14-6. 体験☆スナイパー・アサシン(3)
「あ、これ、あのアニメの無口な殺し屋さんが持ってるヤツ! カッコいい!」
[セミオート式狙撃ライフル・Magi16。全長1,000mm、重さ3.5kg、射程0.5km]
「え? 意外と性能……」
をんっ、とチロルが吠えた。
【いわゆる 『見掛け倒し』 ですねww モデルとなった銃も、銃身の自動清掃機能がついてるのがウリだったのですが、実戦ではあまり使えず不評だったそうですww】
「ええっ!? じゃ、あの殺し屋さん、本気で天才じゃん!」
【何を今さらww】
速いテンポの音楽が鳴り、視界が切り替わる。青空に戦闘機が飛び始めた。すっきりと優美な、大型の白いボディー。そんなに速くないな。
[イージーコースから始めます。合図があれば、引き金を引いてください]
「あれ、計算とかは? 風向きとか地球の自転とか、戦闘機そのものの速さに弾丸の重さ……」
さっきエリザのを見ながら、ミシェルが教えてくれたところによると、そういう要素全てを計算して、それがピタッと合ってヒットする瞬間が超気持ちいいんだそうだ。
【計算、できるんですかww】
「いや、無理!」
【wwww イージーコースは自動計算ですww 2発目からはハードコースに切り替え可能ですので、慣れたらやってみたらいかがですかww】
「うん、ミシェルに頼むかな……」
俺は全然、できる自信ない! 難しすぎて、考えてる途中に寝ちゃう自信なら、あるけど。
[イマデス!]
目の前で大きく旋回する戦闘機が、まだスコープに全然入らないうちに、合図がかかる。
慌てて引き金をひいたが、間に合わなかった。
戦闘機が 『Sorry!』 って形に飛行機雲を出しながら飛び去っていくのが、微妙に腹立つ……
チロルが 「をんをんっ♪」 と吠えた。
【戦闘機の狙撃では、スコープ役に立ちませんよww】
「だな…… 視界に入った時には、もう通り過ぎちゃってる感じ!」
自動計算に頼るしかないな。
よし、今度はもっとタイミング合わせるぞ。
[イマ] デス、が終わる前に引き金を引く。
「あたった…… あれ? かわされた?」
なんと戦闘機、間一髪で弾丸を避けてしまった。ついでの華麗な宙返りについ、見とれてしまう…… けど。
「それ、あり!?」
【アレは速さはイマイチですが、優れたレーダー機能がついているのでww】
「えええ…… うっそぉ……」
それからも、タイミングが合わなかったり避けられたりで、何回か失敗して、やっと仕留められた時にはもう5、6分が経っていた。
みんな、俺が終わるの待っててくれてるけど、この感じじゃ、終わるまでにあと10分はかかりそうだ。
「おーい、みんな! 良かったら、先に行っててくれ!」
【ここでは、そればっかりですねww】
チロルは舌をチョロっと出して笑った (と思う、絶対) が、イヅナは 「大丈夫だ!」 と叫んで手を振ってくれた。
エリザは扇でしっしっ、と追い払う仕草…… 「こっちを気づかう時間があるなら、さっさと終わらせておしまい!」 って感じかな?
みんなの親切さが、嬉しい…… よし、頑張るぞ!
「お姉ちゃん、ボクも手伝います!」
「カホール モ……!」
「ちょっと、カホール、邪魔だよ!」
「ヤダ、オリナイ モンネー」
「もうっ」
ミシェルが頭の上のカホールを引き剥がそうと格闘しつつ、俺の隣に立ってくれた。服装が、俺とお揃いのヘソ出しミリタリーに変わってる…… NPCの短パンは、超ミニじゃなくて膝丈か。
[2機目です]
次の戦闘機は、銀色のボディーでやや小型。丸い頭とカイトみたいな翼が、なんだか昆虫っぽい。よく動くな。
最初っから 『Heeey! Come Ooooon!』 ってスモークを描いてくるのが…… バカにされてる感。
「落ち着いてください。ボクがお姉ちゃんの腰を軽く叩きますから、そこですぐ発射です…… はい! あ、ごめんなさいっ」
ミシェル、戦闘機に気を取られすぎて、手が腰じゃなくてお尻に当たっちゃったのだ。
だから、ってわけじゃないと思うけど、1発目はまた、外れた……
「ごめんなさいっ、わざとじゃないからっ……」
真っ赤になって何度も頭を下げるミシェル。そのたびに、カホールがパタパタ飛び上がり、そしてヘソ出しのナマ背中がヒョコヒョコと動くのが…… うん、めちゃくちゃ、かわいい。
「い、いやまぁ、これは、事故だからな。なんとも思ってないから、OK、OK! ほら、次頼む!」
「わぁんっ…… お姉ちゃん、大好きぃ……っ!」
「うんうん、俺も、ミシェル大好きだぞ!」
そういえば、しがみついてくる頭がちょうど横チチに当たってるんだが…… ま、別にいいか!
ミシェルの手が軽く、(今度はちゃんと) 俺の腰に当たり、ライフルから眩いばかりの光線が、太陽に輝く機体めがけて、飛んでいった。