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閑話 5 ~エリザとサクラとお買い物(4)~

 ペットショップで、モフモフな毛が暑そうなチロルのために冷感シートを買い、その足で呉服店に向かう。


「うっわーー! 豪華ー!」


 店のショーウィンドウには、重たそうなキンキラの和服がかかっている。


 艶のあるクリーム色からピンク色のグラデーションになっている生地に、大小色んな種類の花が描かれていて、なんかよく分からんが、これはもう芸術の域だな、たぶん!


 値段も……


「げっ…… 15万マルぅぅ!? 誰が買うの!?」


「恐らくは重課金者か、悪役令嬢コースで3・4周プレイしている人なら……」


 サクラによると、こういう値段の高い振袖は、一点一点が手描きの限定生産なんだそうだ。


【到底、手が届きませんよねww】


 チロルがしっぽをパタパタ振りながら草を生やすが、俺に異存のあるはずが、ない。


「無理無理無理っ…… イヅナ、ごめん! 俺には無理だっ……」


「いや……そもそも、買って、とか言ってない!」


「ふっ、ヴェリノが無理は当然ね! このあたくしでも、買おうとすら思わないのだから」


「あの、それ浴衣じゃないです」


 俺がパニックを起こし、イヅナとエリザが賑やかにそれぞれの意見を述べるのを、サクラが落ち着いて止める。


「ピンキリですから。プリント地の浴衣なら、5000マルから、ですよ」



 さて、そんなワケで。


「お揃いで似合って可愛いとなると、やはりコレかしら」


「あっ、コレもイイと思いますよ!」


 呉服店 『志乃』 でエリザとサクラは次々と俺たちに浴衣を見繕ってくれ……


「おいー……まだ、試着あんの?」


「オレ、これもけっこう似合ってるんじゃないか? さすが、サクラのチョイスはセンスあるなぁ!」


 俺が次第にゲンナリとしてき、イヅナが次第にイキイキとノってきたところで。


「コレね」 「ですね」


 サクラとエリザは、やっと、うなずいたのだった。


 ――― 肌触りの良いネイビーブルーの生地に一面、和風っぽい花と葉っぱが散りばめられている。

 嫌味にならない程度に色とりどりで、バランス良い感じだ。


「イヅナさんはもちろんですけど、ヴェリノさんも背はそこそこあるので、大きな柄が似合いますね。それに花模様も可愛いです」


 サクラが満足そうにうなずけば、エリザが 「ふっ…… さすがはこのあたくしのチョイス!」 と自画自賛する。


「なるほどなー!」

 ひたすら感心する、俺。


「な、イヅナ! 諦めないで良かっただろ?」


「そうだな…… って、ちょい待て! オレ、これ着るのーっ!?」


 ふと我に返ったかのように慌てるイヅナに、エリザがピシリ、と言い放つ。


「往生際が悪くてよ?」


「なに……!?」


 一瞬、むっとするイヅナ。たぶん、イヅナにとっては 『潔さ』 ってのは大事なんだろう。


 そこを、サクラがすかさずフォローする。


「心配されなくても、イヅナさんに良くお似合いでしたよ?」


「えっ、ほんと!?」


「ええ、もちろん」


 ほんわかした笑顔を向けられ、 「じゃあ、いっかなー、うん!」 と、へにゃりと崩れるイヅナであった。


 ……サクラもけっこう、『恐るべし』 だよなー!?



 さて、ともかくも、浴衣は決まった。

 イヅナと俺、2人分の浴衣を抱えてレジに向かい……


 俺は、世の中の非情さを知ることになる。


「えええっ!」


 開いた口が塞がらない。

 なんとなれば。


 ――― その浴衣は、なかなか高級そう(ぼったくり)なお値段だったのだ。



 1着につき、1万2000マル。



「高いよ! キリは5000マルからじゃなかったのかー!?」


「それはどっちかというと、ピンな方ですね」


 何しろ綿紅梅の50着限定品ですから、現実世界(リアル)の値段に比べたらこっちは5分の1以下ですよ…… と、サクラが呪文を唱える。


「なんか良くわからんけど、そうなのか……」


 えーーっ! ていうことは、俺買っちゃうの!? コレ!?


 ――― 確かに。

 イヅナに 『買ってやる』 って言ったけどさ!


 それに、確かに。

 肌触りはいいし、柄もかわいいけどさーっ……! 


 そしてそして、確かに。

 せっかく、エリザがチョイスして、サクラも賛成してくれたんでは、あるけどさーーーっ!


 ………………

 ………………

 ………………。



「はい、3万マルいただきます! お釣りお確かめください!」



 ――― 結局、買ってしまう俺であった。




 この後、皆で船に乗ってケーキ屋 『Mon Chaton』 へ行き、皆に1個ずつケーキをおごったついでに、先週ここでエリザに変な感じになったことを思い出して、また逃げ出したくなったりして ―――



 結局、財布の中身は、4,820マル。



 ――― どうやら俺にとって、所持金5ケタは、一瞬の夢だったようだ……。



 けど、ま、いっか!


 楽しかったしな!


 夏祭りがくるのが、待ち遠しいぜ……!

読んでくださり、ありがとうございます!


これにて閑話5は終了です。

……何も閑話にすること無かったんじゃ、って感じでイヅナとの仲が変なことになっていますが(汗) それほど好意値はまだ上がってないはずなので無問題……!


次回はいよいよ後夜祭!

更新予定は…… 今週来週とバタバタしそうで目処が立っておりませんが、来週半ばを目指して頑張ります。しばしお待ちくださいませーm(_ _)m


でーーはーー!

めちゃくちゃ暑いので、熱中症などお気をつけください!

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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[一言] くぅ~!!これは必要経費なれど、なかなかに手痛い出費ですな~!(泣) それにしても、イヅナは単純な奴かと思っていたら、なかなかに良い感じの内面を抱えたヤツですね! これ、深みにハマったら…
[良い点] >重課金者か、悪役令嬢コースで3・4周プレイしている人 ゲーム中でのお金持ちの表現の仕方が最高です!ww [一言] 綿紅梅を知らなかったので勉強になりました (*´▽`*) 数話前の『女…
[良い点] なんだかんだ言って、ギリギリ買えるレベルでのチョイスをしてくる女子2名が恐ろしい……! これって確信犯ですよね、ね! うひょぉー……。
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