14-1. イヅナの家へ行こう(1)
お久しぶりです!&お待たせしました!(
今日からイヅナお宅訪問編、2週間強、連続して更新予定です。
特に何事も起こらず楽しく遊んでるだけなので、気になるところだけでもお読みいただければ有難いです m(_ _)m
でーーはーー!
夏休み最終日 ――――
「やっほーーーー! うーーーみーーーー!」
「じゃなくて、運河でしょ」
「をんをんをんっ♪」
「くぅーん……」
「きゃんきゃんきゃんきゃんっ!」
「マテー! タッチ! ハイ、ツギハ チロルガ オニ ネ!」
俺たちは、またしても船に乗っていた。大型豪華客船じゃなく、おなじみイヅナのプライベート船 『サクラ・ヴィーナス』 だ。
今日は実はイヅナとのデート…… だったけど、「サクラも誘うよな」 「てことは、エリザも呼んだほうがいいな」 「というか、これはもう、みんなで行ったら楽しいんじゃ?」 「賛成! じゃ、俺んち来るか? 前に約束してたし」 って流れで、みんなで一緒にイヅナの家 ―― 島ひとつが丸々、要塞だとかいうアレ ―― に遊びに行くことになった。
俺とイヅナって、本当、気が合うよな!
「豪華客船もいいけど、これくらいの大きさだと波と風が間近に感じられて楽しいな」
「ま、これくらい庶民ぽいほうがイヅナにはお似合いよね」
「そうそう。よく考えたら金持ちのお坊ちゃんだけど、気さくだし親切だし、いいやつだよな、イヅナって!」
鬼ごっこしてるガイド犬たちとカホールの横で、ミシェルとタ◯タニックごっこをしながら、エリザとのんびり話していると、エプロン姿のサクラが呼びにきた。
「おやつですよ」
「おお! ありがとう!」
コーヒーの良い香りが漂ってくる。
恒例、甲板でのおやつタイムだ。
「今日は、エルリック王子の差し入れで、アイスクリームケーキです」
「やったー! 美味しそう!」
「選んだのはジョナスだけどね」
爽やかな笑顔を見せるエルリックの隣で、ジョナスが眼鏡の細い銀縁をクイッと押さえた。
「王子のお口に合うものを厳選させていただいただけですが、なにか?」
「けど、『Mon Chaton』 のケーキにしたのは、ヴェリノが夏季限定商品を食べたい、と言ってたからなんだよね、ジョナス?」
「はて 「おおっ、まじかジョナス! 愛を感じるぜ! ありがとう! エルリックもありがとう!」
そうそう。 『Mon Chaton』 には夏休み中に食べに行こう、と思ってたのに、意外と行事がありすぎて、行けなかったんだよな。ゲームばかりじゃなく、リアルの宿題もしなきゃならなかったし。
エルリックとジョナスが覚えててくれたなんて、感激だ。
「すごいなー! 食べるのがもったいないくらいキレイだな」
アイスクリームケーキは、チョコレートとバニラの二層で、ラズベリーのソースがかかって、ついでに上に金箔がちょこっと乗ってるやつだった。
脇には、オレンジやパイナップル、キウイにさくらんぼ、といったフルーツが、これまた彩りよく盛り沢山だ。
イヅナも、ホレボレと皿の上を見つめている。
「さすがサクラだな! 盛り付けのセンスがいい」
「それしたの、シェフですよ、イヅナさん。わたしはカット担当です」
「う…… あ、ああ、ほんとだ! カット面も芸術的で、いかにもサクラらしいぞ」
いやカット面は普通だろ。
と、ツッコミを入れたくなったが、サクラがくすくす笑って良い雰囲気だったから、温かく見守ることにした。癒されるなぁ……
「みなさま、アイスクリームが溶けてから召し上がるのかしら?」
エリザのこの、上からな声は…… 早く食べたいんだな、つまり。
「じゃ、食べよう!」
みんなで 「いただきます」 をして、ひとくちアイスケーキを口に入れた途端。
俺の全身を甘い風が、さぁっと、吹き抜けた。
「ぅぉぉおおおおおっ! 冷たい! うまい!」
こっくりと濃いチョコクリームアイスをバニラアイスが優しくフォロー。舌の上で文字どおり優しくとろけた2種の甘味を、ラズベリーソースがサッパリと仕上げて……
「これにフルーツ添えたら、エンドレスで食べられちゃう感!」
「えっ、ほんと!? お姉ちゃん、あーんして!」
俺にぴっとりとくっつき、大きな緑の目を軽く閉じて口をあーんとあけて見せるのはミシェル。
自分の前にもちゃんとケーキがあるのに…… 俺にあーんしてもらいたいとか…… くぅぅぅっ、可愛すぎる!
「はい、ミシェル、あーん」
「ふぉぉお…… 本当に美味しいね、お姉ちゃん!」
「ミシェル。口の中にモノを入れて話しません」
ジョナス、保護者化してるなぁ……。
「たくさんもらってるから、どんどん食べてな!」
イヅナの言うとおり、おかわりはいくらでもあった。
みんなでおしゃべりをしながら、アイスケーキとフルーツを延々と食べているうちに、船は河口を出たようだ。
ぼぉーっ、という汽笛の音に気づいた時には、島がもう、かなり近づいていた。