閑話10. ふたりきり?のデート③~ジョナス(2)~
主人公視点(1人称)⇒ サクラ サイド ⇒ エリザ サイド です。
「デパートごときの中途半端な品物、もらっても王子は困るだけです」
「ジョナス、だからそういう、庶民の心を抉る発言はやめてっ…… 」
結局お土産は、ジョナスの主張で、みんなの分まとめてデパート限定食品で、ってことになった。ほかの売場よりも若干お財布に優しい、地階の食料品売り場だ。
「けど、ミシェルに首輪も良かったと思うなぁ……」
「いちいち買ってると時間が無いでしょう。それに、あと少しで変身が解けるんですよ?」
「首輪して抱っこしてスチル撮りたかった…… もふもふミシェル、めちゃくちゃ可愛いかっただろ?」
「…… それは否定しませんが」
「だよな! ジョナスなら、分かってくれると思ってた……!」
「変身解ける前にスチルを撮るだけですから…… ラッピング用のリボンでじゅうぶんかと」
「あっ、それ可愛いかも!」
【wwwwwwww】
チロルがなぜか急に多めに草生やしたりしたが、ま、チロルだからそんなこともあるか。
「けど、先にお土産、何にするか決めきゃなぁ……」
目の前には、初代もふもふガイド犬・ちちふさくんを象ったチョコやキャンディー、意外と珍しい、イケメンNPC5人組のスチル付きサブレなどなど……
このゲームを代表する、と言っても過言ではない感じのお土産が、山ほど並んでる。
「まず、エルリック王子は 『ちちふさくんチョコ』 だろ。ミニフィギュア付きだし!」
「よろしい。いくつ買いますか?」
「フィギュアが5種類だから、1つずつ!」
「合格です」
ジョナスがぐっと眼鏡を押し上げた。
「支払いは私がしますから、心配しないで結構」
うーん、大人のお姉さんみ!
「なんか今、きゅんときたっ!」
「………… バカなこと言ってないで、さっさとイヅナとミシェルのも選びなさい」
「よし、じゃ、あっちいこ!」
俺はジョナスの手を引っ張って、売場を回った。
次に気になるのは、『ポテトチップス・マジカルレインボー味』 だ。試食があるな。どれどれ……
「うぉっ! 辛っ!」
このピリピリした辛さは、日陰トウガラシ系の…… でも、食べ慣れてくると、もっと味わい豊かで奥深いし、香りも良い気がする。
「なんだろうなー、これ…… ジョナスも食べてみて!」
つまんでジョナスの口に押し込むと、しばらくモゴモゴやった後、こう言った。
「七味唐辛子ですね」
「七味トウガラシ?」
【トウガラシに、陳皮や山椒、ゴマ、ケシの実などの薬味を加えて香り豊かに仕上げた、ミックススパイスですww
ちなみに、マジカルレインボー味は 陳皮の代わりにユズの皮、それとショウガも入ってますよww】
「うん、何か色々入ってることだけは分かった!」
「理解が大雑把すぎるところが、あなたらしい」
「ま、いいからいいから! …… これは、ミシェルだな」
さて、後はイヅナへのお土産を見つけたら、最後だ。イヅナとは、デートの代わりにみんなでお宅訪問することが決まってるから……
「ちょっと 『おっ!?』 って思わせる意外性がありつつ、しかも普通に嬉しいやつ!」
【 『すごく嬉しい』 じゃないんですねww 】
「だって、海運王の息子がデパ地下食品でそこまで喜ぶわけないじゃん!」
「そこをわきまえておられるとは、大変けっこう」
「だろ!? 俺だって、わかってるんだよね!」
俺は再びジョナスの手を引っ張って、デパート限定食品コーナーを周りはじめた。
※※※※
そんなヴェリノとジョナスを、物陰から涙ながらに見守っているのは、モブNPCに変身中のサクラに抱っこされた子狐だ。
「あああ…… ジョナスったら、もう……! ずっるぅぅぅぅい! ずっるぅぅぅぅい! ずっるぅぅぅぅい!」
「ミシェルさんだって、こうして抱っこしてコチョコチョしてあげてるじゃないですか、わたしが」
「んっもうっ……! どうして動物なんかに変身しちゃったのかな、ボク……」
「グッジョブですよ、ミシェルさん」
サクラの器用そうな指先が、子狐のモフモフしたアゴの毛をわしゃわしゃと掻き分けた。
「きっとヴェリノさんも、ミシェルさんが一番可愛いと思ってますって」
「…… そう?」
「ええ、もちろん。だって、わたしでも、そう思いますから!」
ニッコリと太鼓判押しつつ、ミシェルをもふり続けるサクラであった……。
※※※※
その頃、屋上の遊園地では。
青いツインテール美少女が、人気アニメ 『ポケット妖怪』 イチのイケメンキャラであるヴァンパイアの腕につかまって歩いていた…… カホールと、エリザである。
「ネエネエ。サイゴハ メリーゴーラウンド デ イイ?」
「ふっ…… お子様ね。ま、付き合ってあげないことも、ないわ?」
「ワーイ! ジャ イコ! オトーサン!」
「ええい、せめてマスターとお呼びっ! あと、ポヨポヨしないで!」
「ウラヤマシカッタラ、オトーサンモ アトデ シテミレバ?」
「そっ、そんなんじゃないわよ!」
青白い肌をわかりやすくピンクがかった紫に変える、イケメンヴァンパイアであった。
―――― 集合時間まで、あと、15分 ――――
5/31 誤字訂正しました!報告下さった方、どうもありがとうございます!