表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/340

閑話9~夏休みの日常(8)水着を買おう③~

 イヅナの店の、水着コーナーにて…… 鏡に映っているのは、ショートカットの女の子・たぶん割かし普通なビキニ着用。


「破廉恥? わっかんないなぁ?」


 まぁ、短パンでも 『破廉恥』 になっちゃうジョナス基準だとそうかもしれないけど……


「そんなこと言ってたら、全水着アウトじゃん。なー、ミシェル?」


「そうですよっ。お姉ちゃんに似合うのが一番ですからねっ!」


「私とて、その程度は(わきま)えております。だがしかし!」


 ジョナスは眼鏡の縁を中指でクイッと押さえ、熱弁しはじめた。

 …… いつもは冷静沈着なのに、あり得ない程にヒートアップしてる。


「その、しっかり見えてる谷間!」


「…… ってほどの谷間じゃないと思うんだが」


 どっちかというと、間に小運河流れるくらいの隙間がある。俺的には好みだが、それが全男子の好みでないことくらい、知ってるぞ。


「その小さすぎるパンツ! しかも尻の割れ目が布を通してクッキリとっ!」


「うそ、見たい!」


「バカ言うんじゃない。それにその、(ひも)! ほどけたらどうなると思ってるんですか!」


「いや、間違ってもほどけないはず! なぁ、チロル?」


「をんをんっ♪」


 ジョナスの言う通り、確かにビキニのカップとパンツの前後はリボン結びの細い(ひも)で繋がれているだけで…… この結び目がほどけたらどうなるだろう、と思わずにはいられないんだけど。


 残念ながら、そうはならない。


【まぁww 全年齢対象ですからねwwww】 と、チロルが草を生やしてる通りなので!


「ダメです。絶対に反対です。そんな姿、王子に見せられません!」


「うーん。喜んでくれそうな気がするけどなぁ?」


 俺が首を傾げる隣で、ミシェルも 「ボクも嬉しいですっ!」 と賛同してくれてるんだが……


「ますますダメです」


 キッパリと言い切り、俺に紺色の何かを手渡してくる、氷の魔王。


「あなたには人目を引かない、地味で慎ましやかなこちらが最適かと」


「ん? ジョナスが選んでくれたの? 珍しいな、ありがと!」


 受け取って、空中に浮かび上がった 『試着』 ボタンを押すと……


 ビキニは一瞬で、紺一色のワンピース形の水着になった。


 肩紐と首・腕周りの縁取りは、白。

 脚の付け根部分は、ビキニよりはハイレグじゃない分、安心感がある……かな?

 そして、胸に付けられた白いゼッケンには、 『ヴェリノ』 と、名前が黒文字で浮かび上がっている…… いや、これはちょっと問題な気がっ……!


「文字が、胸の起伏に合わせてよじれてるのがイヤらしい気がするんだけど……?」


 こっちの方がなんだか、ビキニよりよほど恥ずかしいようなーーー!


「問題ありません。そのように地味でヘソ1つ見えない水着ならば、誰も注目しないでしょう」


「うん、言いたいことは分かるぞ、ジョナス。だが……」


 模様が全然なくて切り替えもない水着って、なんだか余計、体型を想像しやすくない……!?


 たとえばエリザやサクラがこの水着を着てたら、絶対恥ずかしくなって、直視できないと思う…… ううう…… こんなこと考えちゃうなんて俺、変態なのかな……。


 ともかく、この地味なのにヘンにイヤらしいのはダメだと思う。

 せっかくジョナスが選んでくれたのに悪いが、ここは反対しちゃおう!


「俺はヘソが見える方がイイと思う!」


「そうですよ! こんなの全然、楽しくないじゃないですか!」


「確かに楽しくないかもしれませんが、何か問題が?」


「…… うっ…… お姉ちゃぁぁん……」


 ミシェルが俺の味方をしてくれたものの、ジョナスの冷酷視線 (髪を下ろしてる分、いつもより怖い!) を浴びて半泣きになってる…… うーん、どうしようかな。


 やっぱり、これで我慢するか……?

 なんでだか着ない方が良い気がめちゃくちゃするんだが、それって、たぶん俺の気のせいだし!

 それに皆が仲良くできたら、それが一番だもんな。

 きっと、慣れれば何とかなる…… けど、やっぱり恥ずかしいような……?


