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13-9. リゾートへ行こう(9)~操舵室~

「うーん。普通に仲良くなろうと思っとけば、仲良くなれると思うけどな? あと、イヤなことは言わない! 

 …… と言いたいけど、俺、最初にエルリック王子をディスりまくって妙に感動されちゃったし…… その辺は人それぞれかな? 

 エリザのその上から目線の高飛車発言だって、気に入ってくれる人は気に入ってくれると思うぞ」


「そんな程度だと思ってたわ」


「言うなよ! 俺だってそれは分かってる!」


「ふっ…… いいのよ、ヴェリノ。そういう方面であなたに期待なんか、全然、してないし」


「ありがとう! さすがエリザ! わかってるぅ!」


 というわけで、朝食での俺のNPC攻略レクチャーはあっさり終わった。



 食後は、デザートと船員NPCが淹れてくれたお茶をまったりと楽しみながら、作戦会議続行だ。


 紅茶がふぁぁっと良い香りを漂わせ、ガイド犬たちがしっぽを振りながらおやつを食べてる中。

 まず口を開くのは、サクラである。


「…… エリザさんが、ヴェリノさんみたいに、超絶八方美人になる必要はないと思うんですよね」


「船長1人陥とせばいいだけだもんねー」


「そうだな。エリザは良いとこ沢山あるもんな!」


 うんうん、とうなずく、エルミアさん(ルミたん)と俺に、サクラも力強く 「そうなんです」 とうなずき返した。


「特にアリヤ船長は、悪役令嬢救済向けに用意されたキャラ…… 情報が少ないので確定はできませんが、むしろ、悪役令嬢()にこそ反応する可能性も」


「悪役令嬢()って何それー?」


「主属性は 『4高S』 ……すなわち、(ハイ)スペック、高慢、高飛車、高圧的、そしてS、です」


「それに反応する(ヒト)ってことはー」


 エルミアさんが首を傾げた。


「振り回されるのが大好きなM属性、ってことー?」


「そうなりますね…… 高い地位にある男性にありがちな性癖ともいえそうです。普段は人に指示を出す立場だからこそ余計に、という」


「まじか」


 乙女ゲーム超怖い…… と、改めて思う、俺である。


「でも、エリザの場合のアレは、ほぼ照れ隠しだろ?」


「リザたん、実は良い人だもんねー?」


 エルミアさんにですら、もうバレているエリザの本性。


「大丈夫なのか?」


「そうですね…… ギャップに萌えてくれる可能性は、あるんじゃないでしょうか」


 と、サクラが首を傾げたところで。


 かちゃん、とやや乱暴にカップを皿に置く音がした。

 ――― 見ればエリザが、扇で顔を全隠ししてふるふるしてる。


「あなた方…… そういう話は、本人のいないところでしてちょうだいっ!」


「だって、居ないところでしたら、また怒るんじゃないか? 『何をコソコソやってるのよ、あなたたち!』 みたいな」


「………………っ!」


 エリザがますます、ふるふるし、エルミアさんが 「ヴぇっち、リザたんの真似、超上手いー」 と拍手してくれたところで。


 サクラが、今後の方針を提案してくれた。


「とりあえず、乙女ゲームのテンプレ的攻略法に従って…… 邂逅(かいこう)比率を上げるのは、どうでしょうか?」


 すなわち。

 追いかけて追いかけて追いかけまくる、のである。





 ――― そんなわけで、朝食後。


「うっわぁぁ! 計器が並んでカッコいいな! 宇宙船の中みたい!」


「ふんっ、気楽ね!」


「だってカッコいいものはカッコいいんだから、仕方ないだろ!? おお、海図もある! すげぇぇ!」


「あー、これ、通信機じゃないー? 『はーい! こちらエルミアさん(ルミたん)!』 なんちゃってー!」



 俺たちは、操舵室にいた。


 サクラが掴んでくれた情報では、アリヤ船長は操舵室か船長公室にいることが多く、それ以外では船内の見回りをしているらしい。

 そして、朝9時~10時半までの、操舵室の見学が可能な時間帯には、必ずここにいるのだ……!


「ようこそ。お嬢様方!」


 キリッとした立ち姿。

 出迎えてくれる笑顔が、めちゃくちゃ眩しい!


「おはよう。ご苦労様だこと!」


 おっ、エリザは噛まなかったぞ。

 よしよし、よく頑張った。


「恐れ入ります、お嬢様」


 船長は、スマートに胸に手を当て、流れるように頭を下げた。上からな態度にもビクともしない、大人の余裕を感じさせる…… 喜んでいるかは、わからないが。


 と、ここで。

 サクラが無言で、ちょんちょん、とエリザをつついた。


「……っ! ええエリザよ! エリザと、おおおおお呼びっ!」


「かしこまりました。エリザ様…… 由緒ある美しいお名前ですね」


 うーん。先ほどの笑顔とはまた違う、人柄を感じさせる温かな微笑み(スマイル)がまた…… イケオジ、いいな!


「…………」


 サクラがまた、無言でエリザをつつく。


「あっ、あたくしたち、船長のお仕事について、もももももっと、知りたいの。おおおおお時間ある時にでも、お話、ううう伺えないかしら!?」


「でしたら……」


「いいいいい嫌なら結構よっ! むむむむ無理にだなんて、いいいい言ってないんですからね!」


 エリザ…… 話せば話すほど、どうして噛むんだ。

 ま、そこがエリザらしいけどな!


 アリヤ船長の方は、というと、そんなエリザをそっと見守ってる感じだ。『可愛いな』 とか…… やっぱり思ってるんだろうなぁ!?


「では、もしよろしければ、皆さんも一緒に、船の見回りをされませんか?」


「「「はい!!!」」」


「をんをんをんっ♪」 「きゃんっ♪」 「くぅん……」 「…………」


 渋い美声の申し出に、俺たちはもちろん、ありがたく乗っかったのだった。


※2021/03/20 誤字訂正しました!報告下さった方、どうも有り難うございますm(_ _)m

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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[一言] くうう、どうして素直になれない(けれどめちゃくちゃ感情ダダ漏れ)なこたちってこんなに可愛いのでしょう。ジョナスしかし、エリザしかり。もう近くでずっと見ながらヨシヨシしていたい。(そして毒舌眼…
[良い点] 今まではヴェリノくんが攻略の観察対象として弄られまくってましたが、それがエリザ番に!? 弄られる悪役令嬢! これは新鮮です!! みんなの理解度が高くて、1枚1枚、服を剥ぎ取られいくような…
[一言] 噛んでばかりのエリザが可愛いです (*´▽`*) をんをんww
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