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16-17. クリスマスの恒例イベント(4)

 赤や青や緑や黄、ピンクや紫、銀色に金色…… 宙を高速で舞う、高級そうなリボンのついた色とりどりの無数の箱。


 サンタクロースさんの奥義 『メテオストルネード』 は、際限なく続いた。


 しかし、アリヤ船長は、なんと…… !

 襲いかかる箱の全てを、正確にはじきとばしているのだ。とばされた箱は、周囲のギャラリーが 1人 1コずつ、順次受け取っている。


 ―― どーやってるんだろう、いったい。


「をんをんをんをんっ♪」

【アリヤ船長には、イベント限定でチート能力が付与されておりますww】


「今さらだけど、まじになんでもありだな……!?」


【いえいえww ですが今日は、クリスマスですからwwww】



 そして、ついに ――――


「おっと、キターー!」


 俺めがけて、アリヤ船長がとばした箱が落ちてきた。


 ぼすんっ。


 かまえた腕の中に、すっぽり入ったのは和柄っぽい模様の包装紙にツヤのあるピンクのリボンで飾られた、大きめの箱 ―― いったい、何が入ってるんだろう?


「あっ、きました!」


「なんなのかしら……」


 サクラとエリザも、次々と箱を受け取めている。


「をんをんをんっ♪」 「きゃんきゃんきゃん!」 「くぅーん……」


 ガイド犬たちの説明によると、これは俺たちへのプレゼントであるらしい。


「うわー! たとえ中身ゼロで、この過剰包装の箱だけだったとしても嬉しいっ!」


 リアルでは紙もリボンもけっこうな贅沢品だからな。こんなふうにキレイに包まれた箱をもらうのは、生まれて初めてだ。


【いえいえww ちゃんと中にも入ってますよww】


「まじか! 何が入ってるのかなぁ? めちゃくちゃ気になるぅ! でも開けるのがもったいない!」


【wwww】


「今開けなくてもいいわよ。寮に戻ってからで」


 エリザが至極まっとうな意見を出し、サクラもスチルカメラのシャッターを押しながら、うなずいた。


「アリヤ船長も応援しなきゃですしね」


「ばっ…… そそそそ、そんなこと! それは少しは応援してあげないこともないけど!」


 エリザがあからさまに慌てて扇で顔を隠し、サクラが見た目かわいらしく 「ふふっ」 と笑った、そのとき。


「ほっほっほぉおおおおうっ!」


 サンタクロースさんが、またしても朗らかな笑い声をあげた。 


 今度はどんな技を繰り出すんだ……?


 緊張して見上げる俺たちの上に、無数のキラキラエフェクトが降ってきた。見慣れてるけど、キレイだ。


「 Merry Christmas! 」


 なんかやたらといい発音で叫んだあと…… サンタクロースさんは、どこへともなく去っていった。

 キラキラエフェクトの雪とシャンシャンシャン、という鈴の音も、だんだん小さくなっていき、やがて、ふっと消えていった…… サンタクロースさん、ありがとう。



「…… つまり、女の子(プレイヤー)全員にプレゼントを配り終えた……?」


「みたいですね」


 気づけば、アリヤ船長が肩で息をしながら、ショータロー先生を挑発している。


「さあ、先生。その程度では、私は倒せませんよ?」


 口だけは余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)…… だが、実質そうでないことは誰の目にも明らかだ。


「もう、いいわ。船長」


 エリザが背伸びして、アリヤ船長の額の汗をハンカチで押さえてあげた。 …… 汗すらサマになる男か。羨ましすぎるぞコンチクショー。


「エリザ…… しかし、貴女が」


「あたくしは誇り高き悪役令嬢。1度は船長の顔を立てて譲りましたけど、最後までオトコに(かば)ってもらうような、みっともない真似はしなくってよ!」


 腰に手を当てて胸をバイーンとそらすお得意のポーズで、正々堂々と主張するエリザ。立派だ。


「罰ならキッチリ受けますわ、ショータロー先生。…… まずは、サクラ」


「はい」


 エリザが、すっと床に膝をついた。

 ―― エリザのこんな姿をみられる日がくるなんて、なぁ…… (しみじみ)

