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10-2. ピクニックに行こう(2)~待ち合わせ~

「ヴェリノ…… アイタカッタ……!」


「おおっ、1日ぶり! 元気だったか?」


「ちょ、ダメーッ! ボクがいちばんですよっ」


 5月10日、

 NPC(男の子たち)と待ち合わせの船着場で、真っ先に俺に飛び付いてきたのは、ミシェル…… ではなく、カホールくん。

 先日、初めての召喚授業で現れた 『嘆きの竜』 だ。


 俺を見るなり、エルリック王子の肩からバサリと飛び立ち、顔に貼り付いてきた。


「アイタカッタ…… イッパイ、シンパイシタ……」


 サファイアかな? 青い宝石の涙をザラザラと流しながら、鼻を連続でちゅーちゅーと吸ってくる。

 その尻尾を指先でつまんで、泣きそうになりながらチョンチョンと引っ張っているのが、ミシェルである。


「もー! お姉ちゃんはボクのですから! 早く離れてくださいっ」


「チガウヨ、カホールノ、ゴシュジンサマ、ダヨ……」


「…… うううっ……」


 緑色の大きな目に、みるみるうちに涙が盛り上がった。


「おお、ミシェルもこっちにきな! …… ふたりとも、喧嘩はめっ!」


「だって……!」 「ハイ、カホールモ、ソウオモウ……」


「ずるいよ、カホール!」 「クヤシカッタラ、ペットニ、ナッテミナ……」


「…… うわぁぁぁぁん!」


「おーよしよしよし、大丈夫だ、ミシェルもちゃんと可愛いぞ!」


 肩にカホールを止まらせ、ミシェルを抱っこして頭を撫でて泣き止ませる俺を、エルリック王子が穏やかに見つめてくる。


「早速懐かれるとは、さすがヴェリノだね」


「……ぎゃあぎゃあと、みっともないですね」


「おはよ、エルリック! ジョナスもおはよー」


 ふたりに挨拶をして、今一番気になっていることを聞いてみる。


「カホール、なんか喋れてるんですけど?」


「言語設定を日本語に直しただけだよ」


「そんなことが、できたのか……!」


 さすが高機能AI…… って、俺が気づかなかっただけ?


「でも、あの時ジョナスも気づいてなかったよなー?」


「…… あの時には、ヘブライ語辞書しかインストールされていなかったんですよ」


 だから 『ヘブライ語 ― 日本語』 と 『日本語 ― 日本語』 の辞書をカスタマイズして…… と、それなりに手間が掛かったらしい。


「おお…… 有難うなー!」


「いや、楽しかったし、いいよ」


「大したことではありませんから」


 口々に言ってくれる、エルリックとジョナス…… 面倒だったり怖いところもあるけど、いいヤツらだなー!


「……! ということは」 と、口を挟んできたのはエルミアさんだ。


「この美人さんふたりが、カホールくんを挟んでふたりきりの休日、ってことですか!? きゃーん♡ 尊いっ……」


「…… こちらは?」


「あ、あたし、エルミアさんっていいますー、よろしく! ルミたん、って呼んでね!」


「そうか、じゃあルミたん、よろしく」


 エルリック王子がノーブルに微笑んで握手を交わし、その隣でジョナスが 「ああ、そういうことですか」 とうなずいた。


「たまには越境して遊びに来たくなったりもしますよね。隣の芝生は青いというか、こちらにしてみれば良い迷惑…… 「ちょっと待った!」」


 流れるように放たれる慇懃無礼な毒舌を、ギリギリで遮る俺。


「なんですか」


「…… いや、その、な……? ショータロー先生も、『お客さんには親切に』 って言ってたし、ここはひとつ、抑えて、くれないかなぁっ、とか……」


「はて。なぜ、この私が狸型幼児の言うことなど聞かねばならぬとおっしゃるのでしょうか」


「そ、それは、だな……」


 ギロリと見下ろされた、冷酷な眼差し。いや前言撤回。やっぱり、ジョナスは怖い。

 怖すぎて、どもっちゃうぜ、もう……!


 何と説得したものか、と考えあぐねていると。


「…… まぁ、良いでしょう」


 ジョナスが、深いタメイキを吐きつつ、俺の頭にポン、と軽く手を置いた。


「…… 貴女に免じて」


 ぼそ、っと呟いてエルミアさんに向き合い、「宜しくお願いします」 と手を差し出す。


「尊いー…… 尊すぎるっ…… じゃなくてっ、よろしくですー!」


 エルミアさんは、瞳をキラキラさせながら、ジョナスとしっかり握手を交わしたのだった。




「ところで、もう9時過ぎなんですけれど、まだ揃っていないわね?」


「あ、イヅナさんがまだですね」


「あれ? そういえば」


 エリザとサクラのコメントに、ふと気づけば、もう待ち合わせを15分すぎているのに、イヅナがまだだ。



「あれ? どうしたのかな? 急にお家の仕事とかかな?」


「ああ、もうすぐ来るはずだよ、ほら……」


 エルリックが指し示す方向を見れば、ちょうど川下から、やたらと立派な帆船がゆったりと登ってくるところだった。

読んでくださりありがとうございます!

……ほぼ全員集合でめっさガヤガヤしてますが、ちゃんとわかるでしょうか…… (ドキドキ)


さて、昨日のお化け屋敷、リクエストくださった方ありがとうございます!

ヴェリノとエリザ、ヴェリノとジョナス、エルミアさんとエルリック王子、チロル特別出演のオーダーをいただいております。


リクエストはまだ受付中ー!要望がある方、ぜひお願いしますね。


感想・ブクマ・評価☆どうもありがとうございます。


※10/15誤字訂正しました!報告下さった方、ありがとうございます!

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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[一言] 今日もミシェルきゅんが尊(たっと)い( ˘ω˘ ) >「この美人さんふたりが、カホールくんを挟んでふたりきりの休日、ってことですか!? きゃーん♡ 尊いっ……」 ぶるうちいず先生「ルミたん…
[良い点] ……意外と毒持ちだな、カホールよ……。(笑) しかし、エルリックにジョナスといったキラキラとした外人さんネームの方々から、「設定言語を日本語に」とか言われるこのインパクトたるや……。 今…
[一言] ワイワイ楽しいですね (*´▽`*) チロルは難しそうなら、無理しないでくださいね☆彡
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