14-10. ミサイル防衛軍(3)
「な、なによ、これっ!」
「え? なにか変か?」
「いや? 俺が着てたのと、一緒じゃん」
エリザの悲鳴に俺とイヅナが首をかしげ、サクラがすかさずスチルを撮り、エルリックが口に手を当てた。
「うん…… 似合ってるとは、思うよ?」
「お姉ちゃんほどじゃ、ないけどね」
「気になさる必要ありませんよ、エリザ様」
眼鏡の細い銀縁をクイッと押して、ずばっと言い放つ、ジョナス。
「誰も何とも思いませんから」
「こんな恥ずかしい服、着れるわけがないでしょっ!」
改めてエリザを観察すれば、アニメの宇宙軍っぽいデザインの、白地に赤いラインの入った服は…… 確か、レオタードっていったかな? それと同じくらいにピッタリしていて、身体のラインがバッチリ出ていた。
特にエリザは胸が大きいから。
胸に袋がついてるみたくなっていて、それがまた……
「いやほんと、カッコいいぞ、エリザ! まんまアニメの宇宙船パイロットだ! すごい、いけてる!」
「えええい! うるさい! チェンジよチェンジ!」
エリザが叫ぶと、服装が変わった…… 今度は、宇宙軍の上級士官っぽいデザインだな。
白いスカーフに、偉そうな感じの紺色のコートの下は……
「またヘソ出し!?」
【夏ですからww】
俺としては、スカーフの下からチラ見えしてる胸の谷間と、ナマのくびれのほうが、レオタードより非常に問題だと思うんだけどな……
「…… ま、これなら許容範囲ね」
女の子の感覚はよく分からん。
―――― エリザはそれから、初めてとは思えない素晴らしいボタン捌きで敵軍ミサイルを落としまくり、ギリ10位の成績になって、やっぱり悔しそうにしていた。
そして ――――
「これなら、わたしにも、できそうです」
サクラが、まさかの参戦。ちなみに、レオタード姿でOKだということだったが。
「サクラ…… ちょっと、上からこれ羽織っとけよ……」
イヅナは真っ赤な顔になって、着ていた制服の上着を脱いで手渡したのだった。
「え? どうしたんですか、イヅナさん?」
ああ (察し)
エリザが嫌がったせいで、レオタードが恥ずかしく見えてしまったんだな、イヅナは。
―――― エリザがレオタード拒否した主な原因は、わざとらしい 『乳袋』 だと思うんだけど…… それに比べれば俺やサクラの胸のラインは、ナチュラルかつ、ささやかだから、気にすることは全く無いはず、なんだけど……
それが気になるところが、尊い!
(俺も少しは恋愛ゲームわかってきた感)
「サクラ…… 何もきかず、着てやれよ。それが武士の情けというものだ」
「? そうですか?」
イヅナの上着を羽織ったサクラのスチル、つい5枚も連写してしまった、俺であった。
それからサクラは、普段の冷静沈着ぶりを発揮して、エリザより上位の9位を獲得。
「納得いかないわ!」
と、エリザがヘソ出しコート姿で再挑戦するも、僅差でサクラの下についてしまい……
「もちろん、また、島に呼んでくださるつもりよね。ええ、ありがとう、イヅナ。見直してあげてもいいわ!」
かなり無理やりに再来の約束を取りつけたりして、ミサイル迎撃ゲームは終わったのだった。
「よし、じゃあそろそろ、家に行くぞ」
「待ってました……!」
イヅナの家は地下にあって、この島のどこかにある転移陣から移動するんだったな。
「転移陣、この近くなの?」
「おう、すぐそこ」
イヅナがポケットから小ぶりのコントローラーっぽいものを取り出し、何かのスイッチを押した。
…… と。
[超大型弾道迎撃ミサイル発射、5秒前]
ゲームと同じ声のアナウンスが流れ始めた。今さらだけど、イケボだな。
[4、3、2、1…… 発射]
ちゅどごぉぉぉぉぉんっ!
ロケット型ミサイルが火を吹き、空高く打ち上げられていった跡には……
馴染み深い、転移用の魔法陣が描かれていたのだった。
7/7 誤字訂正しました! 報告くださった方、ありがとうございます!