15-1. デザートと修学旅行(1)
お久しぶりです&お待たせしました!
今日から20日前後(まだ書き溜め中なので何話まで続くか……)デザート&修学旅行特集でお送りします!
「ハロウィーンは?」 と思ってる方…… ちゃんとハロウィーンも入れます!
よろしくお願いしますーm(_ _)m
「わーい! 学校! ひっさびさだーーーー!」
「をんっ♪」
青空の中にそびえる白い建物と、かわいい赤い屋根。
夏休み明けて久々に見る学校は、なんだか懐かしいな ――――
「変わりませんね」
「きゃんきゃんっ……」
「改装でもしてるかと思ったけれど…… 運営、サボりね」
「くぅーん……」
サクラとエリザ、それにガイド犬たちも、目を細めて校舎を見上げる。
日差しは真夏よりも少しだけ遠くなった気がするけど、まだまだ、すっごくまぶしい。
「さて、今日は何の授業にすっかな!」
空中に出した教室表を眺めていると、背後から涼しさ120%の声がした。
「おや? 企画には参加してくれないのかい?」
「別にあなた方が参加しなくても、特に支障はございませんがね」
エルリックとジョナスだ。
久々の制服姿が…… なんだか新鮮だなぁ。
エルリックの肩の上では、青い手乗り竜カホールが時々落ちそうになりながらクゥクゥ眠ってる。
「おねえちゃんっ!」
どしん、とぶつかってきたのは、ミシェル。
「支障がないなら、おねえちゃんはボクとふたりだけで企画しよお…… みゃー!!!」
「勝手に集団行動を乱す発言をするのは、こちらの幼児ですか」
ジョナスに襟首をつかまれて、ジタバタしている。
相変わらず、平和だなぁ……。
「ところで企画ってなに?」
「ハロウィーンパーティー、知らないのか、ヴェリノ。10月31日だぞ」
「ああ 『お菓子と仮装の日』 !」
ミシェルのあとからやってきたイヅナに答えると、すっごい微妙な顔をされた。
「いつも思うけど、リアル世界の宗教封じは徹底してるなぁ……」
俺たちからすれば、むしろ 「このゲームはよくこんなにも堂々と 『ハロウィン』 とか 『クリスマス』 とか言ってるなぁ……」 って感じなんだけどね。
まぁ、それはさておき。
「仮装パーティーの準備なんだ?」
「パーティーは確かにあるけれど、メインは仮装パレードか、ステージ。それにお菓子作りかな。
今年は 『ポケット妖怪』 とのコラボもあるから、パレードやステージは盛り上がりそうだよ。どれにする?」
おおお…… これは、悩むなぁ。
ポケット妖怪のキャラ仮装でパレードとか、してみたいかも…… と、ここで。
「ヴェリノさん……」
ちょいちょいと、サクラに制服のすそを引っ張られて顔を寄せると、コソコソと耳打ちされた。
「パレードやステージではなく、お菓子作りがオススメですよ。好意値の上昇が段違いですから」
サクラの説明によると、仮装は好意値・友情値ともにソコソコ上昇、ステージは友情値が大幅上昇で、お菓子作りはその逆だという。
「最高の逆……のためには、お菓子作りは欠かせないと思います」
「よっし! じゃあ、お菓子だな! ……っと、エリザはどう?」
「あたくし、道路の真ん中を手を振りながら歩くのも、ステージで歌って踊るのも大嫌い」
「ああ、照れちゃいますものね」
「……っ! そうでなくて、みっともないからよ……っ!」
サクラ、エリザをつつかずにはいられない病気かな?
まぁ、気持ちはわからないでもないけど…… わたわたするエリザが、おもしろかわいいっていう。
それはさておき。
「では、お菓子だね。早速、何を作るか相談しようか」
そんなわけで、俺たちは、久々の企画会議室に移動した。
教室のすみに場所をとってホワイトボードを確保すると、エルリック王子はぐるり、と皆を見回した。
「では、作りたいお菓子をあげてほしい!」
ハロウィーン当日は、お菓子の企画班が持ち寄ったお菓子で、デザートビュッフェなるものをするそうだ。うーん、聞くだけでもう、すっごい楽しみ!
「まずはなんでもいいよ。そこから、家庭科室で作れるものを検討しよう」
「はいはいはい! マカロンと豆花! アリヤ船長の作ったの、美味かった!」
アリヤ船長には今でもなんとなくムカッとするけど、あのオヤツはもう1度食べたいし、学園のみんなにも食べさせてあげたい。
エルミアさんも、きっと喜んでくれるぞ。
「パーティーなので、マカロンタワーにするのはどうでしょう?」
「さすがサクラ、良いアイデアだな」
「デレてないで、何か案を出しなさい、イヅナも」
ホワイトボードを神経質な文字で埋めていくジョナスの、銀縁眼鏡がキラリと光った。
「そうだなー、スルメはどうだ?」
「あなたをメンテナンスしてもらうよう、開発にオーダーしておきますよ、イヅナ」
ジョナス、今日も絶好調に不機嫌だな。
「でも、甘いものばかりなら、からいものもあったほうがいいよね、おねえちゃんっ」
「確かにそうだなー、ミシェル。なら、ポテチかフライドポテトかタコ焼きはどうだ?」
ジョナスがホワイトボードに 『フライドポテト』 だけを書きつけた。どうやら、ほかのものは認めない姿勢らしい。
「それでねっ、いろいろ味付けを変えるといいと思うの。マジカルレインボー味とか、バター醤油味とか、あっさり塩味とか」
「おお、なるほど。ミシェルは天才だな!」
「えへへへ」
頭をナデナデしてあげると、大きな緑色の目が嬉しそうに細められるのが…… うーん、かわいい!
「エリザは? なにか案があるかい?」
「そ、そうね……」
エリザ、珍しくも静かだと思ったが、なんだかやっぱり、様子がおかしいな? どうしたんだろう……
「はい!」
「はい、サクラ」
「アリヤ船長に、お菓子作りのレクチャーをしてもらったら、どうでしょう?」
エリザの顔が、あっという間に、ほんのり赤くなった。