表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋の所労は私が直す  作者: 雅也
9/13

9話


                 9


 午後一時、大輝と待ち合わせだと言う、大きな公園に向かう。


 公園内の長い滑り台の前で待ち合わせなので、最初は美咲だけを行かせて、翔と遥は少し離れた場所で、大輝の来るのを待った。


 約10分後、少し遅れて大輝が来た。


 大学時代から全く会っていない大輝は、容姿がさらに良くなり、翔と同じくらいの身長、服装も決まっていた。

 美咲を見つけると、頬が緩んだ表情で、美咲の立っているところまで寄って来た。

 翔たちの距離からは、話声は聞こえないが、表情と身振り手振りで何となくだが、おおよその流れは掴み取れた。

 1分くらい話してから、二人は歩き出し、そのまま近くにある映画館へと入って行った。

 翔と遥も同じ様に入って行き、様子を見るために、同じ映画を見た。


 典型的な恋愛映画で、ラブシーンもそこそこあり、濃厚なシーンになると、遥は我を忘れて、翔の手を強く握ってきて、涙を流す時もあった。

 コレには翔も嬉しかった.....。 嬉しかった??



 嬉しい?



 何でだ?



                 △



 午後3時過ぎに映画が終わり、感動のあまり、遥は翔の腕に手を掛け、感動に更けていた。


 一方の美咲たちは、近くにある喫茶店で休憩を取るみたいだ。

 同じく離れた席を選んだ翔たちは、飲み物を注文して、二人の動向を見張る。


 先ほどの恋愛映画の影響なのか、美咲が中々話を切り出せないでいると、反対に大輝から美咲に話しかけている様だ。

 困惑した表情の美咲に、大輝は笑顔で話し続ける。 この笑顔が、二人だけになると、豹変すると言う事なのだが、想像がつかない。


 時々愛想笑いも見せる美咲だったが、あまり伸ばせないと思ったのか、真剣な表情と眼差しで、大輝に話しかけた。

 それを見ていた翔が (いよいよか....) と思い、さらに注目の二人を食い入るように見つめる。


 少しすると、大輝が驚いたような表情になり、その後すぐ、美咲に向かい身振り手振りで、色々と説得しているように見えた。

 それでも、美咲は首を横に振り、大輝の意見を拒む様な仕草が確認できる。


 やり取りが4~5分くらいしてから、大輝が立ち上がり、大声を上げた。


「何で分かってくれないんだ!」


 周りは驚きである。

 皆の視線が一気に大輝たちのテーブル席に注がれる。 だが、当の本人は、感情が先走りしていて、周りが全く見えていない。

 少し経って周りに気づき、再び席に座った大輝。 その後も、美咲を説得している。

 大輝の右手の拳に力が入り、腕を上げた所で、翔が席を立ち、走って美咲たちのテーブル席に行き、振りかざす大輝の右手を掴み、拳を下ろす前に止めた。

 周りが騒ぎ始め、大輝の目線が掴んだ翔とぶつかる。


「な!....翔....、何でここに...」

「取りあえず、良いからやめろ、大輝」

 拳を下ろさせて、翔が大輝に言い放つ。


「もうやめろ、こんな風にいつも美咲にDVをしていたのか、残念なヤツだな」

 感情が高ぶっている大輝は、矛先を翔に向けてきた。


「オレの女に何しようと、オレの勝手だ、お前には関係ない、黙ってろ」

「今なんて言ったんだお前?」

「オレの女にかまうな」

 コレには翔も、笑ってしまった。

「はははは....、大輝、とりあえず周りを見ろ。 みんな好奇な目でお前を見てるぞ、ほらあそこなんか。動画まで撮ってるぞ」

「な....そこ止めろ、撮るな!」

 スマホをかざしていた若いカップルが、スマホを引っ込めた。


「ま、取りあえず出た方が良いな、大輝、美咲」


「そうだな、取りあえず出てからだな、分かった」


 

                  △


 4人は場所を変え、先ほどの喫茶店からほど近い、カラオケ店に入った。


「なるほど、ここなら、じっくりと話し合えると言う訳だな」

「ああそうだ」


「さて、何処から始めましょうか?」

 遥の声を皮切りに、先ほどの話の続きが始まる。


「もうあなたとは一緒に居られない、わたし大輝とは別れる」

 最初話し出したのは、美咲だった。 しかし、その言葉はいきなりの、大輝に対する別れの言葉だった。


「何でだよ、オレ謝ってるじゃないか、そんな事言うなよ、オレはお前が好きなんだ、将来だってずっと一緒に居たいと思っているんだ、だから、分かれるなんて、考えられない」

「でも、もうあなたからの暴力には耐えられない、これ見てよ、治ったかと思ったら、また違う場所にアザが出来て、あなたは毎回DVの後に謝って来るけど、もう何度も同じ事の繰り返しよ、もうたくさん、もう私、痛いのはイヤなの」


 そう言いながら、美咲は長袖をまくっていた。

 そこには今までの美咲に対する暴力の痕跡がしっかりと残っていた。

「ココだけじゃあないわ、体中にあざがあるのはあなたも分かっているんでしょう?なのに、あなたは一向に暴力を止めてくれない、なら、分かれるしか無いんでしょ」

「だから、謝っているんじゃないか。 もう金輪際こんりんざい手を上げたりしないから、やり直そう、美咲」

 聞いていて、怒りがこみ上げてきた遥が、話に割って入る。


「あなたも懲りない男ね。 もうこうなったら、分かれるしか無いでしょ? 理解できないの? 女性が男から暴力を振るわれる...、コレがどんなに恐ろしい事か、振るう側のあなたには、一生分からないでしょうね」

