17-26. レベルアップと誕生日(4)
サクラがスチルカメラの画面を切り替えると、そこには、たった今さっきの俺たちの姿が何枚もうつっていた。
俺の両隣にサクラとエルミアさん (くっつきすぎだ!) 俺の上には、エリザ。
スチルだからもちろん音声はついてないけど、まったりおしゃべりをしているのがよくわかる。この自然な感じは、自動スチルならではだな。
「うむ…… 素晴らしき出来だ」
「好きなの選んでくれたら、あとで送りますよ」
「やった! サクラまじで天使さま……!」
「だって、もったいないじゃないですか」
「ありがとう、ありがとう……!」
「ま、せっかくだから、もらってあげてもいいわ!」
「エリザさんには額縁つきで送りますね。誕生日ですし」
「…… そんなこと、頼んでないわよ!」
エリザの顔が真っ赤になった。
「けど、まあ、その、貧乏な男爵令嬢の分際でどうしても贈りたいっていうなら…… サクラ。あなたの今度の誕生日は覚悟することねっ!」
「はい」
サクラがくすくすと笑った。
「ねーねー、サクラっちー! あたしもいいー?」
「もちろんですよ」
「わー! サクラっち大好きー! ありがとー!」
みんなで1枚ずつスチルを見て、「これいい!」 とか 「あら、ヴェリノ面白い顔してるじゃない?」 とか言いながら選んでいく。
「あっ、これ良くないー!?」
「おっ、わかるよエルミアさん! これ俺も好き!」
「ふんっ…… そうね。まあ、あなたがたの選択に、つきあってあげてもよくってよ?」
俺たちが選んだのは、みんなの顔がいちばん近づいてて、めちゃくちゃ仲良さそうなスチルだ。
「われながら尊い……!」
「わかるー! 大きくしてリアルでも飾りたいよねー!」
「リアルでは無理ですけど、大きめにして送りますね」
「わお! サクラもう女神さま……!」
「ほめすぎですよ…… それで、あの」
サクラがスチルカメラをしまいながら、言いにくそうに口ごもった。
「どうした、サクラ?」
「ええとですね、ちょっと話が戻っちゃうんですけど……」
「うっとおしいわね。さっさとお言い!」
それでもサクラは、数秒迷っていた。よっぽど、言いにくいことなのかな。
「―― あの、ペットショップのアルバイトは…… わたしは、遠慮しますね」
「あ、そっか…… サクラは、デザインの勉強もあるし、リアルで弟妹の世話もあるもんな!」
「弟妹は最近、少し手がかからなくなったんですけど…… やっぱり、ちょっと」
「そっか……。わかった!」
サクラだって俺たちと一緒にアルバイトしたいんだけど、どーしょーもないんだよな。
別に俺たちと全然遊べなくなるわけじゃないし、気にしなくていいことだ。
だけどサクラは、すごくしょんぼりしてしまった。
「ごめんなさい……」
「ふっ…… なにをバカなことを」
「ですよね、自分勝手なのはわかって 「違う、サクラ! そんなわけないじゃん!」
いつもは冷静なサクラでも、自分のことだと、案外わからないものなんだな。
「 ―― エリザは、俺たちに謝るなんてバカなことしなくていい、って言ってるんだって!」
「ななななにを勝手に……! そ、そんなわけ……!」
「あーるーよーねー、リーザーたーんー?」
エルミアさんが起き上がって、エリザの顔をのぞきこむと、エリザから 「くっ……」 という声が漏れた。
「をんをんをんをんっ♪」
「きゃんきゃんきゃんっ」
「くぅーん……」
「………………」
俺たちのガイド犬もそれぞれに、賛同してくれて、エリザはついに折れたのだった。
「だからつまり、サクラはサクラで、好きにすればいいのよ!」
「そうそう。みんなが違うことしてても、俺たち友だちなんだから!」
「きゃー、ヴぇっちー、かっこいいー! あたしもー、みんなー、だいすきー!」
エルミアさんには同意だけど、エリザごと上に乗っかるのは…… あちこち密着してていろいろ苦しい。
―― 肉の焼ける匂いがいよいよ濃くなって、部屋の外から男の子たちの声がした。
