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恋の所労は私が直す  作者: 雅也
11/13

11話


                 11


 夕食も済み、そのままキッチンで両親と新カップルで話し合っていた。


「智子、今の会話はどう言う事かな?」

「あらまあ、聞いていたの、あなた」

「聞こえてしまったんだが....」

 父親に先ほどの事を知られ、これ以上にない位、遥の頬が 紅ほっぺ の様になった。


「あの~....、おじさん おばさん、これ以上続けると、遥が壊れてしまいしそうなんで、この話はこの辺で....」

 ハッと気が付いた誠が、気を取り直して、翔に向き合う。


「....で、翔くんは、これから遥と、どうなりたいのかな?」

 口調が変わり、キッチンなのに、真剣な誠の問いに、正直に答える。


「遥..さんとは、オレのせいで、今まで辛い思いをさせてしまったと思っています。 それなのに、沈んでいたオレの側で、いつも一緒に居てくれて、励ましてくれました。 物凄く感謝しています。 だから....、だから、今からは、これからは、オレが遥の幸せを一から二人で作っていきたいと思っています。なので....、遥さんとは結婚を前提として、お付き合いして行くつもりです。 どうでしょうか?」


 この言葉を聞いて、遥の瞳が潤んでいる。


「そうか........。翔くんは、遥の事、真剣なんだな?」

「はい!」

 翔は即答した。

「遥は?」


「翔だけよ、翔以外は考えられないから」


「だ、そうよ、翔くん。 今までの責任と、遥の気持ち、重いわよ~」

「は、はい。十分承知しています」

 誠が一度頷いて、翔に。


「いいだろう。 翔くん、これから遥の事、よろしく頼むぞ」

「はい。 こちらこそ、これからもよろしくお願いします」


 今まで散々来ていた家なのに、翔は新たな気持ちで、両親との付き合いが始まると思うと、遥の事も考えて、大切にしていこうと、心に誓った。



「さてさて、お風呂なんだけど....、どうするの?」

 また、母智子からの爆弾が落ちた。


「「!!」」

「智子。いい加減にしなさい。困ってるだろ?」

「あら、でも、これからは結婚前提なんだから、別にいいと思わない?」

「でもなぁ~」

「あらぁ、あなた、翔くんに遥を取られて、落ち込んでいるの?」

「そ!....」

「なあんだ、図星だったのね、仕方ないわ、翔くん先に入ってね、その後に遥が入りなさい、これでいいわよね、あなた」

「そ、そうだな....」


 両親に順番を決められ、翔が早速挨拶をして、脱衣場へ向かった。



                  △


  翔と、遥が順番に風呂から上がって、リビングでくつろいでいると、翔が気が付いた事を、智子に聞いてみる。


「おばさん、オレって、何処で寝たらいいんでしょう?」

 コレに、母親からの爆弾が落ちた。


「翔くん、今更何言ってるの? 婚約したも同然なんだから、遥の部屋に決まってるわよ」

「な!」

 爆弾が投下された翔は、やっぱりと思った。


「もうすぐ遥も、髪が渇くと思うから、来たら一緒に遥の部屋に行ってね、一応は別のお布団もあるから、うふふ」

 最後の うふふ は、また違った意味での爆弾投下だ。


 父親の顔を見ると、 むむむ と言う顔をしている。

 そう言っていると、遥が、可愛いスウェット姿で現れた。

(わ~。こんなカワイイ女の子が、オレの彼女なんて....)

