7-13. レベルアップと天然王者(2)
≡≡≡≡ステータス ③≡≡≡≡
☆プレイモード☆
恋愛なし(好意値半減)/友情
称号効果 +25%
☆交遊 (PL)☆
◆エリザ・テイラー : 公爵家令嬢・学生・ルームメイト
◆サクラ・C・R : 子爵家令嬢・学生
◆リーナ2525 : ショップ 『リーナの万屋』 店長
◆ねこねこねこん : ショップ 『Mon Chaton』 店長・猫型獣人
◆アイリス・グリーン : ショップ 『アイリス&ヴェーナ』 店長
☆交遊 (NPC)☆
◆エルリック・クレイモア : 王子
(好意値)853 (友情値)625
◆ジョナス・ストリンガー : 侯爵家次男
(好意値)813 (友情値)430
◆ミシェル・ブロックウッド : 伯爵家長男
(好意値)755 (友情値)465
◆イヅナ・T・J・クルス : 海運王家・男爵家長男
(好意値)180 (友情値)180
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「え……!?」
俺はステータス画面の一点を3度見した。
―― エルリック王子の腰巾着ことジョナス・ストリンガー侯爵家長男。
学園祭の今日いちにちだけで、俺への好意値、+790の上昇。ちなみに友情値は、+400の上昇だ。
「やったわね」 「やりましたね」
俺の横でエリザとサクラがハイタッチをして喜んでいる。
「………… えええ!?」
「ぅおんっ!」
【やりましたねw】
「チロルまで!」
エリザが俺を振り返った。
「まぎれもない快挙よ! 喜びなさい!」
口調も心なしかはずんでいる…… そんなに嬉しいのか、ジョナスの 【攻略ボーナスタイム】 が実在したことが。
サクラが手の甲を口にあて 「ふふふふ……」 と怪しげな笑いを漏らした。
「硬い氷であるからこそ、いったん溶け出すと止まるところを知りませんね……」
「単に自制心がないだけともいうわね!」
「まぁ、王子との薄い本の方がスタンダードと認識される程度には、女の子には塩な方ですから」
考え考え、分析してみせるサクラである。
「つまり恋心慣れしていなくて、 『これは何だ!?』 と思っているうちにズンズンと無自覚に好意値が上昇してしまうタイプ、ということでしょうね」
「恐ろしい子!」
エリザの発言はジョナスに向けられたものではない。口もとにあてた半開きの扇の上からのぞく、その紫がかった青の目は…… 明らかに、俺を見ている。
「ツボ発言より24時間限定での好意値上昇幅2倍仕様×天然王者…… 恐ろしすぎるわっ!」
「天然王者、って、俺のことじゃないよね?」
「ヴェリノ以外に誰がいるというのよ!」
ばいーんと胸を張るエリザの横では、サクラまでがうんうん、うなずいている。
「これはもう、決定ですね」
「もちろんよ」
エリザがパチン、と扇を閉じ、その先端を俺に向けてくる。
「いいことヴェリノ!? 明日の後夜祭でも、ジョナスの前でその天然を極めるのよ!」
「ええっやだ!」
俺は身震いした。
―― 明日、後夜祭が始まるのは午後6時。ちょうど、ジョナスの24時間限定・攻略ボーナスタイムが切れたあとなのだ。
ボーナスタイム中のジョナスはけっこう優しかったと思う。俺と仲良くしようという気が2%くらいはあったんじゃないかと…… そう信じたくなる程度には。
だがしかし。
魔法が解けてしまったあとは絶対に、100%王子の腰巾着でできた冷凍触感魔王に戻るに違いない!
「それならせめて、攻略ボーナスタイムが切れるまえに、ジョナスを買い物に誘うとか」
「ふっ…… 残念ね、ヴェリノ」
エリザがふたたび半開きにした扇の陰から俺を嘲笑してきた。
「敵はそれほどイージーではなくてよ!」
「ジョナスさんが誘いに応じるのは、好意値が1000超過してからなんですよ、ヴェリノさん」
サクラによると、ジョナスは色々と特殊なキャラであるらしい。
「デートの誘いは、好意値によらず、成功率40%。
もし成功しなかった場合には、好意値が-100、下がりますから…… 大体のプレイヤーはジョナス攻略の際、向こうから誘いがかかる1500まで待つんですよ」
「誘っただけで嫌悪持ってきやがるって、乙女かコラ」
俺はつい、ここにいないジョナスにツッコミ入れてしまった。
だってサクラは 「ジョナスさんは王子第一ですから…… 職務を阻むような誘いは 『わかってないな』 と思われるんでしょうね」 と言うけど ――
そのサクラの解説によると、ほかのキャラはまったく違うんだから……!