 でも、ひざまずいていても、エリザはカッコ良かった。


「役柄に徹すれば問題ないとだけ考えて、サクラの気持ちも考えず、いじめ倒しましたこと…… 心より謝罪申し上げます。ごめんなさい」


「…… いえ。それで良かったんですけど……? むしろ、役柄に徹してくださってありがとうございます、エリザさん。おかげで楽しかったです」


 うん、そうだろうな。


 しかし、ショータロー先生は満足げに手を叩いた。


「そう。それでいいのじゃ! サクラ、よく許してあげたのじゃ! 仲直りを記念して、握手じゃ!」


「…… あの先生、そもそもわたしたち、喧嘩してませんけど…… 」


「そこは空気を読んでなのじゃ……!」


 ミシェルが俺をつんつん、とつつく。


(いちばんのKYはショータロー先生だよねっ、お姉ちゃん)


(それは言わない約束だ、ミシェル)


(デモ ソノトオリ ダネッ)


 カホールがパタパタとんできて、俺たちと小声でヒソヒソやってるそばで、エリザとサクラはガッチリと 『仲直り』 の握手を交わしたのだった。


「で、反省文と書き初めは、冬休みとして…… 大掃除は、いつかしら? あたくしひとりでやるのだから、時間がほしいわ」


「いや、エリザ、俺たちも手伝うから!」


「そうだよ。エリザ」


 俺が言えば、エルリック王子も一歩前に出る。


「私たちは仲間だろう? 君をひとりにしたりは、しないよ」


「そうだぞ、エリザ。罰なら一緒に受けて、当然だろ?」


「お姉ちゃんが大掃除するなら、ボクも一緒にするっ」


 イヅナとミシェルが力説してくれ、ジョナスは眼鏡をクイっとやった。


「なにも我々が大掃除せずとも…… そこの狸を王族不敬罪と職権濫用で運営に訴えればいいだけでは」


「…… だったら、わしは時代遅れの身分差別を運営に訴えてやるのじゃ! 生徒といえども容赦しないのじゃ! 覚悟なのじゃ!」


 うわぁ。運営さん、大変そう。


 ―― これ、どうなるの? どっち?


 ギャラリーが騒然とするなか、凛とした声が響いた。


「おだまり!」


 一気にしーん、と静まりかえる…… さすが、エリザだな。


「大掃除程度のことが、あたくしひとりでできない、とでも? 甘く見られたものね!」


 ずい、とショータロー先生に指を 1本、付き出した。

 つーん、と上がったアゴと、斜め上からの目線…… 完璧に決まってる。


「 1・日・で・! やってあげようじゃないの。もちろん、あたくしひとりでよ! いいわね!?」


 気圧(けお)されて、あとずさりしながらショータロー先生はコクコクとうなずいた。かわいいな。


「それでこそ、エリザだね」


 アリヤ船長が、くしゃりと笑って、エリザの手をとった。

 身をかがめて、顔を手の甲に近づけ…… あわわわ。

 口。口、あたっちゃってるよ!


 エリザが一瞬で、耳まで真っ赤になって、硬直した。


「貴女と、一生を共に歩みたい……」


 イケオジボイスが、普段の 5割増でツヤを帯びて、明らかに気合い入ってる感が…… ゾッとするぅ!


「エリザ。私と、結婚していだけないでしょうか」


2022/06/03 誤字修正しました!報告下さった方、どうもありがとうございます。

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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[良い点] うおぉぉぉぉぉぉおおおおっ!! まじか!! アリヤ船長キターーーーーー!!! [一言] 朝からすんげぇ驚いた(≧▽≦)! 途中までは「おぉ、これはもしや全員で年末大掃除イベントの流れ?」…
[一言] いろんな意味でエリザ立派と思っていたら、急転直下の展開。
[一言] プロポーズキターーー!!!!(大歓喜)
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