 ――― 俺にしては珍しいくらい悩んでしまったが、ここで。


「まーまー、ヴぇっちも、ジョナたまも。落ち着いてねー」


 ハロルド(ハッチ)と水着を選んでいたエルミアさん(ルミたん)が、手を止めてこっちに顔を向けた。


「ジョナたま、スク水がイイって気持ちは分かるよー、確かに。スク水はハッチも大好きだもんねー。ねー、ハッチ?」


 へぇ。この水着、『スク水』 っていうのか。そして、ハロルドはスク水好き…… は、どうでもいい情報だな。


「…… さぁ? 何のことだい?」


「やーん、ハッチたらー。照れちゃって、もーっ。さっきだって、清楚なアタシにはスク水が一番似合うんじゃないか、って言ってたでしょーっ?」


「…………」


「やーん、またそんなこと言ってー! 照れ屋さんなんだから、もーっ♡」


 ハロルド(ハッチ)がイライラした感じでエルミアさんに何やらボソボソと言い、それをエルミアさんはニコニコと押し返してる…… ある意味、すごいな。


「ともかくね、ジョナたま。スク水は買うにしても、見せてもらうならヴぇっちと2人きりの時のがイイと思うよー? 外用には、別の買お?」


「………… 何か、勘違いしてませんか?」


「えー? してないと思うよー? だって、スク水っていったら、イケナイおじさんがハァハァ喜ぶ…… 「勘違いです」


 エルミアさんを遮って、言い切るジョナス。


「そもそも、私がヴェリノに対してどうしてそんな不埒な考えを起こさねばならないのか……」


「んー? オンナのカン、とかー?」


「…………っ!」


 あのジョナスを完全に絶句させるとは…… 本当にすごいな、エルミアさん(ルミたん)


 それはさておき。


「ほら、ミシェルたんの主張と、ジョナたまの主張が合わなくて困るのはヴぇっちなんだからー、ここは、譲り合わないとねー?」


 そう言ってエルミアさんが取り出したのは、紺地に白と赤のストライプが入ったセパレートの水着だった。

 胸元も詰まってるし、ボトムはヘソこそしっかり見えそうなものの、形は短パンに近い…… これなら、尻の割れ目も気にならないんじゃないかな。


「おっ、これ本当に折衷案、て感じだな! エルミアさん(ルミたん)、やるぅ!」


「えへー? 本当はヴぇっちには、こっちのピンクのヒョウ柄なんかも似合うかなー、とか思ってるんだけどねー?」


「そっかな? じゃ、先にヒョウ柄着てみてるか! …… おお!」


 ヒョウ柄のセパレートを受け取って試着ボタンを押し、鏡を見れば……

 紫がかったピンク、確かに意外と似合ってる!


「胸元は割かし見えてるけど、布がたっぷり、ギャザーになってるのとキツめの柄に注目するせいかな。あんまり気にならないぞ」


「うんうん、そうでしょー?」


「ボトムの方も、ヘソ隠れてるし丈も長いのに何かカッコいいな! ……ってか、しっぽついてる……!? かわいい!」


 そう。

 なんと、よくよく見れば、この水着、お尻の方でしっぽが、いい感じに揺れているのだ……!


「じゃーん! 実は、耳もありますー!」


「おおおおっ! かわいすぎるぅぅぅっ!」


 エルミアさん(ルミたん)が差し出してくれた、ヒョウ柄の猫耳的なカチューシャも装着して、と……。



 さて、どんな風になったかなー、俺?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

バナー制作:秋の桜子さま
― 新着の感想 ―
[良い点] ……ジョナスが壊れた。(本格的に) しかしヴェリノ、スク水知らんわりに、ふぁっそん用語はよー知っとるんやなあ……妹の影響とかかな。 [一言] ジョナたま……リンゴの品種に見えてきた。(…
[一言] スク水キターーー!!!!(大歓喜) >「文字が、胸の起伏に合わせてよじれてるのがイヤらしい気がするんだけど……?」 わ か る( ˘ω˘ ) これでジョナスムッツリ説がほぼ確定になりまし…
[一言] この限られた文字数の中で多種多様なマニアックな趣味の描写ありがとうございますm(__)m 堪能させていただきました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