9-4. 授業を受けよう(4)
最初に謝っておきます。
各方面の関係者の方…… 誠に申し訳ありません!!
ディスる意図は全く無いので、お許しくたさい m(_ _)m
『レグバ、十字路に住まう者よ、
我が求めに応じ 扉を開け
精霊の長たるウェドよ、
その白き身を以て 道を示せ
虹の化身たるウェドよ、
招かれし者に 力を与えよ
臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前
オン・キリキリ・バサラ・ウンハッタ・ソワカ
急急如律令
かしこみかしこみもうす 』
ショータロー先生が、なんか色々混じってるっぽい呪文を唱え、しっぽをピョコピョコ揺らしながら、エルミアさんの砂絵の周りを跳ね回ると……
「ミィィィ…… ミィィ……」
絵から煙がボワボワと立ち上がって、その中から細いネコみたいな鳴き声が聞こえた。
こ、これは…… 成功かっ!?
ゴクリと唾を呑み込み、見守っていると……
「ミィィィィ」
煙が消えた後に現れたのは、手のひらサイズの、白い羽が生えた仔猫だった。
濃いめのグレーの毛皮に、宝石みたいな青い瞳…… うぉぉぉ! 砂糖菓子がヨチヨチ歩いてるみたいだ!
これはキュン死発動レベルだな……!
「やった! アメリカン・ショートヘアの翼猫でたぁっ!」
エルミアさんが大きな声で叫び、仔猫に向かって手を差し出すと……
あれ? 逃げられてるぞ。
いかにも飛び慣れない感じで、砂絵の台紙の隅っこにヨロヨロと飛んでいき、プルプル震えてる。
「えっ、なんでなんで!? ほらー、あたしがママだよ!」
……それは無理があるんじゃなかろうか。
「ほらほらほら! こっち来てー!」
焦って大きくなる声に怯えたのか、プルプルしながら、ますます離れようとする仔猫。
ショータロー先生の方へヨタヨタと翼を動かし…… 丸っこいタヌキの耳の間にちょこん、と収まった。
「かっわいいーーー!」
思わず、俺も叫ぶ。
タヌキ獣人の少年と、翼の生えた仔猫…… なんという……
「はぁううう! 尊いっ!」
ルミたんも、叫ぶ。
仔猫がますますプルプルしてるが、こっちの胸もプルプルしてるんだぜ……!
「なにこれスチル必須か!? ルミたんカメラ持ってるなら撮ってくれ! そして後で俺にも送ってくれ!」
「オッケー!」
興奮しまくったエルミアさんがひとしきりスチルを撮りまくった後。
「65点」
ショータロー先生が、厳かに点数を告げた。
「きっちり召喚できるモノを仕上げたのは偉いのじゃ。じゃが…… マナーがなっておらんのじゃ」
「「マナー?」」
「お客さんに急に大声出したらビックリするじゃろ。まずは、『いらっしゃいませ。ようこそお出でくださいました』 なのじゃ」
な、なるほど……
召喚術、奥が深いなー!
次は、俺だ。
ショータロー先生が俺の砂絵を教卓に置き、またしても色々混じってるっぽい呪文を唱えながら周りを跳びはねる。
ピョコピョコ動くしっぽが、相変わらずラブリーだ…… そして。
モワモワと煙が立ち上ぼり、砂絵全体を隠す。
…… そこに、居るのか? 俺の召喚獣……!
白い煙の中に目を凝らすと、青い鱗がキラリと光った気がした。
「エロい、エロ……」 んん?
「エロい、エロい、レマ……」
なんだって……!?
レマさんって誰……!
「エロい、エロい、レマ、裁く谷!」
ああー…… なるほど。
『エロいレマさん』 にドキドキしたのはやっぱり勘違いだった、とちょっとホッとする俺である。
全年齢対象ゲームらしく、エロいレマさんは、谷さんによって裁かれるのだ!
……と、それはさておき。
そんなことを言うコイツは一体何者だろうと、俺は卓上に目を凝らした。
モヤモヤとした煙が次第に薄まり、すっかり晴れると、そこには……
翼の生えた、手のひらサイズの青い竜が、さめざめと赤い宝石っぽい (ルビーかな?) 涙を流していた。
…… ええええ!?
内心の悲鳴を抑える、俺。
――― 確かに、こんな姿のドラゴンは描いた。
背中に乗って空を飛んだり、海で一緒に泳いだりできたら楽しいだろうな、と思ったから。
でも、でも……
…… 俺、こんな悲しそうな性格設定、してないんですけど!?
…… ええええええ!?
ひたすら叫びたいのを、グッと我慢する俺である。
――― 相手は異界からのお客さんなんだ。
たとえ出会ったその瞬間から、ボロ泣きしていようとも……!
「えーと…… ハジメマシーテ、コンニチーハ。ワタシ、ヴェリノ、イイマース……」
作り笑顔でなるべく優しく言う、俺に、ショータロー先生は85点をくれて、こう言ったのだった。
「わかってると思うのじゃが…… 通じて、ないぞよ」
ともかくも、こうして召喚術・初級の授業は無事にクリアし。
その後、俺たちは約束通り、ショータロー先生を抱っこしたり耳カイカイしたり、召喚獣たちも混ぜて一緒にスチルを撮ったりして、充実したひとときを過ごしたのだった。
…… しっぽだけは、なぜか、触らせてもらえなかったが。
そして、俺のドラゴンは、ずっと泣き続けていた。
――― 俺、なんかやっちゃったんでしょうかっ!?




