14-24. レベルアップと新たな決意(1)
「あり得なかったわ…… あたくしどんなに速くても、もう2度と、戦闘機で帰宅なんてしないわ……」
「えーっ、そうかなぁ?」
珍しく真っ青な顔でのたまうエリザと、カーペットの上でガイド犬たちとゴロゴロしながら、首をかしげる俺。
そして、
「楽しかったですね」
とザックリしめくくる、サクラ。
―――― 今は1日ぶりの寮の部屋で、ログアウト前に 『戦闘機からの脱出』 パラシュート体験の余韻をみんなで、かみしめているところだ。
「風に乗ってふわふわ飛ぶ感じが、戦闘機とはまた違って」
「景色も遠くまで見渡せて、良かったよな! 山も海も河も、すごいキレイで」
「生身の人間があんな高さにいるなんて、あり得ないわよ!」
「生身じゃないぞ? ヘルメットかぶってたし」
あと、担当者の趣味をもろ反映した円錐形の胸つき耐Gスーツも。
(エリザが恥ずかしがりそうだから言わないけど)
「ジェットコースター得意なら、全然平気だろ?」
「ジェットコースターは回ったり進んだりするけど、本気で滑ったり落ちたりはしないのよ!」
「ふーん…… なるほど」
そっか。エリザは 『滑る』 『落ちる』 が苦手なんだな。
「なのによく、悪役令嬢コースなんて選んだな?」
「それとこれとは別よ!」
【wwww】
「ま、俺も 『モブコース』 だけどね!」
チロルを抱っこして空中に手を伸ばし、ステータス画面を出した。
夏休みの中盤から、忙しくてロクに見れてなかったけど…… 一緒にいっぱい遊んだしデートもしたから、好意値も友情値も、かなり上がってそうだな。
だが、まずは基本ステータスからだ。
≡≡≡≡ステータス ①≡≡≡≡
☆プレイヤー名☆ ヴェリノ・ブラック
☆職業☆ 学生
☆HP / MP☆ 46 / 23 ※
☆所持金☆ 19,350マル
☆装備☆ 制服 / 学生バッグ / 普通の靴 / 海のちちふさくん /ー /ー
☆ジョブスキル☆
・勉強 lv.8
☆一般スキル☆
・掃除 lv.8
・料理 lv.8
・飼育 lv.10 ペット数:2
・買い物 lv.11
・おしゃれ lv.11
・外出 lv.14 商店街、小運河 (舟)、マジカルーン山、マジカルーン湖、王立自然公園、大運河 (フェリー)
・魔法 lv.8 プチファイア、プチアクア、プチエアー
☆ペット☆
1)チロル (ガイド犬、シェルティ)
2)カホール (使い魔、ドラゴン) 貸出中:エルリック
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「あれ? お金が増えてる!?」
「をんっ!」
【ほとんどデートしかしてませんからww 使ったのはジョナスの髪止め代と戦闘機内のスチル保存代だけですよww 『ポケット妖怪』 コラボイベントのバイトもしましたしww】
「ああ、そっか……!」
チロルが俺の腕に肉球パンチしながら教えてくれなかったら、一瞬、悪女になっちゃったかと思うところだったよ!
(『貢いでもらった? 覚えてないわ』 的な)
「…… なにげに、スキルレベルが全部上がってるわね?」
「くぅーん……」
「本当だ! 勉強とか、全然してなかったのに……」
「をんをんをんっ♪」
「そういえば前から、デートすると少しだけレベルアップするんですよね?」
「きゃんきゃんきゃんっ」
不思議がる俺たちに、それぞれのガイド犬が説明してくれたところによると
【デートは、勉強になりますから、いろいろと♡】
【デートばかりしていても、スキルがある程度増えるようにという、運営・開発サイドの親心ですねww】
【チロルは説明しすぎでしゅ!】
…… って、ことらしかった。
「さて、次は持ち物だな!」
持ち物・称号といえば、今回の楽しみは、なんといっても、アレだ。
≡≡≡≡ステータス ②≡≡≡≡
☆持ち物☆
制服★ レースのドレス 海軍制服 浴衣(紺)ウェスタンスタイル 水着(ネコ耳・尾セット) 水着(スクール用) 学生バッグ★ 普通の靴 浮き輪
潮干狩り基本セット スチル用フレーム♡ 記念ボールペン(虹) 名刺 竜の涙(極小)50g 王室印・花のキャンディー缶 レターセット(白) 牧場のちちふさくん★ 海のちちふさくん★ ポケット妖怪マグカップ(青龍) ポケット妖怪ぬいぐるみ(青龍) 魔法の杖★
Pブラシ Pトリミングセット(バリカン付) Pフリスビー Pゴムボール P骨付きジャーキー(鹿児島産高級黒毛和牛) P冷感シート♡
B『犬種別☆おしゃれカット集』
B『ヴェリノのお料理メモ (焼きそば)』
B『ヴェリノのお料理メモ (だし巻き卵・ふわふわ卵)』
B『ヴェリノのお料理メモ (カレー)』
☆称号☆
◆潮干狩り初心者 ◆なりそこないライフセーバー ◆企画初心者 ◆生き物ふれあい中級者 ◆幸運の使者見習い ◆恋愛強者 ◆諦めない心 ◆ミス学園祭 ◆テイマー見習い・初級 ◆アルバイト見習い ◆テント師見習い・初級 ◆釣り師見習い・初級 ◆カウガール見習い・初級 ◆船旅中級者 ◆魅惑の女王様 ◆妖怪マスター
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「ポケット妖怪の青龍グッズに、魔法の杖! エルリック王子のおかげで、欲しかったのが一気に揃ったんだよなぁ」
王子とのデートで、山盛りのドーナツを一緒に食べて青龍マグカップを手に入れたのも、魔法の杖をプレゼントしてもらって悪者をやっつけたのも、良い思い出だ。
「あの時に確か、王子にペロペロされてたわよね」
「ああ、もうなんか、チロルと一緒だと思えばいいか、って…… って、なんでエリザ知ってんの?」
「……っ カンよ、ただのカン!」
「へえー。さすがエリザだな!」
手に入ったのはそれだけじゃない。
―――― ミシェルやジョナスとのデートのおかげで、ポケット妖怪コラボイベントのバイトも入ってきて。
そのバイトで、お金以外にもいろいろ、オマケがもらえたのだ。
「バイト代も嬉しいけど、それよりなにより 『カホール2号』 がウチに来たのが嬉しいな! 称号 『妖怪マスター』 も!」
片手にチロル、片手に青龍のぬいぐるみを抱きしめて毛足の長いカーペットの上をゴロゴロすれば……
「フゥゥゥゥゥッ! もふもふパラダイス! 癒されるぅ!!」
「それはそうと」
と、サクラが画面の端のほうをツンツンしてみせた。
「称号 『魅惑の女王』 って、なんでしょう?」




