17-1. カウントダウンとお正月(1)
めっちゃお久しぶりでございます……! (平身低頭)
ちょっと思った以上にいろいろとイレギュラーがありまして…… お待たせしてすみませんでした!
例によってまだ書き書き中ですが、今日から連続で2週間以上更新予定です。
気になるところだけでも、つまみ読みしていってくださいね!
いつも感想や誤字報告いいねや応援☆ありがとうございます。
ごつごつとした高い天井と壁は、すべて雪。
真っ白な空間を、青から紫、紫から赤、赤から黄色…… 次々とかわる光が、きれいに染め上げる ――
「あと1時間でカウントダウンだよ、おねえちゃん!」
「をんをんをんをんっ♪」
巨大なかまくらの中。
ふわつやの茶色の髪の下の大きな緑の目が、俺に笑いかけた。俺のかわりにいちはやく返事したのは、もふもふガイド犬のチロル。
ローストビーフを1枚あげると、しっぽをふぁさふぁさ振りながら急いで飲み込んで、かまくらの外の雪の中に駆けていってしまった。同じくガイド犬のトイプードル、パピヨン犬やコリー犬と追いかけっこしてるのだ。
―― ミシェルの領地、ここブロックウッドの高級リゾートで、俺たちはいつものメンバーで冬休みのスキー合宿中である。
大晦日とお正月がばっちり入っちゃう意外なスケジュールの合宿に、 「運営さんなんでこんな働き者!?」 と思ってたら……
その理由が、このサプライズ・カウントダウンパーティーだった、ってわけ。
リゾートの敷地内にしつらえられた鐘つき堂で 『除夜の鐘』 なるものをついてから巨大かまくらに入ってカウントダウン。
そのあと、明け方までテキトーに休憩入れつつパーティーして有志で初日の出なるものを見に行く。
―― イベント内容は大体、こんな感じで、今は 『除夜の鐘』 をかなり早めにつき終わったところ。
初めての鐘ごん! (重さと音のでかさにびっくりだった。)
初めての夜ふかし!
初めてのみんなでCOUNTDOWN!
ゲーム1年生の俺とエルミアさんはもちろん、周回プレイヤーのエリザやサクラ、それに男の子たちもみんなワクワクしてテンション高めだ。
―― 唯一の例外は、エルミアさんのヤンデレ束縛モラハラ彼氏ことハロルド。
今も少し離れたところから、グラス片手にエルミアさんをじっとり見つめてるけど…… いつものことだから、あれはあれで楽しいんだろう、たぶん。
「けど…… 和洋折衷、というより和洋ごっちゃね?」
ごーんごーん、と遠くで鳴り続けてる鐘の音に、エリザが改めて、俺たちの服装とパーティー会場を見比べた。
俺たちはみんな、和装。
男の子はそれぞれのカラーに合わせた羽織袴。意外とみんな、似合っている。
中でもエルリック王子 ―― 金の羽織をさらっと着こなせるなんて、王子以外にはあと 『百年前の貴重映像シリーズ』 でサンバを歌ってたお殿様くらいじゃないかと思う。たもとからは、青い手乗り竜のカホールがちょこんと顔をのぞかせている。
そして女の子はクリスマスパーティーでサンタさんからもらった振り袖 ―― エリザは、白地に手描きっぽい松竹梅と鶴。金の帯がキリッとしててかっこいい。
かまくらの内装のスチルを熱心に撮りまくってるサクラは、パステルカラーの水色のグラデーションに、細かな桜と藤の花。
つぶつぶした立体感のあるもように感心してると、 「総しぼり、っていうんですよ」 と教えてくれた。嬉しそうだな、サクラ。
エリザが 『和洋混在』 っていってる 『洋』 のほうは主に、冬だけやってるらしいこの巨大なかまくら内装だろう。
とはいっても、まず目立つのは、点点と置かれたこたつだったりする。
