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恋の所労は私が直す  作者: 雅也
5/13

5話


                  5


 週が明けた月曜日、先週末に満から告白され、変な終わり方をしたのが、今になって罪悪感を覚える様になった。

 返事も返してなく、満から諦めたと言う、翔の優柔不断による終わり方をしたのだ。


 ハッキリと言うのならば、気持ちはスッキリとして、そのまま終わる事も出来ると思うのだが、最後は終始無言になった翔のポンコツぶりが、その罪悪感を湧き出させているのだった。


「翔」

 遥が、相変わらず、人気が少ない事務所の中で、翔のデスクに寄って来て、

名前を呼んだ。


「....なに?」

 朝から様子がいつもと違う事に、気が付いていた遥だが、タイミングを見て話しかけた。


「何かいつもと違う気がするけど、週末に何かあったの?」


 気づかれていた。 さすがに大学からの、親しい仲である。 隠し事も、仕草などでバレてしまうみたいだ。


「はは....、参ったな遥には。 どうせ黙っていても、ズカズカと聞き出してくるんだろ?」

「と~ぜん!」

 両手を腰に当て、すこし大き目な胸を張り出し、ドヤ顔でポーズする。

 その顔に、溜息をつきながら、翔は週末の満との出来事を、話した。



                 △



「そんなことがあったのね、翔。....辛かったんでしょう。よく耐えたわね」


 遥の労いとも言えるこの言葉に、翔は ハッとし、何か心の奥底から湧き出てきた感情に、涙腺が緩んだ。

 それに気が付いた遥が、すぐに休憩室に翔を連れて行った。



 休憩室の自販機の隣に翔を座らせて、遥は、知り合ってから初めての、翔の涙顔を、柔らかく、遥の胸に包んで頭を優しく何度も撫でる。


「よしよし....、よく耐えたよ 翔は。....」


 声こそ出さないが、初めて見るこの涙に、遥も涙腺が緩んできた。


「がんばったね...、良く耐えたね....、私が守ってあげるから、今ココで全部吐き出しちゃってもいいのよ、翔」


「うっ!........、くっ!........」

 そんな声しか出さない翔の頭に、遥自身の頬を当て、さらに優しく頭を撫でるのだった。



               ◇ ◇ ◇



 翔と大田おおたに 美咲みさきは大学に入ってから、サークルで知り合った。


 入学してからの頃の翔は、とても外交的で、人見知り、内気など言う言葉などは無縁だった。

 そんな明るい性格、見た目のそこそこの容姿で、誰も翔に対して、後ろ指を指す人物は居なかった。



「翔、お待たせ」

「おう。 オレもさっき来た所だがな」

「ま~た。 そんな気を使って~....」

「いいから、今日は全部終わったんだよな?」

「うん」

「よし、じゃあ行こか」

「そうだね」


 大田 美咲。 翔と同じ歳で、大学入学とともにサークルの説明会で隣同士になった事がきっかけで、親しくなり、その一ヶ月後に交際開始。

 

 そのサークルには、一条 遥も入っていて、三人は良く集まって、いろんな事を話したり、出かけたりと、それなりに、キャンパスライフを謳歌していた。

 その一条 遥と大田 美咲は、高校2年生の夏休みにバイト先で出会ってから、気の合う仲になり、高校は違っても、バイトシフトが重なっているので、『同じ大学にいきたい』と、二人の意見が一致して、今の大学に入った。

 そこに、たまたまサークルの説明会で隣同士になった翔が、美咲と息が合い、何度か会っているうちに、美咲から告白し、双方の両想いと言うのもあって、GW前から付き合う様になった。

 そこに、美咲の友人である遥とも知り合い、それで3人で会う事が多くなり、親交を深めた。


 2回生になると、同じサークルに、中村なかむら 大輝たいきと言う、同い年だが、一浪のため新しく入学した男子が来た。

 大輝も色んなサークルの説明を受けたが、結局は翔と同じところに入った。


 新入生だと思って接していたが、同い年という事が分かってからは、学年は違うものの、仲が良くなり、学内もとより、外でも一緒にいる事がちょくちょく増えた。

 ふとした時に、高圧的な態度を取るときがあるが、すぐに謝って来るので、他の友人と共に、普通に付き合っていた。


 長い夏休みも過ぎ、再び講義を受ける日々が始まり、翔は学内でも時々美咲と二人で居る事があるため、大輝にも見られていた。


 長袖を着るようになり始めた頃、大輝が『彼女かわいいな、紹介してくれよ』と言われたので、数日後、翔は大輝に美咲を紹介した。

 その時には、大輝は『いいな~、俺にも誰か紹介してくれよ』と言ってきたので、美咲は 翔と話をして、一人の同学年の女子を紹介した。

 キレイと言うよりも、可愛いその女の子と、暫くは付き合っていた大輝だったが、冬が過ぎ、梅が咲き誇っている頃になると、大輝の彼女に対する対応が、粗雑へと変わって来た。


