表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

240/340

15-3. デザートと修学旅行(3)

 修学旅行。

 リアルでは行ったことがないが、アニメの中では時々、見掛けるイベントだ。


【男女、部屋は別々ですが、お互いの部屋に凸して健全な交流を図ることは、無課金の範囲内ですww】


 と、チロルも解説してくれるし ――――


「じゃあもう、決定だな!」


「…… 修学旅行とお菓子作りレクチャーが、どう関わると?」


「そんなことなら……」


 エルリック王子が、相変わらずの爽やかなスマイルのままで、サラリと言った。


「学園に私たちが()()()()()()だけで、なんとかなるんじゃないかな?」


「わぁおう! さすが王子! よろしく頼みます!」


「ああ、任せて」


 おおう、ゲームの世界でも (だからこそ?) 権力はものを言うんだなぁ!



 その日はそれでお開きになった。


 そして、数日後 ――――



「修学旅行が決まったよ」


 企画会議室で、エルリックが告げた。


「ぃやったぁぁぁ! さすがは王子!」


「をんをんっ♪」 「くぅーん……」  「きゃんきゃんきゃんっ!」 「ヤッターーー!」


「そっかぁぁあ! おまえらも嬉しいか!」


 まさかここにきて、修学旅行なるものに行けるなんて! 女の子になって良かったなぁ!


 だがしかし。

 もふもふなガイド犬たち+青い手乗り竜(カホール)とはしゃぎまくって、サクラとエリザとNPC(男の子たち)から温く見守られていた俺は、次のジョナスの説明に、きょとん、とすることになる。


「アリヤ船長を講師に招いて、4泊5日のデザート研修です」


「へ? それなら、合宿でいいんじゃ?」


 てっきり、修学旅行とハロウィーンのお菓子作りは別物だと思ってたんだけど……


「行き先は…… 「おっと、これはオレが言うぞ、ジョナス」


 イヅナが急に、淡々としたジョナスの説明を(さえぎ)って、前に出た。

 その視線は、情熱的なまでにサクラに向けられている。


「行き先は、 『輝きの砂漠』 だ!」


「砂漠に…… 行けるんですか?」


「そう。サクラ、行きたがってたろ?」


「はい……」


 おおお…… サクラの目が、ウルウルしてる!

 サクラよ…… そんなに行きたかったのか、砂漠!


 イヅナの優しいドヤ顔も、いいなぁ……


 さすがは俺の、推しカプ!


「けど、どうして砂漠なのかしら? …… まさか」


 少し首をかしげた後、扇で口元を隠しつつ、エリザが眉をひそめた。


「……まさか、『デザート繋がり』 とか、言わないでしょうね?」


「をんっ♪」


【ハロウィーンパーティーで作るのは 『dessert(デザート)』ww

 旅行の行き先は 『desert(デザート)』ww

  『砂漠(デザート)砂糖(sugar)を足せば甘いもの(デザート)』 と覚えましょうwwww】


 あーなるほど、エリザ。

 そんな寒いギャグ思い付いちゃったら、そりゃ口元隠したくもなるよね!


 と、思ってたら。

 ミシェルが 「よくわかりましたね、エリザさんっ」 と言いだし、イヅナがますますドヤ顔を強化し、エルリック王子がキラキラエフェクトをまき散らして、ジョナスがコホン、と咳払いした。


「…… その辺には、各方面の意向が働いておりますため、私のほうからはノーコメントとさせていただきます」


 ホワイトボードが、ジョナスの神経質な文字で書かれた日程で埋まっていく。



<9月 7日~ 9月30日 修学旅行のしおり 作成


(10月 4日(日) 運動会)


  10月 9日(金) 夜7時 出発(旅客機) 機中泊


  10月10日(土) 朝7時 朝食・移動 『青の街』 『白の街』 『黄色の街』 観光 /ホテル泊


 10月11日(日) 『輝きの砂漠』  移動・観光 /キャンプ泊


 10月12日(月) 夜7時 帰路(旅客機 機中泊)


 10月13日(火) 朝7時 寮到着>



 おおう、こうやって予定を見るだけでも楽しそう!

(けど 『運動会』 ってなんだったっけな? 聞いたことはあるような……)


「そんなわけで、まずは、しおり作りから始めようか」


「ならば…… 図書館ね!」


「あったのか、図書館……!」


 図書館、というのもまた、リアルでは旧時代の幻みたいなものだ。


 国営の電子図書館がネット上にはあったりして、そこの壁紙には本が並んでいたりするから、なんとなくイメージはあるけど……

 実際に俺たちが 『読書』 っていうと、タブレットやパソコンになるんだよな。妹が読んでる少女漫画だって、それだ。


 なので。



 図書館 ―― 学校の隣の煉瓦造りの建物 ―― は、俺たちにとって結構なミラクルワールドだった。


「うぉぉぉぉ…… これが、紙とか布とかでできた本……!」


「本のニオイも、しますね」


「くしゅんっ」


 小さなくしゃみは、エリザだ。


 しめっぽいような甘いような、不思議なニオイ、鼻がむずむずしちゃうのも、わからないことはない。


【昔の人は、本に使われているインクのにおいをかぐと○○○もよおしてくるとか、眠くなるとか、色々言っていたそうですよww つまりはリラックス効果ですねww】


「ふーん…… ま、落ち着く……気もするなぁ……?」


 と、珍しがってばかりもいられない。


 ともかくも、調べものしなきゃな!


 修学旅行のしおり。

 大まかな日程はもう決まっているので、俺たちがするのは 『輝きの砂漠』 や周辺の街なんかの情報収集だ。


 そういえば昔、RPGの情報収集でもウンザリするほど、あちこちの本をクリックさせられたことがあったっけ…… あの本には、『右から3番目、下から2番目』 とかしか書かれていなかったけど……


「ヴェリノさん、今それ読みふけってると、何も調べられませんよ?」


「はっ、そうだった……!」


 ―――― 1つの情報から別の情報が気になって、気づいたら全然別のこと調べてる、なんてことは、ネットでもある。


 だが、本っていうのは、それとは違う感じでトラップだな!


 これじゃない、と思っても、面白そうならついズルズルと読んでしまうというか。


 ちなみに俺が読んじゃってたのは、砂漠が舞台の戦争ものだった。


 いや、平和が一番なんだけどね!?


 これはこれで、めちゃカッコいいいいぃぃぃ!


「いいね! 砂漠!」


「でしょう?」


 サクラがクスクスと笑った。


「よし、張り切って調べるぞ!」


 目指すは楽しい砂漠の旅 ――――!


 あれ。そういえば、お菓子作りは?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

バナー制作:秋の桜子さま
― 新着の感想 ―
[一言] 砂漠にクリックと言えば……。 昔々は大昔、ゲームの媒体がカセットテープだったような時代。 とあるパソコンのアドベンチャーゲーム(スターアーサー伝説Ⅰ)では、後半、広大な砂漠(全464画面)を…
[一言] >「くしゅんっ」 可愛い( ˘ω˘ )
[一言] 確かにかつての調べ物をするために図書館行って、他の本を読みふけるのとネットサーフィンは似てるかもですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