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ずっと一緒にいるために


「……」


 その場の勢いに任せてキスをしてしまってから数分後。ようやく理性を取り戻した俺は猛烈に恥ずかしくなって、しばらく呆然としてしまう。


「賢者タイムに入ってしまいましたか、先輩?」


 一方花蓮はあんなに激しいキスをした後だというのに、全く恥ずかしがるそぶりを見せることはなく淡々としていた。さっきまでの貪欲な姿勢とは大違いすぎてギャップがすごい。


「……まぁ、そんなところかもしれない」


「そうですか。私とのキスが嫌で嫌悪感に浸っているのかと思って心配してしまいました」


「心配してたのか? いや、そんなことはないぞ。……すごく良かった」


「それは良かった。……初めてだったので、うまくできてるのか、実は心配でしたので」


 ゆっくりと微笑んで、安堵した様子を花蓮は見せる。ああ、なんだ。落ち着いているように見えても、内心花蓮もドキドキしていたんだな。本当に、そういうところが可愛い。


「それで、先輩。私たち、恋人になったんですよね?」


「……うん」


「本当に、嬉しいです。あまり感情を出すのは得意ではないので、なかなか先輩には伝わりづらいかもしれませんが、私、すごーく感動しているんですよ」


 いつもよりも少し口角が緩くなりながらそう語る花蓮を見ていると、心からそう思ってくれていることが伝わってきた。ずっと一緒にいたから、そうした些細な違いにも俺は気づくことができる。


 ……でも、これだけ喜んでくれるってことは、俺が真衣と付き合っていた時、花蓮は辛い思いをしていたのかもしれないな。その分も、俺は花蓮のことを愛してあげないと。


「ですが、しばらく私たちがこういう関係になったことは伏せておきましょう」


「……そっか、そうした方が今はいいか」


「ええ。先輩は浮気された立場ではありますが、私と付き合っていることがバレたら、お互いに浮気をし合っていたと認識されてもおかしくありません。そしたら、事態が色々と面倒なことにもなるでしょうからね」


 堂々と恋人らしいことができないのは辛いが、今は辛抱の時。逃げ切るまでの我慢だ。


「でも花蓮。……警察は、お前に目星をつけていないのか? 二人が目撃証言をした可能性もあるし」


「それはないです。二人はしばらく喋れませんし、そもそも私のことを喋れません。それに、警察に捕まるような下手な真似、私はしませんよ」


 どういった根拠なのか、俺には正直よくわからなかった。花蓮は普通のJKで、人を傷つけることに慣れているはずがない。なのに、余裕しゃくしゃくで警察に捕まらないと言えるんだろう。……でも、俺は花蓮を守ると決めた。いざというときは、ここから逃げ出せるよう準備をしておいた方がいいのかもしれない。


「それよりも、私は先輩が心配です。だって先輩、日高先輩に家に行っちゃったじゃないですか。容疑者候補に入ってしまってもおかしくないですよ」


「……あ! た、確かに……」


 俺は花蓮が犯人であることを知っているから全く考えていなかったけど、知らない人からしてみれば俺が犯人だって思われてもおかしくない。真衣が浮気していたことに逆上して犯行に及んだというのもしっくりくる。


 それに、俺は家から出た後の記憶がない。花蓮に助けてもらうまでどこを歩いていたのかわからないし、きっと側から見れば怪しさ全開の様子だっただろう。


「おそらく先輩は事情聴取をされると思います」


「だよなぁ……どうしよう」


「家に行ったことは伏せておきましょう。その日は学校や公園にいたといえば、ある程度はごまかせるでしょう。ダメであれば、私がどうにかします」


「ど、どうにかって……」


「ええ、先輩とずっと一緒にいるために頑張りますよ」


 花蓮は俺のために色々と頑張ることを約束してくれた。なら、俺も覚悟を決めないといけない。花蓮とずっと一緒にいるためにも、できることは全てやるしかない。


「……わかった。花蓮、絶対逃げ切ろう」


「はい、あんな二人に人生を台無しにされては困りますからね。ずっと、一緒にいるためにも」


 お互い見つめあって、俺たちは決意を語る。そうだ、二人のせいで俺たちのこれからを壊されてたまるか。花蓮とずっと幸せな日々を過ごすためにも、なんとしてでも乗り切ってみせる。


「それと先輩。そろそろ部誌完成させないとまずいですよ」


「あー!」


 色々なことがありすぎてすっかり忘れていたが、もうすぐ文化祭だったんだ! やばい、今から急いで作って間に合うかどうか……いや、間に合わせてみせる!


 それから時間ギリギリまで部誌の作成をして、途中マスコミに捕まりかけたけどなんとか逃げて、家に帰ることができた。


 けど、自宅には見覚えのない車が止まっていて。


「菅原明彦くん、ちょっとお話伺ってもいいかな?」


 花蓮の予想通り、俺は警察から事情聴取をされることになった。

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