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19/22

全部見てたから

「まさかこんなところまで追いかけてくるなんて……」


 部屋に荷物を置いて畳に寝転びながら俺はつい嘆いてしまう。大体文化祭終わったあとはあんな状態だったのにどうして元気になっているんだよ、おかしいだろ普通。


「本当ですね。私の目論見では、最低でも半年は動けないと思っていたのですが……やはり、加減はするものではありませんね」


「どうする花蓮、無視し続けるしかないか? 騒ぎを起こされても面倒だろうし」


「そうしたいところですが、向こうがそうさせてくれるかがわかりませんね。それに、あんなクソゴミビッチさんにせっかくの温泉旅行を邪魔されるのは癪ですから、普通に楽しみましょう」


「……それもそうだな。よし、じゃあ俺温泉入ってくる」


「では私も。七時前ぐらいに集合しましょうか」


 そんなわけで俺らは真衣のことを気にせずに温泉を楽しむことにした。おお、広々としていて種類もたくさんある。これならゆっくりできそうだ。とまぁ、長々と温泉に浸かっていたらあっという間に待ち合わせの時間が迫っていた。花蓮を待たせるのも悪いし、ちょっと早く出るか。


「ふぅ……風呂上がりにはコーヒー牛乳だな」


 少し早めに出たこともあって、まだ花蓮は風呂から出ていないようだった。それにしても、本当にいい湯だったなぁ。朝も入ろっと。


「あ! 明彦!」


「……は?」


 そんないい気分になっているところに水をさすように、真衣が許可も取らずに俺の隣に座ってきた。館内着の浴衣を着ているようだったが、どうもわざとらしく胸元が見えやすくしているように着崩していた。


「ねぇねぇ明彦、夜私の部屋にこない? お菓子とかたくさんあるからさ!」


「……」


 子供を誘拐する嘘じゃないかそれ。やっぱり、真衣は俺のことをそういう風にしか見てないってことがバレバレだな。


「明彦……。あのさ、明彦は騙されてるんだよ、福原花蓮に! あいつが私たちが浮気してたとか嘘をつかれたから、それを信じちゃったんだよね!? でも、それ嘘なの、あいつが明彦の気をひくための嘘だから!」


「……」


 もう喋らないでくれ。そう俺は心から願っていたけど、真衣はそんな俺の願いなんか察することをせずに、ひたすら嘘っぱちの弁解を言い続ける。きっと、俺が何も見ていないと思っているから、そのわずかな希望にかけてこんな無意味なことをし続けるんだろう。


 なら、俺が引導を渡してやるしかない。


「子供っぽい恋愛はイヤなんだろ?」


「……え?」


 さっきまでベラベラ喋っていた真衣の口が、急に止まる。どうしてそれをと驚いたんだろう。でも、俺はそんなこと気にせずに喋る。


「俺、全部見たから。真衣が夏樹と気持ちよくセックスしてるとこ。何がレイプされただよ、嘘にも程がある」


「い、いや……ち、ちが……」


「もう俺に関わらないでくれ。はっきり言って、俺はもう真衣のことが大嫌いだから」


「そ、そんな……ち、ちが……」


「おやおや、まだ諦めてなかったんですか?」


「!?」


 風呂上がりの花蓮が真衣のことを睨みつけて、俺の手を握る。


「もう、あなたに付け入る隙はないんです。また、病院に送りましょうか? それとも、今度こそ本当に死にますか?」


 そして何やら真衣の耳元で花蓮は囁いて、俺たちは真衣を置いて部屋に戻った。これでいい加減諦めてくれただろう、そう願いながら。


「……くそ、クソクソクソクソクソクソクソクソ…………!」

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