表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輝ける陽のあたる世界~ツンデレ悪役令嬢と一緒に幸せ学園生活!のんびり日常するだけのVRMMO~  作者: 砂礫零


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

303/340

16-14. クリスマスの恒例イベント(1)

「…… ホニャララ公爵令嬢! 私は貴女との婚約を破棄する!」


「婚約破棄を宣言する!」


「婚約を破棄することを、ここに誓う!」


 誓ってどうするんだ。

 …… という、ツッコミはさておき。


 学園のクリスマスパーティー会場では、ファーストダンスが終わったとたんに、やたらと凛々しい大声があちこちから響き出したのだ。


「きましたね、 『恒例☆婚約破棄』 イベント」


「楽しそうだな、サクラ……」


「楽しいですよ。見たら、ヴェリノさんもわかると思います」


「ふぅん……」


「サクラが楽しいなら何のイベントでもいいぞ、オレは!」


 楽しそうなサクラと、最高にデレてるイヅナをはじめ、俺たちのグループはのんびりとしたものである。


 ローストビーフやサラダやポテトやチーズをつつき、サイダー味のポーションを飲みながら、ひときわ着飾った気の強そうな令嬢が青ざめたり、『好意値はじゅうぶんなはずなのに……』 と呟いてよろめいたりする様子を鑑賞しているのだ。


 大体のケースは最終、別のイケメン男子が彼女に 『ならば私と婚約しませんか!』 と素早く指輪や花束やケーキを捧げて〆である。


「そっかー。婚約破棄される悪役令嬢のほとんどには、救済イケメンがいるんだな」


「をんをんをんっ♪」

【当然ですよww このゲームのモットーは 『全ての乙女をハッピーに♡』 ですからww】


「でも、人員は限定されてるので、選べないっていう話ですけどね……」


「きゃんきゃんきゃんきゃんっ!」

【それは仕方ないでしゅ! これで好みのNPCを選べるなら、みんなが悪役令嬢になりたがってしまいましゅから! なにしろお小遣いが半端なくちがいましゅのでね!】


「くぅーん…… 」

【お金を取るか愛を取るか♡ 究極の2択なんですよ♡ ゆらぐ乙女心ですね♡】


「なるほどなぁ……」


 サクラとガイド犬たちの説明で、俺にもやっと 『悪役令嬢+婚約破棄』 イベントが、ぼんやりとだが理解できるようになってきた……。


「じゃあ、エリザのアリヤ船長なんかは、本当にラッキーなパターンなんだ」


「そうともいえますね…… ここには、来てないみたいですけど」


 そうなんだよな。

 もしかしたら、エリザの今後の運命がかかってるかもしれない、このクリスマスパーティーの舞台……

 『エリザに何が起きてもフォローできるように』 って、俺たちは実のところ、かなり一生懸命、エリザを見守っている。


 もし、エリザが断罪されたりしたら…… それを救うのは本来は、アリヤ船長の役どころなんだろうけど。

 今日はまだ海の上だって、エリザも言ってたしな。


 ―― と、ここで。


「…… ええい!」


 エリザがいきなり、気合いを入れてグラスを飲み干した。


「あなた方も…… さっさとやってくださって、けっこう! もとよりそうなる運命と、あたくし自身が選んだコース(こと)だもの。遠慮は要らないわよ!?」


「おおっ…… エリザ。こんなときまで、オトコマエだなぁ…… カッコいい!」


 つい拍手したくなったけどできないので、俺は抱っこしてたミシェルをゆすゆす揺すった。

 カホールも、パタパタとエリザの周りを飛ぶ。


「パパ! カッコイイー!」


「ほ、ほめても何も出ないんだから……っ」


 ツーンとそっぽを向いた耳が、真っ赤だ。

 エリザは、腰に手をあててバーンと胸を張る、お得意のポーズを繰り出した。


「とにかく! 婚約破棄リターンズでも断罪でも! なんでも好きにしてちょうだい……っ」


 しーーーん。


 一瞬、周囲が静かになった気がした。

 俺たちは誰もしゃべらず、ただ、エルリック王子とその隣のジョナスに注目する…… もし、エリザが断罪されるとしたら、このふたりのどちらかが手をくだすはずだからだ。


「…………………… みんな」


 長い沈黙のあと、エルリック王子が口を開いた。


 ―― まさか、本当に断罪だなんて…… しないよな?


 エルリックが、するわけないよな、そんなこと…… 頼む。

 なにもない、って言ってくれ……!


「私は、エリザを断罪する気など全くないよ。婚約破棄も、とうの昔に終わっているしね。ね、ジョナス?」


「はい。ですが、お望みなら、して差し上げてもよろしいかと」


 おーい。ほっとしたとたんに、何を言い出すんだ、ジョナス。


「いやいやいや! 冗談じゃないよ!」


「ええ。冗談ではありませんが…… なにか?」


 いや。眼鏡クイしてジロッとにらまれてもね。



 ―― ともかくも。


「なぁんだ。やっぱりエリザは当然、無罪だよね! …… でも、良かったぁ……」


「良かったねっ、お姉ちゃん! エリザさま、意外といい人だもんねっ」


 一気に力が抜けそうになって、慌ててミシェルを抱っこしなおす。


「いやいやいや。意外とかじゃなくて、正真正銘めっちゃいい子…… ってイタッ。なんで扇投げるのかな」


「あら。ウッカリ手が滑ったわ。ごめんあそばせ」


「…… これは、断罪すべきでは、王子」


「いやいやいや、ジョナス! エリザが超絶な照れ屋さんで、誉めるとこうなっちゃう、ってことくらい、俺たちみんな知ってるじゃん!」


「そうだね。エリザは超絶な照れ屋さんだよね」


 エルリック王子だけじゃなくて、イヅナもうんうん、うなずいてくれている。


「でも、思いやりの心のあるいい子だと、オレも思う!」


「そうですね。とっても真面目な頑張り屋さんでも、ありますし」


「あっ、あなたがた……」


 エリザが扇で顔を完全に隠して、うめいた。


「あっ、あたくしを殺す気……?」


 なぜそうなる。


「ま、ともかく…… 」


 エルリック王子が、しめくくった。


「断罪なんて、するわけが 「ちょっと待ったぁ!」


 …… のを、遮ったのは、子どもみたいな高めの声。

 王子の背後から、ビシッとエリザを指差しているのは、ふわふわの丸い耳にもふもふの丸いしっぽ。


 狸型獣人 (見た目年齢 7歳) のショータロー先生だ。


「君らが許しても、ワシは許さないのじゃ……!」



「「「「「「…… なにを?????」」」」」」


 俺たちのツッコミは、見事に一致していたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

バナー制作:秋の桜子さま
― 新着の感想 ―
[一言] >『悪役令嬢+婚約破棄』 イベント 冒頭から爆笑でした!w 巧いですね ^0^/
[良い点] あぁそうだった「婚約破棄イベント」があるんだった笑 それにしてもあちこちでとはww ふつうのクリスマスといえば告白イベントなんでしょうが、これはまさに名物ですね(;'∀')ノ [一言] こ…
[良い点] 断罪は免れたけど、エリザにとっては誉め殺しの羞恥プレイになってしまった件(笑) そしてまさかの伏兵ショータロー先生!? 本当に「なにを?」状態ですね(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