10-1. ピクニックに行こう(1)~お弁当作り~
5月10日、日曜日。
「おはよー」 「をん、をんっ♪」
「あら、きちんと起きたのね」 「くぅーん」
「おはようございます」 「きゃん、きゃんっ……」
「やっほー! ヴぇっち、グッモーニン♪」 「…………。」
朝6時に、俺たちは寮の部屋に集まった。
俺たち、っていうのは、ガイド犬たちと俺とエリザとサクラと……
「えええ!? なんでエルミアさんまでいんの? おっ、そうだ、ハッピーバースデー!」
「えー、誘ってくれたのヴぇっちでしょ! それから、どうも有り難う」
「だからって、弁当作りまで……」
「あら、働かざる者召し上がるべからず、ではなくて!?」
いつもより若干、気取った言葉遣いのエリザの頬が、いつもより若干、赤い。これはつまり……
「エリザっ…… いつの間に、エルミアさんと仲良くなったんだー? 人見知りさんなのに、よく頑張ったな…… 偉いぞ!」
「べ、別にっ、仲良くなってなんていなくってよ……!」
どうして、このあたくしが、たかだか1周目の激イージーコースの無課金プレイヤーとお友達にならねばならないのかしらっ …… と、俺が教えた覚えのない情報ばかり、まくし立てるエリザである。
「そんなー、つれないこと言わないでくださいよー、リズたん! 一緒にお煎餅パリポリした仲じゃないですかー!」
「ええい、おやめ!」
おおお、なんか、本当に仲良さそうだな。
――― 隠してもダメだ、俺には分かるぜ……!
「エリザはなー、本当に物凄くいい子なんだ! たまに上からな物言いとかもあるけど、慣れれば段々、快感になってくるから…… よろしくな、エルミアさん」
「もっちー♡ まかせてちょー♡ ていうかー、こっちこそ、みんなと仲良くしてもらえてマジマジマジ! 嬉しいから、よろぴくねー♡」
サクラがニコニコとエルミアさんに 「よろしくお願いします」 と挨拶する。
「さあ、急いでお弁当作りましょう。NPCたちの分もだから、けっこう大変ですよ」
――― そう。ピクニックの前、朝早くに集まったのは、ミッション 『全員分の弁当作り』 をクリアするためだ。
「エリザさんとヴェリノさんはお握り、私は卵焼き、エルミアさんさんは……」
「ル・ミ・た・ん、だよーっ。あ、サクラさんは、えーと、えーと…… 可愛い名前だからー 『サクラ・ロゼたん』 で!」
「めちゃくちゃ長くなったな!?」
「うーん、そーだ、じゃ、サクラん!」
「錯乱だなんて本人から一番程遠い表現だわ」
俺やエリザがついついツッコミを入れてしまう一方で、サクラは何を言われてもニコニコとうなずいている。
「はい。じゃあ、ルミたんはミートボールとブロッコリーの温め、ウィンナーの処理に、ミニトマトの洗浄お願いしますね」
「イエッサクラっちー!」
こうして俺たちの弁当作りが始まった。
サクラがフライパンに卵を少しずつ流し込みながら菜箸 (後夜祭のベスト料理人賞で貰ったやつだ) で慎重に巻いて行ってる傍らで、エルミアさんはサクラ特製ミートボールを電子レンジに入れ、ウィンナーをカットしてる。
「ちゅーちゅータコかいなー♡ お花も作っちゃおー!」
うん、楽しそうだな!
やがて、じゅー、という音がして、卵を焼く良い匂いにミートボールとウィンナーの匂いが混じり合った。 …… うぉぉぉ、美味そう! 早く食べたいぜ…… !
俺とエリザが作るお握りは5種類。
青菜とジャコとワカメの混ぜご飯、焼き鮭、昆布、梅、それから海苔や食紅で目鼻をつけたキャラお握りだ。
エリザがほかのお握りを作ってる間に、俺はひたすら、キャラお握り用に海苔をハサミで切る…… なかなか、細かい作業だ。
切った海苔や小道具は、まず1セットずつ、用意していた小皿の上に配置する。
ミシェルは髪の毛をカツオブシで彩り、目をちょっと大きめに。
エルリック王子の髪の毛は、なんと金箔で表現…… 味はさておき、豪華さはさすが、王子だ。
ジョナスの髪には佃煮の海苔を用意。イヅナは普通の焼き海苔をツンツンした髪型に切る。
それから、と、俺はコッソリ、サクラ、エリザ、エルミアさんの分の小皿も用意した…… なんでコッソリかっていうと、それは。
NPCたちのキャラお握りのデザインを担当したサクラが、『わたしたちの分ですか? 別に要りませんよね? 手間が掛かるだけですし。好意値にも友情値にも繋がりませんから』 と、物凄いスッキリサッパリ、俺らの分を否定したからだ。
うん、サクラは清々しいくらい 『ヒロイン』 なんだなー、と再認識した俺では、あるが。
――― やっぱり、せっかく作るんなら、エリザにもサクラにもエルミアさんにも、喜んでもらいたい。
だから、現実の家でばあちゃんに相談して、女の子たちのキャラお握りをデザインしてみたんだ。
エリザの髪は王子と同じ金、瞳は干し葡萄。サクラの髪は桜色のでんぶで、瞳は青の食紅を使う。
エルミアさんの髪は青海苔か焼き海苔かで迷ったが、結局は焼き海苔にした。髪の毛と尖った耳が両方分かるような形にカットするのだ。
3人とも、唇は梅干しペースト。これだけでも、めちゃくちゃ女の子らしくなるはずだ!
さて、これで下準備完了。後は塩お握りを作っては、ペタペタ貼り付けして彩るだけだ。
…… 失敗すれば、作り直し。気の抜けない作業が続くが、頑張るぞ。
「早くしなさいよ。キャラお握りが冷めないことには、お弁当詰められないんですからね!」
「オッケーオッケー、任せなさーい!」
定番の赤のドレスとそれに合わせた赤の三角巾、白いレースのエプロンで赤ずきんちゃんみたいになってるエリザが、雄々しく足を踏ん張って姿勢良くお握りを作るのに倣って、俺も足をだーん、と踏ん張りお握りを作り始めたのだった。
お久しぶりですー!
始まりましたピクニック編!
これから10話程度、毎日投稿予定です。宜しくお願いしますm(_ _)m
さてさて、若干ネタバレになるのですが、この後の閑話で、ヴェリノたちに、2人1組でお化け屋敷に行ってもらおうと思ってます。
で、ですねー。
カップリングのリクエスト、ありますか?
ヴェリノ、エリザ、サクラ、エルミアさん、エルリック王子、ジョナス、ミシェル、イヅナ、???(今章初登場のあの人)
から、2~3人1組で推薦していただければ有難いです! 有難いだけで誰もリクエストしてくれなくてもいじけたりしないから大丈夫(笑)、別に誰でもいーよー、って方はスルーしてくださいね。
ではでは、今章もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
感想・ブクマ・応援☆いつもめちゃめちゃ感謝しております!
10/14誤字訂正しました!報告下さった方ありがとうございます。