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輝ける陽のあたる世界~ツンデレ悪役令嬢と一緒に幸せ学園生活!のんびり日常するだけのVRMMO~  作者: 砂礫零


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17-5. 初日の出と新年の目標と。

 1月1日、夜明け直前 ――


 俺たちはぞろぞろとかまくらの外に出て、雪の上で日の出を待った。


 まわりを取り囲んでる林の、葉っぱが落ちた木の枝が、少しだけ明るくなった空をバックに黒々と沈みこんで、静かだった。

 雪を踏む音までが聞こえてくるくらいで、さっきまでいた、にぎやかだったカマクラの中が嘘みたいだ。


 ―― 空が、だんだん黄色く明るくなっていく。それにしたがって、林の影はますます暗く、濃くなっていく気がする ―― ところが。


 ほんの少し太陽が顔を出した、その瞬間。

 赤っぽい光の線が、木々の枝を包んでる真っ白な雪にさして、透き通ったピンクの花がぱっと咲いたみたいになった。

 太陽が上ってくると、そのぶん、花がどんどん開いていく。


 ―― こんなきれいな光景、この世にあるんだろうか!?


 変わっていく景色に、ぼうっと見とれていて…… 気づいたら、太陽はもう、向こうの山から半分以上のぼっていた。

 あっちの山もこっちの山も、ふちが金色にそまったシルエットがカッコいい。時間が止まった海の、大きな波の間にいる感じがする。


「明けたなあ!」


「をんをんをんをんっ♪」


「お姉ちゃん、明けましておめでとうっ!」


「おう、ミシェルもチロルも、今年もよろしく!」


「ふふふっ。今年もボクと一緒に遊んでね、お姉ちゃん!」


「もちろん!」


「カホール モ!」


「カホールは王子でいいでしょっ」


「ヤダー! ヴェリノモ イルモン!」


「ずっるぅぅぅい!」


「もちろん、カホールもよろしくな!」


 ミシェルとカホールをいっしょに抱っこして、高い高いしながら、みんなに改めて挨拶をする。


「今年もよろしくな、みんな!」


「よろしく、ヴェリノ」 「よろしくね」 


 エルリック王子と実は一緒にいたモラハラヤンデレ彼氏・ハロルドが、朝日を浴びつつ上品にほほえんだ。キラキラエフェクトは3倍増しだ。

(だがハロルドはその実 『エルミアさん以外は失せろ』 とか思ってそう。)


「よろしく、ヴぇっちー!」 「よろしくな!」


 元気よく俺の肩を叩いてくれるのは、エルミアさん(ルミたん)とイヅナ。ふたりとは、去年よりももっとたくさん遊びたいなあ!


 みんなでワイワイしてる中でも、孤高を保ってるのはやはりというか、ジョナスだ。


「ジョナスもよろしく!」


 わざとらしく向こうを向いてるやつの手を、両手でもってブンブン振ってやったら、なんと 「はいはい」 とタメイキ混じりの返事があった…… 奇跡だ。


「すごい…… ジョナスがなんか優しい!」


「返事ひとつで、おめでたい人ですね?」


「だって、今年もお世話してくれるってことだろ?」


「自分でなんとかしようとは思わないんですか、あなたは」


「いや、思っててもいつもジョナスがお世話してくれるじゃん!」


「図々しい……」


 そんな俺たちをスチルカメラで撮影してくれてるのは、もちろんサクラ。上ってくる朝日の中の振り袖姿が、まじで女神さま……! イヅナが見とれて、デレデレした視線を送ってるのも、わかるな。

 目があうと、 「今年もよろしくお願いします」 とニッコリしてくれた。


「おう! 俺のほうこそ、よろしく」


「まったく。何回、今年もよろしくすれば気がすむのかしら」


 エリザもサクラとはタイプの違う感じで女神様…… アゴをツン、って上げた豪華な振り袖姿に後光がさしてる感じで、拝みたくなっちゃう。


「エリザ! 今年はエリザの誕生日もお祝いしような!?」


「そっ、そんなの要らないわよ……! 大体あなた、あたくしの誕生日なんて 「4月前半」


 エリザが黙った。図星だな。

 ―― これまでずっと、誕生日聞いても教えてくれなかったのは、去年は俺と出会った時点で過ぎていたから…… と考えれば、つじつまがあうのだ。

 高飛車な言動のかげで実は変に気遣いしてる、エリザらしい。


 サクラが俺とエリザのツーショットを撮ってくれた。


「エリザさんの誕生日は、去年のぶんも合わせて、いっぱいお祝いしましょうね。ね、ヴェリノさん」 


「そうだな! 今年の最初の目標だ」


「そういうことなら、会場には城を提供するよ」


「さすがエルリック!」


 初日の出の中のロイヤルなほほえみが、これまた神々しい……!


