14-8. ミサイル防衛軍(1)
小高い山を斜めに動くエレベーターに乗って登ると、ミサイル発射基地だ。
「近くで見ると、よりすごいなぁ……」
全長17mって、もしかして、学園の建物くらいあるんじゃないのかな?
ロケットみたいな形の白いボディーの上のほうに、初代ガイド犬・ちちふさくんのイラストと 『MBF』 の文字。
「エム・ビー・エフ?」
「をんをんっ♪」
【マジカル・ブリリアント・ファンタジー、ですよww】
チロルの説明に、エリザが 「ダサいわね」 と呟いた。そうかな?
「コントロールパネルの前に立つと、ミニゲームができるぞ」
「やるやる!」
コントロールパネルの前に行くと、アナウンスが流れ始めた。
[ようこそ 『ミサイル防衛軍』 へ。このゲームでは、宇宙空間を飛んでくる敵軍のミサイルを自軍のミサイルで撃ち落とすシミュレーションを行います。
核弾頭が降ってくる場合がありますので、必要ない方はあらかじめ『核弾頭off』 ボタンを押してください]
なるほど、俺たちが地下生活しなきゃならなくなったのも、核戦争のせいだから…… 『核』 と聞くと嫌なことを思い出す人に対する気遣い、ってわけか。殺伐としてるようでありながら、実はばあちゃんにも優しい仕様だな。
「けど、俺は別にいっか!」
むしろ核弾頭を防いで俺たちの街を守ってみたい!
[では、ゲームをスタートします]
あたりが暗くなり、あたり一面、またたかない星の世界が広がった。足の下は青い地球。
俺の服も、宇宙戦争アニメの軍服みたいなのに変わった。ピタッとした白地に赤いライン。似合うかな?
サクラが撮ってくれるスチルが楽しみだ。
[私たちは宇宙防衛船の中にいます ―― 敵軍からミサイルが飛んでくるとレーダーに映ります。ミサイルの大きさに合わせて、大・中・小、いずれかのボタンを押して迎撃してください]
「えっ、ここの発射台を使うんじゃないの?」
【それは、宇宙で撃ち漏らした場合の最後の手段、的なアレなのですよww】
チロルの説明によると、人類が地上で暮らしていた頃の防衛は、宇宙空間が普通だったそうだ。
【宇宙空間で核爆発が起きても、地上に落ちる頃には無害化されていますからww】
「えっ、じゃあなんで、俺たち今、地下にいるの?」
無害化できるなら、いくら戦争が起きても地上が汚染されたりはしなかったんじゃ……
【単純ですww】
チロルが俺の足を肉球でぺちぺち叩いた。
【世界中の核弾頭の数が、迎撃ミサイルの数を超えたからですよww
核弾頭を無害化できるレベルで破壊するには、複数の迎撃ミサイルが必要ですからww 一斉に使われた時点で終わりですww
その数だけ迎撃ミサイルを用意するより、他の生態系壊滅させて地下に引っ越したほうが、安上がりっていうねww】
「おおお…… さすが、人類史上最大の愚行……」
今さらだけど、なんで 『やめとこ』 って話にならなかったんだろうな!?
ビーッ、ビーッ、ビーッ ……
アラームが鳴り、レーダーに敵軍ミサイルらしい赤い影が映った…… 複数だ。
これは、ボタン連打とかでいいのかな?
取りあえず、使い勝手が良さそうな中型ミサイルのボタンをたくさん、押してみる。
「おお…… 飛んでいったぞ!」
自軍の青いミサイルが、すごい勢いで赤いミサイル目掛けて飛んでいき、あちこちで爆発が起こった。爆発は緑~黄のグラデーション。わかりやすい。
ボタン押しすぎたせいかな。青いミサイル同士もぶつかって爆発を起こしていて、こっちは黒だ。
[弾数には限りがありますので、御注意ください]
「了解!」
しばらく遊んでいると、敵軍のミサイルの大きさと迎撃ミサイルの大きさは大体、1対1でいけることがわかった。敵軍のミサイルより小さい迎撃ミサイルを使うときは、3~5発は必要だ。
そして、大型ミサイルを1つ撃ち落とすごとに15点、中型ミサイル10点、小型ミサイル5点の点数が入る。撃ち漏らして自軍が損害を受けたら、それぞれのミサイルの点数分だけ、マイナスになってしまう。
最終的には、弾が無くなった時点の点数を競うようだ。モニター横のパネルには、1位から50位まで、ずらりとゲーム参加者の名前が並んでる。俺も入れるかな?
作戦はもう決まった。
後は ―――― ひたすら撃つだけだ。




