Reyuly side かわいい、可愛い、可愛そう
青い空、降り注ぐ太陽の光、活気ある街。平和を体現したような光景に、ユーリは微笑んだ。
「ユーリ様~!」
呼ばれた方を向くと、民たちが手を振っている。それに軽く振り返しつつ、歩を進めた。今日の目的地は、八百屋と本屋だ。
「やぁ、久し振り」
「ユーリ様!?お、お久し振りです!」
「ふふ、そんな緊張しなくて良いのに」
「無茶言わないでくださいよ…」
「まぁ、初めと比べて会話はできてるから、及第点かな?」
八百屋の手伝いである青年と談笑して、穏やかな時間を過ごす。最近の生活の様子について聞いていたら、思いの外長居してしまった。
「あぁ、随分と話し込んでしまったね。営業妨害だったかな?」
「いえ、むしろユーリ様目当てのお客さんがたくさん来たので、全然大丈夫です」
「おや、強かになったね」
「お陰さまで!」
それじゃあ、と別れを告げ、次は本屋だと踏み出したところで、幼気な子供の声が聞こえた。
「おかあさん、あのひとだぁれ?」
「なっ、こら!指差さないの!失礼でしょ!すみません…!領主様!」
「はは、大丈夫だよ」
朗らかに笑って、ユーリは幼児と目線を合わせるように膝を付いた。お貴族様が膝を付いたことに幼児の母親は目を白黒させるが、この街の古参は微笑ましい物を見るような、誇らしいような視線だった。
「初めまして、お嬢さん。僕はレューリ・デャン。名前も名字も発音しにくいから、皆からは『ユーリ』と呼ばれているよ」
「わ…!」
幼児はキラキラとした目でレューリを見る。彼女はお貴族様をこんな近くで見るのも、ここまで美しく優しく笑う人を見るのも、初めてだった。
レューリは気品を漂わせる動きで自身の髪紐を解いて、幼児の髪を括った。
「プレゼントだよ、お嬢さん。大切にしてくれると嬉しいな」
顔を赤らめさせて、幼児はこくこくと頷く。
劇のワンシーンのような光景に、老若男女問わず感嘆のため息を吐いた。
そんな舞台の主演は甘くとろけるような笑みを浮かべた。
※ ※ ※
「ただいま、フレーリ」
「…」
「野菜を買ってきたから、スープでも作ろうかな。具沢山のスープ、好きだったよね?」
かしゃり、鎖の音。
「おまえが気に入ってる本も買ってきたよ。新刊だ。それとは別に新しいジャンルのも買ってきたんだけど、読む?」
「…うん」
掠れた声が答える。
「あれ、水飲んでない?ダメだよ、ちゃんと水分補給はしなきゃ。動いてなくても水は大事って教えただろ?」
「うん、兄上」
「今日は素直だねぇ、フレーリ。ところでさぁ、」
にこにこ、レューリが笑う。
「僕がいない間、誰かと話してた?」
窓もない部屋に風がひゅるひゅると巻き起こった。
「…知らない、ネズミでも鳴いてたんじゃない?」
「そっか、なら良かった」
にこにこ、にこにこ。
「おまえは本当、かわいい弟だ」
甘く、あまぁく、溶かすように、解かすように、囁き、微笑む。
そんな兄を、フレーリはただただ見つめていた。




