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閑話10. ふたりきり?のデート③~ジョナス(1)~

「をんをんをんっ♪」


 早足で歩く俺にまとわりつくように跳びはねる、チロル。いつもよりも楽しそうだな。


【でww いつ、あんなことやこんなことしてもらうんですかww】


「俺に聞くなよ…… ウカツにさわれない雰囲気なんだから」


 大人のお姉さんに、あんなことやこんなこと。

 ―――― サクラの甘言につい乗ってしまったが、現実はそんなに甘くなかった。


 だって…… 外見は大人のお姉さんでも、中身はジョナスなんだよ。というか、女体化した方が元々より、雰囲気が怖くなっちゃって……


 ウカツに手を出したら、確実に氷漬けにされそうっ!


「そうだ……!」


「なにか」


「ねえねえ、今から、お姉さんって呼んでいい? ジョナスのお姉さんって設定で!」


「…… は?」


「…… ですよね。すみません」


 ものすごい、しょっぱ冷たい対応には、うなだれるしかない。

 ―――― ちなみに今俺たちは、ジョナスの歩調に合わせて、かなり早足で園内を歩いているんだが…… これじゃ、デートはもとより、散歩ですらなく…… うん、修行だな。


「ねえ、なんか乗りたいものとかないの? したいこととか!」


「…… 別に。強いて言うなら、このバカバカしい変身を早く解いて、さっさと帰りたいですが」


 えええ! そんな! せっかく美女なのにもったいない!


 …… なにか、なにか無いか?

 ジョナスの興味をひきそうなことが……!


「あ、そうだ!」


「…… 今度は、何でしょうか」


「エルリック王子に、お土産買おう! ついでにイヅナにも!」


 そう。何も遊園地にだけこだわらなくても、この下はデパートじゃないか。


 ジョナスといえば、エルリック王子を持ち出しておけば絶対OK!


 俺の読みは、当たった。


「仕方ないですね。あと1時間…… いえ50分ほどですから、急いで買いに行かなければ」


 さらに歩調を早めて、遊園地の出口…… デパートの入り口に向かう、ジョナス。

 その背中がなんだかちょっと、ホッとしてるように見えたのは、俺の気のせいなんだろうな、多分。



 ※※※※



「デパートの方に行くみたいですね、ふたり。お買い物でしょうか」


「もう! サクラのせいだよっ。ボクがお姉ちゃんと…… あっ」


「ほらほら、そんなにヤキモチやかないでください。ミシェルさんなら、いつヴェリノさん誘っても、OKしてもらえるでしょ?」


「…… んっ、もうっ!」


 子狐ミシェルのアゴを指でくすぐりながら、密かにジョナスとヴェリノの後を追う、サクラであった。



 ※※※※



 デパートの中は、遊園地とはまた違う感じでキラキラしていた。

 高い天井からは、イルカがフープをくぐっているオブジェが下がっていて、いかにも夏らしい。


「最上階は家具に食器、次はルームウェアと寝具、次は子ども服とペット用品だから飛ばして、その下がメンズ小物…… やっぱりここかな?

 でも、ガラスもいいな!」


 今通っているのは最上階で、ガラスフェアをやっている。

 透明度がめちゃくちゃ高くて、虹色の光を放つグラスや、繊細な切子細工の色ガラス…… どれも涼しげでキレイだなぁ!


「やめときなさい。あなたの財力ではとても無理ですし、王城にあるものと比べたら、こんなのガラクタですから」


「うわっ、さすがジョナス!」


 貧乏人の心を(えぐ)る発言が、ナチュラルに出てくるところが…… うん、痛すぎてもはや気持ち良い気さえするぞ。


「けど、これくらいなら買えるな」


 ガラスのアクセサリーのコーナーは、食器や花瓶と比べると手頃な値段のものが並んでいる。


「よしなさい。そういうのを、アンカリング効果というんです」


「をんっ♪」


【マーケティングの手法の1つですよww 大きくふっかけてから、より安い値段を提示すると 『ワタシにも買えちゃうっ』 と嬉しくなってつい買ってしまう、というアレですねww】 という、チロルの説明はわからないこともないけど……


「でも、せっかく来たんだから、買いたいもんっ! よし、これにしよう」


「バカですね」


【バカですねwwww】


 ふたり同時にバカって言われながら、俺は、ルビーみたいな赤いガラスと銀でできた髪留めを買った。


「はい、ジョナス!」


「…… は?」


「いやーだって、オシャレしてみてほしいじゃん! 時間限定とはいえ、せっかく女の子になってるんだから!」


 そうなのだ。

 ジョナス (女体化) は、紛れもなく美女なんだが、飾り気が足りない。

 もったいないな、と思った途端、どうしても飾ってみたくなったのだ……!


 女の子にアレコレ貢ぐNPC(男子)の気持ちが、この30分ほどでよく分かった、俺である。


 が、ジョナスの氷の眼差しの威力は、女体化しても変わらなかった……。


「いりません」


「うっ……」


 ひるむ、俺。

 確かにジョナスは買おうと思えば本物の宝石だって買える財力があるわけで…… ガラスのアクセサリーなんて、オモチャにしか見えないのかもしれないな。


「うーん、やっぱりジョナスは女の子になっても、高級品一択の本物志向かぁ……」


「そのようなこと、申しておりませんが」


「でも、俺、そこまでお金(マル)無いしなぁ…… よし! ここは、エリザとサクラにも協力を頼もう!」


 ジョナス (女体化) を飾る、って言ったら、エリザもサクラも喜んで協力してくれそうな気がする。


「そうと決まれば、ちょっと待ってて! ふたり呼んでくるから……!」


 駆け出した俺の腕を、ジョナスがガシッと掴まえた。


「…… それで結構です」


「ほんと!? 良かった! 実は、絶対似合うと思って買ったんだよね。じゃあ、つけてあげる!」


「……っ 自分でつけます!」


「おっ、そうか! ありがとうジョナス! 世界イチ美人だぞ!」


 どこかから、「ずっるぅぅぅぅい!」 というミシェルの声が聞こえた気がしたから…… 首輪でも、買ってあげようかな?


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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ジョナス……。(ホロリ) お前さんのようなタイプの人間にとって、天然ほど恐ろしいもんはないのう……。
[一言] ジョナスに首輪でも良かったのでは? Σ( ̄□ ̄|||)ww とか怖いことも思ってしまいました。
[一言] 元々は男の子なヴェリノが、ゲームの中では女の子になって、でも今はオジサンで……。 逆にジョナスは元々男だけど、今は女で……。 うーん、カオスゥ!!www(褒め言葉)
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