けど、全体をいろどってるイルミネーションだとか、中央の無限シャンパンタワー (中身はノンアルコールだ!) と 『COUNTDOWN PARTY』 という札がぶら下がった塔みたいなケーキは、いかにも洋っぽい。
和洋ごっちゃは、壁ぎわにあるビュッフェも同じだ。
ローストビーフやパスタやポテト、アイスクリームなんかの隣には、年越しソバとかいう麺類と、モチという謎の白い物体が置いてある。
ジョナスによれば、ソバもモチも日本の伝統食だそうだ。
「うーん…… 全体的に、和が地味に多め、ってところかな?」
「多いけど、地味なんですよね」
「そんなことないよ! ほら、奥みて?」
ミシェル (実は会場責任者) が奥のスペースを指さした。
「おお……! 確かに!」
「でしょっ。ちゃんと研究したんだからっ」
そこは、活け花と鏡モチといった、いかにも和っぽいアイテムで彩られていた。
昔の武将っぽい吊眼にヒゲのオッサンが描かれた、糸のついた四角い紙が天井付近を漂っている。
「すごいぞ、ミシェル! オッサンもアリヤ船長とは別の意味でカッコいいしな!」
「あれはタコっていうオモチャだよ、お姉ちゃん」
「なんと……! お正月はタコあげて、ってこれだったのか……!」
長年の疑問が、とけた。
ミシェルはほかの飾りをひとつひとつさして、教えてくれる。
「コマとスゴロク、それから福笑いもあるよっ」
「どれも聞いたことならある! よくそろえたな、ミシェル」
「でしょ? ボクえらいでしょ? ね、お姉ちゃん!」
「ほんとだ、めちゃくちゃ偉い!」
ミシェルがえっへん、と胸をはったので、よくやった、とウリウリ頭をなでてあげてると ――
コホン、と上品な咳払いがきこえた。エルリック王子だ。
ロイヤルな仕草で和なスペースの隣の、ライトが特に明るいスペースを示してくれている。
「王室からは、太鼓のプロフェッサーやモグラ叩きなどを特別に用意させてもらったよ」
「こっちも楽しそう!」
「あとでふたりで対戦しようね、ヴェリノ」
「おう! 楽しみ!」
エルリック王子の隣ではジョナスが、内ポケットから何やらカードらしきものを指に挟んで引き出した。
「トランプとUN◯も用意しておりますが、なにか」
「おっ、お正月っぽいな? やろやろ!」
「それより先にビンゴだろ!?」
イヅナが両手で紙にプチプチ穴をあけながら、あごを上げた先には、かまくらの白い雪の壁 ―― に、豪華なシャンデリアが下がった別のパーティー会場が写し出されている。
「では、ブルー・アテナとブロックウッドのかまくら、両方のみなさん ―― 」
映像の中、渋みがかった良い声で司会してくれているのは、豪華客船のイケオジ、アリヤ船長だ。
学生はだいたい、スキー合宿でカウントダウンをするが、豪華客船は豪華客船でほかのプレイヤー (大人のおねえさん含む) 用のカウントダウンパーティーという仕事がある。
友情をとるか恋をとるかで実は悩んでそうなエリザのために、ミシェルと俺たちで急きょ考えたのが、この 『海でも山でもCOUNTDOWN』 合同企画なのである……!
(決めたのはスキー合宿の詳しい日程を見てからだから、ほんと頑張った!)
―― 今ごろ、アリヤ船長の目の前にも、振り袖を着たエリザの映像 (こっちのカメラは必ず1台エリザにつくことになっている) が、大写しにされているんだろう。
「さあ、今年最後の福を賭け、どんどん数字をめくっていきましょう。
心配は要りません。笑っても泣いても、新年は皆に等しくやって参ります。では…… 皆さんで ――」
俺たちは、数字のたくさん並んだ紙を勢いよく上につきだし、いっせいに叫んだのだった。
「「「「 レッツ・ビンゴ!!! 」」」」




