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第5話 7月25日。土曜日。午前。14歳の香川の夏_2

 「ただ都会の絵の具に~♪」 


 先月、同じクラスのまなみちゃんが、学校を休んで家族旅行で韓国に行った。前の週に「お土産は何がいい?」とわくわくしていたまなみちゃんは、月曜日と火曜日は学校を休んで、水曜日に笑顔で登校した。まなみちゃんは昼休みに、スマホで撮った仲睦まじい家族写真をみんなに見せながら、流行りの単色のアイシャドウをお土産にくれた。


 同じ週、パパは月曜日に仕事に行って、木曜日に疲れた顔で帰ってきた。泊まりが必要な仕事だったと何度も言っていた。木曜日の夜中に玄関で出迎えた私に、パパはお土産として、私が数年前に好きだったアニメのぬいぐるみをくれた。その週は私からママに連絡をしなかったから、ママとの電話やメールは一度もなかった。


 だから、パパの職場やママのいる香川は、韓国よりもきっと遠いのだろう。


 韓国は外国なのだから、パパの職場やママの香川だって外国に違いない。だって、そうでなければ整合性がとれない。同じ国にいるのに、海外以上に帰宅に時間がかかるなんて、たった5分でも連絡する時間を作れないなんて、そんなの許容することができない。


 「染まらないで帰って 染まらないで帰って~♪」


 それからしばらくして、同じクラスのくるみちゃんが、家族旅行でグアムに行った。くるみちゃんは、月曜日から金曜日まで学校を休んだ。


 パパの職場やママのいる香川は、グアムよりは近くて、韓国よりは遠いのだろう。どちらにせよ、外国には変わりない。


 晴れ渡る香川の豊かな緑を眺めながら、そんな不毛なことを考える。バスは緩やかに、そして着実に、私をママのもとへと運んでいく。

生まれる前に流行った懐メロにさえ、守られていた頃の懐かしさを感じる。

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