「―― けど、エリザのことだから 『城ですって? ありきたりね』 とか言いそう」


「だったら俺の島はどうだ? ミリタリーゲーム・エリザ誕生日記念杯とか」


「それいい! 楽しそう!」


 イヅナのアイデアも、ワクワクするなあ!


「いっそのこと、エリザさん誕生日ウィークとして、毎日お祝いするのはどうでしょう? 日曜日がエルリック王子の城、月曜日が」


「ボクのタウンハウスで!」


 俺の手にぶらさがってミシェルが笑った。


「んじゃー火曜は、あたしの部屋にきてちょー!」


「エルミアさんさんの部屋より、僕の家のほうがいいと思うよ? ちゃんとしたゲストハウスを提供しよう」


「ほんとー!? ハロルド(はっち)、優しいー!」


 はしゃぐエルミアさん(ルミたん)の耳に、ハロルドが意地悪い顔で何やらささやいた。

 エルミアさんがすごく嬉しそうな顔になってるから、きっとまた、なんでだかわからないけど 『お仕置きだよ?』 とか言われてそうだ。


「おっ、そうだ。アリヤ船長にも連絡入れて、知り合い特権でぜひ豪華客船でのパーティーをしてもらおう! もちろん無料(タダ)で」


「おっ、それなら、オレの島の往復で良いんじゃないか? ミラクル・リゾートへの航路をちょっとだけ変更してもらえば無問題!」


親族(みうち)特権でだな。イヅナ、カッコいいぞ!」


「いやあ、ここまでクルス一族を動かしちゃうあんたらも、悪女っぽくてクールじゃん。いよっ、世紀の悪女!」


「いやあ、それほどでも」


 着々と決まっていく、エリザ誕生日ウィークの予定……


「どんどん楽しみになってくるなあ!」


「いいいい、要らないって言ってるでしょ!? あなたがた、いったい何よ!?」


「大丈夫ですよ、エリザさん」


 サクラがエリザの真っ赤になった顔 (めずらしく扇でかくすのを忘れてる) を正面から撮影しながら、なだめた。


「みなさん、エリザさんのお祝いをしたい気持ちが半分なら、残りの半分はそれをダシにして楽しく遊びたいだけですから」


「そうそう! さすがサクラ。いいこという!」


 俺が深くうなずくと、ミシェルが俺にぎゅーっと抱きつき、エリザに向かって舌を出した。


「誰もエリザさんのためなんかじゃないよねっ。ね? お姉ちゃんっ」


「そのとおりだ。なぜなら、エリザが嫌がっても俺たちはお祝いするからな!」


「そういうわけだから。安心して、お祝いされるといいよ。エリザ」


「ただし主役不在は大迷惑ですからね? 公爵令嬢といえど、その辺はわきまえておいてくださらなくては」


 エルリック王子がロイヤルスマイルでまとめてくれたうえに、ジョナスが眼鏡を光らせながらクギを刺し……

 結局エリザは、扇で顔を隠しながら 「本当に、もう……! 見てらっしゃい!」 とうめくしかなかったのだった。


「けど、あなたがた? そもそも、今年の目標っていえばまず、ウェディングスチル撮影でしょう!?」 


「「「「 あ 」」」」


 すっかり忘れてた……!

 撮影のことっていえば、さっきもちょっと話したばかりだったのにな。


「あたくしの誕生日なんかにかまけて、忘れていいと思ってるの!?」


「でもやっぱ、エリザの誕生日のが大事かも?」


「…… そ、そんなこと、許さなくってよ……!」




 ―― ふんっ、とエリザが朝焼けの中で、腰に手を当てて胸を張った。

 足元ではゴツゴツした背中のワニが、エリザと同じ方向に頭をあげている。


「エリザさん、いい感じですよ。もっとアリヤ船長に寄り添って」


「な、なによっ」


「私が寄ろう」


「どうも、アリヤ船長。10秒後にシャッターがおりますから、みなさんそのままで」


 サクラが足元の水をはねかえしながら、急いで俺たちのほうにきて、ギリギリでポーズをとったとき ―― シャッターがおりた。


「記念のウェディングスチル ―― バッチリです」


 俺たちに嬉しそうに見せてくれたスチルカメラの画面には、お正月に見た初日の出のときよりも、もっと薄い色の空と、赤く染まった雲、その雲を映して幻想的にかがやく湖。そこに寝そべる無数のワニたち ―― その間に、初日の出を見たときと同じ、振り袖の俺たちと羽織袴姿の男の子たちがいる。


 あの日から2ヵ月半。

 俺たちは、ついにファンタナール ―― このゲーム最大の湿原に、来ていた。


正月は初日の出のあと、初詣の縁日遊びですとか書き初め (エリザが超達筆でタヌキ型獣人のショータロー先生はビックリして、一瞬全身タヌキに戻ってしまいました) とか、まだまだいろいろイベントがありました。

湿原まで飛ばしすぎた気もしますので念のため。


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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[一言] 4月前半?13日でしょうか。
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