13-16. リゾートへ行こう(16)~リゾートのスーパー~
「をんをんをんっ♪ をんっ!」
「あーいたいた。ジョナスだ。…… すごいなぁ、箱3つ余裕で抱えてる」
「意外と力持ちなんだよね、ジョナスさん」
「ウラヤマ! ムカツク! …… ッテ、オモッテルネ、ミシェル」
「そんなことないもんっ!」
結局、スーパーにジョナスを手伝いに行ったのは、俺とチロルとミシェル、それにくっついてきたカホールだけだった。ミシェルは、ジョナスのことはどうでもよくて、俺を手伝いたいらしい…… くぅぅぅっ、可愛いヤツめっ!
コテージから15分ほど歩いてスーパーの駐車場に着くと、ジョナスはちょうど、屋根なしリムジンに食材を積んでいるところだった。
エルリック王子のために十分買っておこう、ってこともあるんだろう。
食材は、大きな段ボール箱にぎっちりいっぱいだ。
早く、手伝ってあげなきゃな!
「おーい、ジョナスぅ!」
手を振って叫ぶと、一瞬、ジョナスの動きがピタッと止まった。
「今、そっちに手伝いに行くからなぁぁぁっ!」
「………………!」
駆け寄ろうとする俺たちの目の前で、ジョナスは慌てたように荷物を座席に載せ、運転席に乗り込んで……
バタン! と、ドアを閉めると、そのまま発車してしまった。
「おい! ちょっと待てよ!」
走って追いかける、俺とチロル、その俺たちを追いかけるミシェルとカホール全員を、きれいに無視して、リムジンは走り去った。
「…… どうしちゃったんだろうな、ジョナス?」
みるみるうちに小さくなっていくリムジンを見送って、呆然と呟く、俺。
「まさか、見えてなかったとか? いや、生き霊とか強盗と間違えたのかな?」
「どっちにしても、ひどいよっ! ね、お姉ちゃん!?」
ミシェルが憤慨してるけど、きっと何か理由があったに違いない。
―――― だってジョナスは、こういう時には渋々、引き返してくれて、めちゃくちゃイヤミを言うタイプだと思うから!
「…… うーん。トイレに行きたかったとか、かな?」
「ボクらトイレしないよ?」
「じゃあ、エルリック王子に急いで会いたかった! もともと、『片時も離れません』 みたいな感じだしな」
「お姉ちゃんの水着選ぶ時は、ひとりで来てたけど?」
「うーーーん。じゃあ、なんでだ」
「をんをんをんっ♪」
頭を抱えてる俺に、チロルが言ってはならないひとことを言った…… すなわち。
【避けられてますねwwww】
「サケラレテルネ、ヴェリノ」
「避けられてるよね、お姉ちゃんっ」
…… みんなで悲しくなること、言わないでほしいなっ。
「絶対違うと思う! だって、俺、ジョナスにそこまで怒られるようなこと、何にもしてないもんね!」
【いつもしてる、の間違いじゃないですかwwww】
「ちょっと怒られることはしてるけど、めちゃくちゃ怒られることはしてない!」
【はいはいwwww】 「ハイ、ハイ」 「そうだよね、お姉ちゃんっ」
…… 2匹と1人で、揃って憐れむような目を向けないでほしいなっ!
と、まぁ、ジョナスのことは気になるけど、分からないんだから仕方ない。
―――― 後で事情は詳しく聞くことにして、俺たちはとりあえず、スーパーに寄ってみた。
「おおっ、リゾートのスーパー、けっこう街にはない品揃え!」
【オキナワの特産品を中心に揃えていますww】
「へえ…… だから、聞いたことないネーミングの食材が多いのか……」
「お姉ちゃん! これ美味しそうだよ!」
「ああ、確かにいい色だよなー!」
ミシェルが嬉しそうに差し出すのは、厚切りの肉だ。
「けど、肉はジョナスがもう買ってそうだから…… お、これなんだ?」
プチプチした緑の小さいツブツブがついてる、ちょっと海藻っぽい何か。
「ウミブドウ ネ」
【これも特産品ですねww】
「へえ……!」
世の中には知らないものがいっぱい、あるなぁ……!
島豆腐にピーナッツ豆腐、青いパパイヤと甘い香りを放つパイナップルにマンゴー……
気になるものはたくさんあるけど、ジョナスの買い物と被らないように考えた結果、俺たちはお菓子を中心に買うことにした。
「やっほぉぉお! 神!」
なんと、お菓子はそれぞれ試食付きだ。
ほろほろのクッキーみたいな味わいの 『ちんすこう』 、ドーナッツに良く似た 『サーターアンダギー』 、鮮やかな赤紫色の 『紅芋タルト』 、黒糖キャラメルに黒糖チョコレート……
「お菓子はお菓子で、迷うな!」
「全部、買っちゃえば?」
「おっ、そうするかぁ!」
幸いにも、バイトイベントのおかげでお金はまだある!
俺とミシェルは、買い物かごにお菓子を1つずつ、かごがいっぱいになるまで入れていった。
―――― みんな、喜んでくれるといいなぁ!