―― このゲームの 【恋愛モード】 、コンセプトは 『恋人との甘々な日常生活』 。
つまりジョナス以外のキャラは超イージーで、好意値が500を超えたところで 『成就エンド』 確定コースに入るらしいのだ。
「ハッピーエンド確定になると、デートの誘いは絶対に断られないうえ、こっちが目の前で 『バーカ』 とののしったとしても好意的な反応を返してくるという、ちょっと気持ち悪いことになります」 というのがサクラの説明だった ――
「いやいやいや…… ジョナスとほかのキャラ、両極端がすぎるよ! もっと普通のはいないの!?」
「あたくしはむしろ、ジョナスのほうが普通に見えるわね」 とエリザ。
扇を軽く揺らしながら 「まあもっとも」 と唇を曲げた。
「もし、あたくしがデートに誘ってあげたのに断るオトコがいたとしたら、再起できないほどに罵り倒すでしょうけれど」
「ジョナスでも!?」
「もちろんよ!」
エリザ、強え……
「まぁ、ともかく」
サクラはかすかに肩をすくめつつ、ジョナス攻略解説のまとめに入った。
「好意値が1500いって誘いがかかるのを待っているうちに時間が経って、最終的に微妙なエンディングを迎える、というのが、ジョナス攻略者の大体のパターンなんですよ。ボーナスタイムを活用しまくっても、好意値1500は厳しいですからね」
「え? 俺、1日でその半分いったんだけど……」
「ほほほほっ! だからあたくしは、あなたに 『天然王者』 の称号を授けたのですわ、ヴェリノ!」
エリザが扇の先を俺にびしりと向ける。本日2回目。
「光栄に思いなさい!」
「その称号のどこに、光栄な要素が!?」
どっちかといえば恥ずかしいよ!
「まあまあヴェリノさん」
サクラがトイプードルのりゅうのすけを抱っこし、その背中を優しくなでる。
「つまり、後夜祭でも、ヴェリノさんらしく振る舞えばいい、っていうことですよ。あまりいろいろ気にしても、ヴェリノさんの場合は意味ないと思いますし」
「そのとおりよ! サクラもたまには、いいこと言うじゃない?」
「ふふふふ。エリザさんの 『天然王者』 もいい称号だと思いますよ?」
―― なんかエリザとサクラ、俺の知らないところで仲良くなってない?
いやまあ、いいことなんだけど……
なんだか、ほんのりと疎外感!
「そもそも。俺らしく、っていわれても……」
「大丈夫ですよ、ヴェリノさん。ヴェリノさんらしさが最高のパフォーマンスをあげることは、すでに数値が証明していますから」
サクラの眼差しが、ステータス画面に注がれた。
「さすが、わたしたちが見込んだ総受け要員ですよ、ヴェリノさん!」
「総受けって……」
俺、このゲームではいちおう、女の子なんだが!?
「ま、期待してあげないこともないわね!」
「がんばってください、ヴェリノさん! とにかく、ヴェリノさんらしく!」
エリザとサクラは瞳を熱くうるませながら、口々に俺を応援してくれた。
うーん…… なんかちょっと釈然としないところもあるけど……
ま、こんなにエールを送ってもらったら、やるしかないか!
俺らしくすればいいだけなんだもんな!
「よし! じゃあ、明日の後夜祭も、めいいっぱい楽しむぞ! 俺らしく!」
てことは、ヒラヒラふりふりのドレスはムリに着なくてもいいってことだしね!
ドレスを買ってくれたミシェルは、なんとかして言いくるめ…… げほげほっ、謝り倒して別で埋め合わせをすることにして……
と、サクラがふと真顔に戻った。
「あ、でも、衣装はちゃんと、ドレスにしてくださいね。制服も軍服もダメですよ」
俺の心の声、聞こえちゃってたのかな……?
読んでくださり、ありがとうございます!
ジョナス…… 心は揺れても変わらず塩な人、な設定にちゃんとなっているでしょうかw
さて、次回また、閑話を少し挟んで、後夜祭編に行きます。再開は8月15日または16日予定。宜しくお願いしますm(_ _)m
ではー。熱中症などなどお気をつけて、良きお盆をお過ごしくださいませ!
感想・ブクマ・応援☆いつも大変に感謝しておりますー!!




