9-7. レベルアップと不機嫌さん(1)
「あー…… 今日のデザート最高すぎた……」
「美味しかったですね……」
「ま、あれなら認めて上げてもいいわ!」
炎の魔法 (プチファイアより難しそうなやつだ) を使い、目の前で表面を固く焼き上げた、甘くほろ苦いカラメルの載ったクレームブリュレ……
トロトロとパリパリ、上品な甘みとパンチの効いたカラメル、2種類の食感と味が絶妙なハーモニーで、『もーずっとここに居たい!』 と叫んでしまいそうになるところだった。
今は、例によって昼食後、ログイン前の寮の部屋での作戦会議タイムである。……が。
まだまだ、余韻に浸りたい。
「カホールも喜んでたなぁ……」
小さな手乗りドラゴンは、いっぱい 『タイーム』 って言いながら、オパールの涙をボロボロとこぼしてくれていたのだ。
嬉しくなって、半分以上ブリュレを上げたら、皆が自分のブリュレをひとくちずつ、俺にくれた。
もー! 皆の気持ちが嬉しすぎるぜ!!
思い出してカーペットの上をゴロゴロ転げ回る、俺。
チロルとアルフレッドとりゅうのすけも、三匹一緒にゴロゴロゴロゴロしてくれている。
カホールも一緒に連れてこればよかったところだが、今はエルリック王子に預かってもらってる。
(王子、嬉しそうだったなぁ!)
「はい、これどうぞ」
サクラが袋に集めた宝石粒…… つまりは、カホールの涙を渡してくれた。
「雑貨屋さんに持っていけば、きっと売れますよ」
「えっ、ほんと!?」
「をんっ、をんっ♪」
チロルの解説によると、
【小さすぎて宝石としては値段がつきません。が、キレイな砂としてインテリアに使えますのでww】
ということらしい。
おおおお!
すごいなー、カホールくん!
まさかお金になるアイテムを排出してくれてただなんて!
「いくらぐらい?」
【時価ですが、大体 0.1マル/g が基準ですwww】
「うむむ…… 渋いような、妥当なような」
「餌代の足しにはなるでしょうよ。ペットで儲けようなんて、もし考えてるのなら、軽蔑するところだわ」
エリザが呆れた顔で、びしり、と指摘した。
……うっ……、ごめんなさい。
実は、ちょっと考えちゃってました。
「そ、それよりステータス行くぜ!」
話題をそらせようと、慌てて空中で指をスライドさせ、ステータス画面を表示する。
≡≡≡≡ステータス ①≡≡≡≡
☆プレイヤー名☆ ヴェリノ・ブラック
☆職業☆ 学生
☆HP / MP☆ 36 / 14 ※
☆所持金☆ 4,820 マル
☆装備☆ 制服 / 学生バッグ / 普通の靴 /ー /ー /ー
☆ジョブスキル☆
・勉強 lv.3
☆一般スキル☆
・掃除 lv.3
・料理 lv.4
・飼育 lv.2 ペット数:2
・買い物 lv.6
・おしゃれ lv.4
・外出 lv.4 商店街、小運河 (舟)
・魔法 lv.2 プチファイア、プチアクア
☆ペット☆
1)チロル (ガイド犬、シェルティ)
2)カホール (使い魔、ドラゴン) 貸出中:エルリック王子
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「おおっ、なんだかチマチマ上がってるぞ!」
【勉強レベルが上がったことで、全レベルがやっと2以上になったのでwww HPとMPが3ずつ上がりましたww】
チロルがしっぽを振って解説してくれる。
「あと、なんか欄が増えてるー! 前まで 『ペット』 無かったよね!?」
【ペット欄は、ペット数が2匹以上になると出てくるんですよw】
「使い魔もペット扱いか……」
【この世界では 『パーティー』 は作れませんので、残念ですねww】
「いやいや、気にすんな!」
モフモフの胸毛をわしわしわし、とかき混ぜてやると、チロルが嬉しそうにクゥン、と鳴く。
本当に、なんたって、平和が一番、だよなぁ!
「ぅぉぉぉ…… 幸せ……」
「クゥン、クゥン、クゥン」
きっと、世の中の不幸な人たちにはモフモフが足りないに違いない! (たぶん真理)
「ほら、早く次、出してくれない?」
時計をチラ見しながら、エリザが急かしてくる。
「サクラのログアウト時間がきちゃうわ!」
「少しくらい遅くなっても大丈夫なので、お気遣いなくー」
「いやスマン! 急ぐから!」
優しく言ってくれるのは有難いが、現実世界で待ってるサクラの弟妹の方が、もちろんゲームより大事なんだぜ……! (真理度120%)
俺は急いで空中で指をスライドさせる。
次は、持ち物と称号だ。