「お肉、イイ感じアルよ! 早く来るアル!」
「おぶ…… 肉焼くしか能のない変態が、王子を差し置いて彼女をせかすなど言語道断」
「いいよ、ジョナス。ガブさんの焼き肉は実際、とても美味しいのだから」
「そうだね。私も本格的に焼き肉を学びたくなったよ」
アリヤ船長は、ガブさんを持ち上げる気半分、芸域をさらに広げる気半分、といったところだろうか…… 世界中の料理をモノにする気なのかもしれないな。
「エルミアさんさん……? もう、用事は済んだよね?」
物柔らかな口調で圧をかけてきてるのは、もちろんハロルド。扉をとんとん叩く音が、イヅナとミシェルだな。
「サクラ! 早く一緒に食おうぜ!」
「お姉ちゃんっ、ボクもお姉ちゃんと一緒がいい!」
「おう、ミシェル! すぐ行く」
俺がステータス画面を消すと、エルミアさんとエリザはやっと、俺の上から降りてくれた。
ふううう…… なんとか無事だったぞ (いろいろと)。
サクラがとん、と床の上に降りながら、残念そうにキングサイズベッドを振り返った。
「かんじんの交流画面、見ないままになっちゃいましたね」
「ほんと。のろのろしてるからよ」
「ま、あとでいいじゃん!」
「それもそうですね」
サクラがうなずいた。
「ステータス値でわかることなんて、一部だけですし」
「そうそう! それに、ステータスはいつでも見れるしな」
「そんなこと、わかってるわよ!」
「いつでも見れるからー、かえって見なかったりするけどねー」
俺、エリザ、エルミアさんはほとんど同時に、ふかふかのベッドから滑り落ちた。
「みんなで競争! ドアまで!」
俺たちは、肉の焼ける匂いめざして、いっせいにかけだした。
≡≡≡≡ステータス ③≡≡≡≡
☆プレイモード☆
モブコース(好意値半減)/友情
称号効果 ± 0%
装備品効果 +25%
☆交遊 (PL)☆
◆エリザ・テイラー : 公爵家令嬢・学生・ルームメイト ※誕生日 04/02
◆サクラ・C・R : 子爵家令嬢・学生 ※誕生日 07/07
◆エルミアさん : 男爵家令嬢・学生 ※誕生日 05/10
◆リーナ2525 : ショップ 『リーナの万屋』 店長
◆ねこねこねこん : ショップ 『Monモン Chatonシャトン』 店長・猫型獣人
◆アイリス・グリーン : ショップ 『アイリス&ヴェーナ』 店長
◆ののみや しの : ショップ 『志乃』 店長
◆エルファバ・W. : ショップ 『魔法道具専門店 エレメントゥム水郷』 店員
◆ヤーサミーナ22 : 『リヤド アーイシャ』 オーナー
◆りん☆りん : 『ファンタナール 森のロッジ』 オーナー
☆交遊 (NPC)☆
◆エルリック・クレイモア : 王子
(好意値)7,668(友情値)8,228
◆ジョナス・ストリンガー : 侯爵家次男
(好意値)11,628(友情値)4,352
◆ミシェル・ブロックウッド : 伯爵家長男
(好意値)8,814(友情値)6,524
◆イヅナ・T・J・クルス : 海運王家・男爵家長男
(好意値)1,535(友情値)13,753
◆ガブリエル・ロッソ : ルーンブルク王城 専属アサドール 20歳、通称ガブさん
(好意値)690(友情値)590
☆交遊 (その他 NPC)☆
◆アリヤ・K・T・クルス : 豪華客船 『ブルー・アテナ』 船長、イヅナの叔父
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ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます!
『輝ける陽のあたる世界』 本編はこれにて終了。引き続き、エピローグ2話で完結です。
もうしばらくお付き合いくだされば嬉しいです。
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