「だからオレは........」


「分らないヤツだな、お前はいつ警察に行っても可笑しくない状態なんだぞ?、それなのに、まだこの犯罪を続けるつもりでいるんだ? 被害者の気持ちになった事が無いお前には、一生分からないだろうな」

 怒りの矛先を、同じ男の翔に向け始める大輝。


「負け犬のお前が、そん事言えるのか? 負け犬が....」

 コレには翔が笑ってしまった。


「ははは....、さっきの喫茶店でも言ってたな、そんな事。でも、美咲とオレは一言も 分かれ と言う言葉を交わしていないんだぞ? 分かるか? もう5年近くにはなるが、いまだにオレは美咲とちゃんとした 分かれ と言うものをしてないんだ、だから、お前のやった事は、略奪 なんだよ。 それも、相手の気持ちも考えてない、いや考えられないだろうな、お前と言う男は」

「ふん、何とでも言え、負け犬! 悔しかったら、また奪い返せばいいだろう? でも美咲はオレのモノだからな、無理だとは思うがな」

「お前のその根拠のない自信は、一体どこから来るのか、頭の中を見て見たい、だがお前の言っている事には矛盾があるぞ大輝」

 何の事だと、不思議そうにする大輝だが、すぐに不敵な笑みを見せる。


「なにも矛盾どころか、おかしなところはあったか? それとも、翔の言いがかりか? だったら、本当の 負け犬の遠吠え だな、あははは」


「本当に可哀そうで、おめでたいヤツだな、お前って 輩は。 さっきも言ったが、オレと美咲は合意して別れてない、今のお前は数年間の、間男、という事だ。 この 間男 に負け犬と言われて、こんなおかしいことは無い、これが笑わずにいられようか....」

「だが実際に、美咲はオレの下へ来た、コレは事実だ、コレに関してはオレの勝ちだな、負け犬」

  この言葉には、ただため息が出た翔。


「お前がオレに勝ったのは、ただの女たらしと言う事だけだ、それにまんまと引っかかった美咲にも落ち度があるが、オレの気持ちの何処かに隙間があったんだと思う、そこはオレにも責任があると思うが」


「ごめんなさい、翔。 こんな人に捕まってしまって、本当にごめんなさい」


「な、謝るな美咲、オレがすべて悪いみたいじゃないか」

「だってそうじゃない、あの学生だった時、翔が居ない時をみては、私を強引に引き連れていったじゃない、そうしているうちに、酔わせた私をあなたは、自分の良いように一晩抱いて........、それで、それで仕方なく翔を諦めたのよ、そうでなけりゃ....、そうでなければ、今でも私は翔の隣に居ることが出来たのに....、出来た....のに....うぅ、....」

「あなたって人は、それって完全に レイプ じゃない、犯罪は確定したわね」


 遥の言葉に、言い返す大輝。


「だがその後は、合意だぞ、どうだ、何も言えまい」


「そ、それは、もう翔が振り向いてくれなくなったから、諦めの心情になって、そうしたら、もうどうでも良くなってきて、そのままズルズルときてしまったのよ。 あなたに分かる? この女の気持ち」


 コレには何も言えなくなってしまった大輝。 そんな大輝を見て、翔が新たな事実をさらに突いてくる。


「大輝、お前は美咲だけでなく、オレと美咲が紹介した女の子にも、DVをしていたと言う事実も聞いているぞ、さらに、オレの友人が言っていたが、お前の高校時代の彼女にも、暴力を振るっていたと聞いた時には、さすがにオレも遥も驚いた。 生粋のDV魔だったんだな。 もう証拠があり過ぎて、逃げ道は無いが、どうするんだ? このまま警察に行くか?」

 それを聞いたとたん、翔に向かって拳を振って来た。


 最初は手で受け止めたが、反対の拳が、翔の腹に当たり、翔がよろめいた。

 その隙にさらに、止められた拳を振り払い、2発目がまた鳩尾に当たる、するとさすがに翔も跪いて、倒れ掛かる。

 その翔を、大輝は足蹴にして、何度も蹴り返した。

「やめて、やめてよ大輝、翔がケガするから」

「やめなさい大輝、これ以上暴力を振ったら、警察呼ぶから」

 そう言って、遥はバッグからスマホを取り出し、電話を掛けようとする。

 それを大輝は強引に奪い取り、それを床に叩きつけ、コップの飲み物を、さらにそのスマホにかけた。


「そこまでするの? 大輝、コレはもう、犯罪の上塗りよ、もうやめなさいよ」

「はは、もうここには用はない、美咲を連れてオレは帰る、じゃあな」

 そう言って、美咲の腕を掴み、部屋を出ようとした。........が、倒れている翔に足を掴まれ、大輝が前のめりに倒れこんだ。 手を掴まれている美咲もつられて前のめりになるが、手をついて前に屈んだ状態になった。


 それを見た翔が放った言葉に、他の3人が拍子抜けした。


「美咲。 パンツ見えてるぞ」

 そう言われた美咲は、慌ててすごい力で大輝の手を振り払い、赤い顔をしながら、慌ててスカートの裾で、隠しながら、立ち上がった。


 倒れた大輝は、振り向きざまに、右手の拳を出してきたが、その前に翔の右足が、大輝の顔側面に強烈にヒットした。

 その一撃で、脳が揺れたのか、そのまま気を失ってしまった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