 それからは、見る見るうちに疎遠になり、春休み前には分かれてしまった。


 その別れ方に、不審な事があったのに気が付いた。

 大輝に対して、彼女が怯えているように見えたのだった。

 彼女に聞いても何も言わず、さらにまるで、今までの事が無かった事にして欲しい様な言い振りだった。



 その頃から、大輝は時々、美咲とコンタクトを取る事が多くなった。

 それも、翔を通さずに、美咲にいきなり話しかけたり、わざわざ翔の居ない時を狙って、美咲と会っている事が、時々あった。

 それが、日を追うごとに、回数が増えていき、コレに翔が一言言うと、暫くは大人しいくしているのだが、暫く経つと、また美咲に言い寄ってくるようになり、その後は、夕方からの飲み会にも翔 抜きで誘う様になってきた。

 そうしているうちに、美咲と翔の会う機会が段々と少なくなり、ある日の事、とうとう美咲が朝帰りをしてしまったのだった。

 

 その事を翔は美咲に問うが、とても言えることじゃなく、後日、大輝から、美咲と深い仲になったと、報告があった。


 それを聞いた翔は、怒りと絶望で、大輝に対して拳を握るが、絶望の意識が大きすぎ、何もできないまま、美咲に別れを告げた。

 将来の事も考えていた翔にとって、この事はこれからの恋愛に、大きなトラウマを残すことになった。


 それからは、学内で大輝の顔を見ても、ほぼ無視状態にされる事となり、翔が大輝に声を掛けようとしても、忙しいから・・・時間が無い、などと、事情を聴く事さえ拒む様に、避けられた。


 美咲は美咲で、気まずいのか、それからは、全く学内でも翔の前に、姿を現す事は無く、連絡も途絶え、スマホも拒否されてしまい、全ての連絡と言うものが無くなってしまった。

「完全に避けられているな....」と、翔は美咲のコンタクトも諦めた。


 後に、友人である遥に聞いてみても。

「あの子、あれから連絡が取れないの、翔と私に気まずいんじゃあないかしら?」

 とは言っいていたが、翔と遥の友人関係は、以前のまま、変っていないので、遥の言う通り、気まずくなってしまったのだ。


 後日、大輝と高校時代からの親しい男子から。

『大輝は気に入った女なら、たとえ親しい友人の彼女でも、躊躇なく口説き倒すから、気を付けた方がいい』と言われたが、時はすでに遅かったのだった。


 それから翔は、人が変わった様に、陰の性格になっていった。


 その後、市内では時々、大輝と美咲が、歩いている姿を見た事があり、完全に さよなら 無しで、二人に裏切られての別れ が決定したと、そう思い込んだ。




                ◇ ◇ ◇





 全てを吐き出して、落ち着いてきた翔に、遥が温かいコーヒーを渡した。



「どう?落ち着いた?」


「ありがとう。 いつもホントに迷惑かけてゴメンな」

「何言ってるの。 やっと吐き出してくれて、私嬉しかったのよ」

「そうか....。 でも、今更こんなに、あの時の感情が溢れ出てくるなんて、根が深かったのかな?」

「そう思うわ。 だって、あの時の美咲と翔って、本当にお似合いのカップルだったと思うわ。 羨ましかったもの」

「それはもう言わないでくれ」

「あ、ごめんなさい」


 それでも、遥だけは、女性の中でただ一人、翔に一番近い存在だった。


 翔がさっきの一言で、何かが閃いた。

 

「遥。 オレ女の人と一生親しくなれないかもしれない。 だけど、....だけど、このままじゃあいけないと思うんだ、だから....」

 そのまま、言葉が詰まった。


「いいから言って、翔。 このままじゃいけない事に、やっと気が付いてくれたのね、嬉しい」

 遥が翔に微笑みを見せると、さらに続けた。


「....で、だから何? ちゃんと言って、最後まで言い切ってよ、翔」


 拳を握り、意を決し、口を開く。


「今更なんだが、一度 美咲に会って、ちゃんとケジメをつけてくる」

 今一番会いたくない人物の一人、元カノの 太田 美咲 に会って、心の決着を付ける事にしたのだ。






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