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輝ける陽のあたる世界~ツンデレ悪役令嬢と一緒に幸せ学園生活!のんびり日常するだけのVRMMO~  作者: 砂礫零


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閑話11. 運動会(8)玉入れ②~パン食い競走①

「にゃんっ」 「ぷぎゃ!」 「にゃん」 「にゃっ!」 「にゃんっ」 「ぷぎゃ!」 ……


 1回戦とは比べものにならないくらいの速さで、カゴがタマたちで埋まっていく ―― タマが入りやすくなるコツを全員が共有したのもさることながら、あらかじめ立てた作戦も、かなり貢献しているな……


 ―― 俺たち白組の作戦は、ほんと単純だ。


 カゴのすぐ周りには、背の高い子たちを配置する。背の低い子はやや遠め。こぼれたタマを回収して投げる。もしカゴに届かなくても、背の高い子たちが拾って入れてくれれば、無駄がない ――


 ちなみに、配置は男女混合だ。1回戦のように、女の子(プレイヤー)がカゴ側、などという忖度は一切、存在しない。

 厳正な背の順である…… その結果、外側に回ってしまう女の子(プレイヤー)がたくさん出たが、その点はみんな、納得していた。


 全ては、勝利のためだ。


「にゃっ!」 「にゃん!」 「にゃんっ」 「にゃ!」 「ぷぎゃ!」 「ぷぎゃ!」 「にゃん!」 ……


 白組のタマたちは、面白いようにどんどんとカゴの中に入っていく。


もっと入れるぞ!


…… と、思ったとき。


ピィィィィィ、と、鋭い笛の音が、試合を止めた。


『第2回戦、終了!』


 とたんに、俺たち白組のカゴの周辺では 「やったーーー!」 という声が、あちこちから上がる。

 数えなくても、一目瞭然、だったからだ。


 ―― 俺たちのタマのほうが、明らかに多い。



「やったね! 勝利!」 「やったね、お姉ちゃん!」


「やりましたね!」 「サクラ……!」


「ふっ、当然よね!」 「まぁ、当然ですがね」


「みんなで頑張って、よかったね」



 俺たちは、みんなでハイタッチしあって勝利を祝った。


 結果は……

 赤、8 × 37 + 3 タマ  白、8 × 42 + 5 タマ だ。

 それぞれ計何タマだったかは、まぁいいやと思って計算してないけど、白が圧倒的に多かったことだけは間違いない!


「ふっ…… これがチームワークの勝利というものね!」


「あれ。『あたくしのおかげね!』 じゃないんだ、エリザ」


「あたくし今回は特に何もしてないもの」


 おおお!? エリザが謙虚だ……!?


「いや…… みんなにハッパかけるとか、『圧勝しなきゃ踏むわよ!』 みたいな激励とか…… してくれてたじゃん!」


「たしかにあたくしの激励は素晴らしかったと思うわ? でも、みんなが頑張ってくれたからこその勝利でしょ?」


「エリザ…… 確かに正しいけど! なんでそんなに普段と微妙に違うんだ……!?」


「うっ…… うるさいわね……! 別にいいじゃない!」


 はっ、としたように、エリザが扇で顔を隠した。そして、何やらごにょごにょと言った。


 俺の聞き間違いじゃなかったら……


『こういうのっていいな、って思っちゃったんだもの!』


 だったと思う。


 …… とりあえず、聞き返すのはやめておいてあげよう。




 みんなでリリースされたタマたちを片付けると、運動会実行委員たちが次の競技の準備を始めた。

 リレーのコースの途中に、物干しロープみたいな紐を渡して、透明な袋に入ったパンをぶら下げる。

 動物や魚の形のパン、見た目も賑やかで楽しいな…… そう。


 次は、いよいよ、パン食い競走なのだ ――――!


 イヅナが1位をとれば、サクラとのデートっていうね! 約束がね! あるんだよね!


