からの回答――――きました。
『汎用強化外骨格二式:森林迷彩仕様型ゴブリン【森鬼G型】』です。
「なんて?」
SFファンタジー世界のゴブリンが普通なわけがない。
Tips:魔黒漁
人類領域ではない危険に満ちた魔界の海に生息する巨大海獣『魔黒』
サイズはメガロドン。泳ぐスピードはミサイル。体表硬度はアダマンタイト。
気性が荒く、近づくものすべてに突撃をかます。
食性は肉食。人肉もいける口です。
この巨大海獣数体を狩るのにかかる日数は、十ヵ月超。
常に死と隣り合わせ、食うか食われるかの極限ハンティングだ!
こんな危険な漁に参加する者なんて、訳アリの者だけである。
ちなみに魔黒のトロは絶品。




