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13-20. リゾートへ行こう(20)~だんらん~

 仮ログアウト後あれこれ用事やリアルでの夕ごはんを済ませて、もう一度コテージに戻ってきた時には、夜8時になっていた。



「チャンプルーと天ぷらはいける! でも、甘酢漬けは俺、苦手……!」


「そうですか? わたしは好きですけど」


「あたくしも」


「あたしもー! あ、もちろんハロルド(はっち)の方が好きだけどー!」


 俺たちは、海の波音が聞こえる縁側で、ジョナスが作ったゴーヤ尽くしメニューを食べていた。


『オキナワといえばゴーヤ』 とミシェルもエルリック王子もイヅナもチロルもそう言うし、チャンプルーも天ぷらも確かに美味い。


 特に天ぷらはサクサクのフワフワで、雪塩つけて食べると、あのハロルドでさえ、素直にほめるレベルだ…… だけど。


「甘酢漬けは、変に甘くて酸っぱくて苦い!」


「そこが、おいしいのにー!」


「さっぱりして、暑さが飛ぶ感じがしますよね」


「これは、ほめてあげてもよくってよ」


 どうやら、女子たちは甘酢漬けが一番気に入ってるみたいだ。


「甘くて酸っぱくてほろ苦い、恋の味ー! みたいなー? ねー、リザたん?」


「どどどうして、あたくしに振るのよっ!」


「えーだってー、タイムリーだからー。そー考えると、ヴぇっちだって食べられるでしょー?」


「いやー、悪い、エルミアさん(ルミたん)。それは、ますます無理かも!」


 口の中で、酸っぱさと苦味が増した気がして、俺は慌ててグァバジュース味のポーションを流し込んだ。


 さて、ゴーヤメニューも一通り食べたし、次はいよいよ、作戦開始だな!


「おーい、みんな! なんか、笑えること言ってみて!」


「それは……」


 エルリック王子が、首をかしげた。


「ジョークとかそういうものかい?」


「なんでもありで!」


 そう。俺の 『百年の恋も冷める』 作戦、その1は…… 『鼻からポーション』 なのだ!

 そして、王子の (実質) 命令で俺たちに付き合ってくれてるものの、相変わらず黙り込んだままのジョナスを、呆れさせる!

「こんな女の子(プレイヤー)のために悩むなんてバカらしい」 そう思わせたら…… 俺の勝ちだ。

 もしかして、すっごい面白かったらジョナスも笑うかもしれないから、まさに一石二鳥の良い作戦! (自画自賛)


「はいはいはーい! エルミアさん(ルミたん)行きますー!」


「よし、頼む!」


 俺はポーションを飲みながら、待機した。


「前にハロルド(はっち)とねー、監禁ごっこしてた時にー、ハロルド(はっち)が首輪の鍵無くしちゃったのー。

 それでー、ハロルド(はっち)ったら最初は余裕で 『お前みたいな女には当然だよね。ずっと家畜のままでいろ、っていう神の啓示かな?』 とか言ってたのにー、ずっと見つからなかったら最後は泣き出しちゃってー 『このままだったらどうしよぉ……』 ってー。もー可愛くてキュンキュンしちゃったー」


「おおお、それは…… 気の毒だったな」


 エルミアさんはきゃらきゃら笑っているが、俺たちは誰も笑えない……。


 だって、エルミアさんの隣に座ってるハロルドの笑顔が、なんだか段々、こわい感じになってきているんだもの……! 


「じゃあ次は、ボク行きますね!」


 俺の膝の上で、ミシェルが言い出したのは、自宅の実験室で爆弾を作った時の話だった。


「運営から、『このゲームでは武器はNGです。従わない場合は、あなたを強制的に修理します』 と言われたので 『ボクが爆弾を作るのは、現実の世界が壊れても、このゲームを存続させるためですよ』 と答えたら、何も言われなくなりました」


「…… その心は?」


「ゲーム運営が経営難に陥った時に、この爆弾レシピを売れば破格の大金を稼げます! ……もっとも、実際に使われちゃったら 『人類史上最大の愚行』 更新、ですけどね?」


「笑えねえ!」


「えええ、そっかなぁ?」


 きゅるん、と大きな緑色の目でかわいらしく見つめられても…… それは危険すぎるだろう!



「じゃあ、あたくしも」


「おおっ、なんとエリザがっ!? なになに?」


「ある時、リアルの父があたくしに言ったのよ。『父さんの会社が倒産したんだ』 って…… おーっほっほっほっほっほ!」


「笑えねええええ!」


「あら? 面白いでしょ?」


「なんでだ!?」


「をんをんをんっ!」


 チロルが俺の足を肉球でぺちぺちした。


【それは(いにしえ)の文化 『ダジャレ』 ですよwwww 似た音で別の意味の言葉を合わせる伝統ある遊びですが…… 後年 『ダサい』 『親父くさい』 と貶められるようになり、衰退していったのですwwww】


 なるほど、そんなものがあったのか。


「それなら、俺も思いついたぞ!」


 なぜかイヅナが乗ってきた。


「何年か前に難破船の救出に行ったら、美女にナンパされたんだが 『俺にはサクラがいるから』 って断ったんだ。すると 『そんなこと(ゆう)う? 礼儀(れいぎ)知らずぅぅ!』 って叫びながら消えていってさぁ…… 

 つまり、その難破船は幽霊船になっちゃってたってわけ! ちなみに船名は 『鷺白水(さぎしらず)』 」


「うん、それっぽい! けどむしろこわい……!」


あと、船名が無理やりすぎる気がする。


「じゃあ、こんなのはどうですか?」


 サクラが、非常に真面目な顔で俺をじっと見つめた…… 

 何を、言い出す気だ?


「ふとんがふっとんだ」


「ぶっ……!」


 よく考えるとそんなに面白くはない! エリザなんか 「定番ね」 って言ってるし……

 けど、なんか、ツボに入った!


「あああ…… ジュース飲んでるタイミングで、言ってくれたら良かったのに!」


「笑おうと力むと、かえって笑えないものかもしれませんよ?」


「うーん…… 確かに」


 そうだなー、とポーションを1口飲んで、考え込む俺。

 …… 確かに、普通に話してたら、もう笑いまくってたかもしれないな?

 実際に面白いかどうか、というより、仲間とこういう話するのは、普通にすごく楽しいと思うし。




「そういうことなら」


 エルリック王子がおもむろにうなずいた。



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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[一言] 甘酢は……ボンクラもニガテでごわす。(ごわす?) 甘酸っぱいのはデザートだけでいいんだよおお……。
[一言] ゴーヤの天ぷら食べたことないです (;'∀') なんだか、おいしいそう~♪ 親父ギャグって未来だと衰退してるんですねw 面白いと思うけどなぁ ><。
[一言] 今日もジョナスがぐだぐだで、ごはんがうまい!!! 自覚してもしなくても、ハチャメチャなジョナスが大好き♥️ ちんすこう、めちゃくちゃ美味しいですよね。 ジョナスには早く元気になってもらっ…
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