 イヅナのためにもチームのためにも、ぜひ1位を取りたいところだ。


「あー! ヴぇっちー!」


 エルミアさん(ルミたん) (ケガはすっかり治っている) のチームもパン食い競走に出場するらしい。

 遠く…… 俺たちより2チーム分ほど後ろのほうから、手を振ってくれたが…… 悪いな。今回は、馴れ合わないぜ……!

 俺とお前は敵同士!

 ハロルドが、嫉妬のこもった目で俺のこと見ちゃってるしね!


「どーしたのー? ヴぇっちー! 緊張してるのー?」


 うう…… 心配されると無視しにくいな。

 仕方ない。


 ちょっとだけ手を振ってあげると、満面の笑顔でぴょんぴょんジャンプしながら、また手を振り返してくれた。


「あのねー! パン食い競走のコツは、思い切りよくいくことだよーっ! 恥ずかしがっちゃダメだからねー!」


 な、なるほど……!

 確かに、俺たちはこれから、パンを口にくわえて突っ走る、という羞恥に耐えなければならないわけだから…… エルミアさん(ルミたん)のアドバイスは、一理あるな!


「ありがとな! それでいくことにする!」


 叫び返すと、エルミアさんは嬉しそうにうんうんうなずいて、そこにハロルドが何か耳打ちしてますます嬉しそうな顔になった。

(たぶん、 『あとでお仕置き』 とか言ったはず)


『第一走者は、位置についてください』


 アナウンスが流れて、ミシェルがスタートラインに向かった。

 走る順番は、普通のリレーの時と同じ。

 ミシェル ⇒ 俺 ⇒ サクラ ⇒ ジョナス ⇒ エルリック ⇒ エリザ ⇒ イヅナ の順だ。


だが、リレーと違うのは……


『第2走者は、組の色のハチマキをとって、第1走者の両手首を後ろ手に縛ってください』


 これ! これだよね!

 つまり、俺がミシェルの手を縛っちゃうんだよね!

 よ、幼児を縛るなんて…… ギルティィィィ!


 決してやりたいわけじゃない。

 だけど、アナウンスがそうしろ、って言うから……! 


「ミシェル、大丈夫か?」


「うん、お姉ちゃん、もっとぎゅっとキツく縛ってね!」


 ぎ、ギルティィィィ!

 …… ってわけじゃなくて。


「ほどけると失格になっちゃうからね!」


「了解! こんな感じでどうだ?」


「…… うん、これならイイ感じ! ありがとう、お姉ちゃん!」


 ミシェルが、俺に縛られて、嬉しそうだ…… っていや! 変な意味じゃないからねっ!


パァァァァンッ!


 ピストルの音が鳴り響き、第1走者のちびっこたちが走り出した。

 走る、っていっても、両手が使えないから……

 ヨチヨチ、って感じで、めちゃくちゃかわいい (鼻血)。


 ミシェルが、パンにたどり着いた。現在2位。

 パンは、軽くジャンプか背伸びしたら、なんとか口にくわえられるくらいの高さだが…… これは、思ったよりも難しそうだな。


 1位の子がパンをくわえとった余波で、ミシェルの真上のパンは、ゆらゆらと揺れている。


 揺れてるものをジャンプしてとる (しかも口で) って、けっこう大変だよね!? だって、揺れた先の位置を計算して、そこ目掛けて跳ばなきゃならないわけだから……


 ミシェルは、足を止めて、じっと揺れているパンを見上げた。

 ―― もしかして、計算してるのか……?


 そして、ほんの1秒ちょいで……

 ミシェルの足が、思い切りよく地面を蹴った。


 ジャンプ。

 ぱくん、と大きく開いた口に、パンがぶつかっていく。


「すごいいい! ジャストタイミングだ、ミシェル!」


 ほんの一瞬で、ミシェルはパンをくわえとり、ゴールに向かってヨチヨチと駆け出したのだった。


 1位との差、かなり詰まった感がある。


 ―― 俺も、次こそは頑張らなきゃな……!

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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[一言] ギルティって、そいつは
[一言] 私もミシェルたんを縛りたい( ˘ω˘ )(←)
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