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■プロローグ
ジリジリとつきつけてくる太陽光は都会と同じはずなのに、なぜだか焼かれそうなくらい不快だった。
空気は澄んでいてのどかな風景。
時代が1つ、いや2つくらい昔に戻ったような田園風景。
懐かしさは、ある。
でも帰省の喜びはない。
『次は――』
停留所の名前をアナウンスされるよりも前に古くなったボタンを押す。
バスには私ただ1人。
あの事件から逃げ出した村は変わらず閑散としていた。
土の道を踏むのも何年ぶりだろう。
「戻ってこないよう言いましたのに」
石段の上から声が降ってくる。変わらず大人びていて鈴のような声色。
「シオン、おかえりなさい」
巫女服を着ているからとあだ名は「ミコちゃん」だった。そういえばフルネームはなんだったかな。
「まだバスはありますからお帰りになっては?」
その目は私を歓迎しておらず、冷ややかだった。
「……どうぞ。眠れる場所はご用意していますよ」
子供の頃は一段が高く感じた石段。今は苦には感じられない。