 翔は、その姿に、KO した。


                  △


 あれから、両親に おやすみを言って、今は遥の部屋に居る。


 いつも良く来ていた遥の部屋だが、お互いの関係が変わり、これからこの部屋で一緒に寝るのかと思うと、何故か緊張してしまう翔だった。


「お布団敷いてあげるから、ちょっとこっちに座ってて」

 と、遥が言い、取りあえず、ベッドに移動させられたが、お互いがすれ違った時、遥のいい香りがしたので、たまらずに引き寄せて、そのまま軽いキスをする。

 そうすると、遥の顔が見る見る赤くなり、そのまま勢いで、ベッドに押し倒してしまった。

 何も抵抗しない遥は、上から見つめている翔と、目線がぶつかり、そのまま翔の首に手を回した。

 そのままもう一度深いキスをして、唇が離れてから、遥の表情が変わった。 そして、不思議な事を言い出した。


「翔。ごめんね、実は私って、ズルい女なの」


 翔も不思議な表情をする。

「何が?、どう言う事?」


 遥は、翔の首に巻いていた両手を、今度は翔の両胸に当て、ゆっくりと押し、自分も起き上がった。

「翔、一度座って。 話しておきたい事があるの。ううん、話さなきゃ、私の罪悪感が許さないの」

「なに? どういう事なのか、分からない」

「でしょうね。 でも、話さなきゃ、私がコレから苦しむの、だから聞いて」

 困惑している翔だが、取りあえず、遥の言う通りに、お互い向かい合わせに座った。

 そして、話難そうに、喋り出す。


「翔、あのね、私って、とっても計算高くズルい事したの。 ごめんなさい」

「最初から話してくれないか?」

「うん」

「実はね、実は。 私があなたと出会った時からの話になるの........」


                 △


 遥が翔と出会ったのは、大学2年の時である。


 当時、翔は美咲と付き合ってから大体一年が過ぎようとしていた頃に、学食で美咲から友人として紹介された。

 この初めて翔に会った時、遥は、落ち着いた雰囲気の、芯がしっかりした人だなと思った。 優しいのは、以前から美咲が言っていたし、喋る時には相手の目を見て、まるで心の中まで見透かされてしまう様な、透き通った眼差しに、何か体の中が動いた気がした。


 遥は、高校は女子高で、大学に入ってから、彼氏を見つけようと、中学以来の、共学に、浮き立っていた。 しかし、合コンと言うものに、軽さを感じ、それには誘いがあっても、一切断っていた。

 大学に入ってから、イメージを変えようと、服装を変え、メイクも学び、カワイイを目指す様になった。

 そうなると、見た目が変わった遥に、時々男子が告白してくる様になった。 だが、彼氏が出来た事の無い遥は、いざとなると、性格が邪魔をして、物怖じしてしまい、実際に彼氏が居たと言う経歴が無い有様だった。


 仲の良い遥と美咲は、大学では殆どと言って良いほど、一緒に居る。 そうなると、美咲の彼氏でもある翔にも良く会う様になってきて、3人で居る事がだんだんと多くなってきた。


 暫くすると、美咲に 翔の友人で、中村 大輝 と言う、一学年下だが、同じ年の男子と知り合う様になった。


 最初はこの大輝も含めて、4人で会って、結構キャンパスライフは充実していたのだが、遥と大輝が付き合う事は無かった。

 その頃から、偶に大輝が、翔の居ない時に、美咲に誘いを掛けて来るようになり、翔が居ない3人で、会う事も時々ある様になってきた。


 その頃から、遥は、大輝に不信感を抱くようになり、美咲には、大輝に対して注意をしていた。

 それでも、大輝の知り合いの飲み会などに、翔の都合の悪い時を狙うかのように、誘って来て、 「だったら、美咲ちゃんだけでも来てよ」 なんて言う様になってきて、時々は結構強引に、美咲を誘う様になってきた。


 再三、大輝には気を付けなければいけないと言っていた、とある飲み会で、とうとうあってはならない事件が起きてしまった。


 強引に誘われた飲み会に連れて行かれた美咲が、朝帰りをしてしまったのだ。



 それは、大輝と、美咲が、深い関係になってしまったと言う、あってはならない事態になってしまったと言う事だった。


 女性に対して、とことん だらしのない大輝は、元々自分好みの美咲を、翔が彼氏と十分知っているのにも関わらず、酔った美咲に自分の欲望を満たして、さらに奪っていったのだ。


 その事を知った遥は、怒りで大輝に対して、何か報復をと思っていたのだが、翔の変わり果てた様相を見て、大輝の復讐よりも、翔のメンタル面が心配で、居てもたっても居られず、報復の事よりも、翔の心の心配を優先した。


 それから数ヶ月経ったが、翔の心障は治らず、むしろひどくなり、今まで沢山居た友人も、一人二人と、段々と疎遠になってきて、さらに数か月後には、遥以外は誰とも親交が無くなり、一人ぼっちになってしまった。


 以前のような明るく、友人が多かった翔とは、全くかけ離れた日常が始まった。始まってしまった。


 その落ち込んでいた翔に、かつてからほのかな恋心を抱いていた遥は、この翔の状態をどうにかしなくては、何とかしなくてはと思い、この頃から 恋の所労は私が直す 事を、誓ったのだった。



 



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