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最恐の男

 ピシャッ。

 ゴロゴロゴロゴロゴロ…


 常に雷鳴鳴り響く、雷雲の中にそびえる魔王城。


 その最奥にある、最も豪奢で快適な部屋が俺の棲み家だ。


 そのまた中央にある、黄金の玉座に腰掛け、俺は臣下、ベルゼホーンから血の色をしたワインを受け取った。

 ちびちびるなど、せこい真似は性に合わない。俺は王者の風格を持って、それを一気に飲み下した。


「で、今日の報告は……ぐ、ぐごがっ」


 俺は思わず喉を抑えた。

 息が苦しい。

 まさか、さっきの酒に何か入っていたのだろうか。

 口に手を入れ、さっき流し込んだ液体を懸命に吐き出そうとする。

 しかし…俺に毒は効かないはずだ。だから毒味などもさせないのだが。


 はたと横を見ると、ベルゼホーンの奴がニヤニヤ嗤いながら俺を見ている。



「き、貴様…ベル!言え、俺に何を飲ませたっ」

 片手で喉を抑えつつ、片手でヤツの襟首を掴み、持ち上げるもベルは薄笑いを浮かべるだけ。


「言えっ。貴様ごとき、片手で捻り潰してくれようぞっ」


「くっくっく、なるほど貴方は稀代の大魔王と呼ばれるお方。

 中級の魔物であれば、消し飛ぶほどの即効性の猛毒ですのに、まだ私を怒鳴る元気がおありとは。

 ですが、一動作で躊躇なく一気飲みされる魔王様の癖、まずかったですなあ。

 その薬は、猛毒のなかの猛毒、生きながらに聖なる乙女から搾った血を使った即効性だ。


 それも最高位の聖力を持つ。たとえ貴方様とて、無事には済まされますまい」


「く、くそっ…貴様ごときがそのようなものをどうやって…!

 ま…さか、アイツか!?アイツが…」


 喉を抑え、苦しむ俺の足を払い、ベルは私を床に転がした。

 そうして、むき出しになった腹の真ん中を思い切り鉄のブーツで踏みつける。


「ぐっ、があっ」

「くくく…ずっと、貴方をこうしたかった。そらっ、血で汚れた歪んだ顔も、ああ何て美しい…ああ…… そらっ!」


「ぐ、ぐあっ、ぐげっ」


 ベルは恍惚とした表情を浮かべながら、尖った足先で蹴り上げ、踵のヒールで同じ場所を幾度も踏みつける。


 くそっ、完璧に油断していた。反撃を試みるも、身体に全く力が入らない。

「くっ…あ…あ……」


 バキッ、ボキッ、ゴシャッ。


 骨が折れ、皮膚が破れ、肉が散る音。

己の肉片が、目の前に飛び散る。

 左の目玉が転がっていくのが狭い視界に映ったと思えば、やがてはそれも見えなくなった。


 ああ、身体が…崩れてゆく……


「はあっ、はあっ、あ、イイッ、イくっ、イっぐううううううううっ…!!」


 けっ、クソ変態め。

 こいつ、勃起してやがる。

 まあ仕方ないか。

 残忍、悪逆、退廃、背徳。

 それが俺たちの存在意義なんだから————


 薄れゆく意識の中、そんなことを考えた。


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