12-20. レベルアップと掲示板(1)
「松阪牛も最高だったが…… デザートのリコッタチーズ・ブルーベリーソース掛けも美味かった……」
「牧場ミルクソフトも美味しかったですね」
「まあね? あれなら、あたくしも認めてあげないこともなくってよ?」
7月19日、午後6時15分。
――― 俺たちは、久々に帰ってきた寮の部屋でゴロゴロしていた。
正確には俺とガイド犬たちがゴロゴロとカーペットの上に寝転がり、サクラがソファに腰をかけてスチルを壁に映してくれていて、エリザは立ち上がってマシュマロ的な胸をバイーン、と張り、新しく 『牧場のちちふさくん』 が飾りひもに追加された扇をパタパタしている。
――― キャンプは、最初思っていた以上に楽しくて…… 大自然の中で色々と初めての体験ができて、ワクワクし続けだった。
今は、満足感あふれる虚脱状態…… と言いたいところだが。
「さっ、じゃ、ログアウトする前にササッと、ステータス確認するわよ?」
「そうですね。いよいよ正式に逆ハーレム形成となった今、どれだけ数値が上がったのでしょうか……」
その満足感をひたすらボケっと楽しみたいのは、どうやら俺だけだったらしい。
スッと扇を差してくるエリザと、期待に満ちた表情をみせるサクラは……
早々と、次の未来を夢見ていたのだ……!
「おう、じゃ、みるかー」
寝転んだまま空中に指を伸ばす。
「まっ…… ちゃんと起きなさいよ!」
「まぁまぁ、エリザもサクラもこっちに来いよ。一緒にゴロゴロしようぜっ…… うん、意外とイケる!」
寝転ぶと、見易いようにちょっと斜めに表示される仕様なんだな。
痒いところに手が届く親切ぶりに拍手っ。
「じゃあ試してみますね」
サクラがそっと、トイプードルをお腹に載せて、仰向けに寝転がると、エリザも 「もうっ、仕方ないから付き合って差し上げてよ!」 と、パピヨン犬を抱っこしてカーペットにそっと横たわった。
――― マシュマロなお胸様を枕にしてる、アルフレッド。羨ましいな……
…… って今俺、何考えてたのっ!?
ダメダメ!
大体、お胸様なら今日、飽きるくらい揉みしだいてきたじゃないかっ…… 牛のだけど。
「よし、まずはスキルからだなっ」
≡≡≡≡ステータス ①≡≡≡≡
☆プレイヤー名☆ ヴェリノ・ブラック
☆職業☆ 学生
☆HP / MP☆ 44 / 21 ※
☆所持金☆ 20,650マル
☆装備☆ ウェスタンスタイル上下 / 学生バッグ / ウェスタンブーツ /ー /ー /ー
☆ジョブスキル☆
・勉強 lv.7
☆一般スキル☆
・掃除 lv.7
・料理 lv.7
・飼育 lv.7 ペット数:2
・買い物 lv.8
・おしゃれ lv.8
・外出 lv.9 商店街、小運河 (舟)、マジカルーン山、マジカルーン湖
・魔法 lv.7 プチファイア、プチアクア、プチエアー
☆ペット☆
1)チロル (ガイド犬、シェルティ)
2)カホール (使い魔、ドラゴン) 貸出中:エルリック
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「おおっ、キャンプの効果すげぇぇっ!」
ウィンドウを開いてみれば、またしてもプチプチとあれこれの数字が上がっていて、ビックリする俺である。
「うんうん、確かに、色んなところに行ったし、買い物もたくさんしたな!
温泉効果に、エルリックとジョナスのプレゼントのお陰で、おしゃれlv.もバッチリだぜ」
「ウェスタンスタイルってかわいいですよね。牧場の風景に映えてますよ、ほら」
「おおう、確かにかわいいっ!」
サクラが、嬉しそうにスチルを見せてくれたが…… いやぁ。もう何というか、ばっちりだぜ!
似合ってるとは思ってたが、予想以上によく似合ってる!
「それに、料理もしたし! 料理で魔法もたくさん使ったからなぁ……。」
【上がってないのは 『勉強』 だけですねwwww】
チロルが 「をんっ♪」 と言わずもがなのことを言ってくるが。
「ま、勉強なんてやろうと思えばいつでもできるし、やろうと思った時じゃなきゃできないからな。
それはともかく、今回のMVPステータスくんは…… じゃっじゃじゃーん! 『所持金』 っ!」
所持金は、何度見ても眩しい、驚異の20,000マル越えだ。
「これはもう、ミシェルのおかげ一択だな……!」
「ジョナスからのバイト代も週1のお小遣いも、あっという間に使ってしまったようね?」
「うっ…… まぁ、あるんだからいいじゃん!」
エリザの指摘はもっともで、つまりは、堅実に使えばもっと残るはず…… なにしろ、ミシェルからは20,000マルものバイト代をもらったのだから。
――― 何もかもがひたすら楽しいだけだったキャンプで 『タダ』 ってだけでも有難いのに。バイト代までもらったら申し訳ないな……
そう言ったらミシェルは、「楽しんでくれたら、それが一番嬉しいですよ!」 と、くったくない笑顔を見せてくれた。
「ああっ、もうミシェルぅぅぅ……っ! まじに天使!」
「をんっ♪」
思い出してゴロゴロと悶えまくる俺に、チロルがひとこと 【ま、調子に乗って使いすぎて、すぐに貧乏生活なんてことにならないよう、気をつけてくださいねwwww】 と注意してくれた。
「もちろん! わかってるって」
…… でも、調子に乗って使うのが楽しいんだよなぁ、お金って!
さて、次は持ち物だ。
ふっふっふ…… これも、ちょっと楽しみなんだよな!
俺は、サクサクと空中で指を動かし、次のステータス画面を出した。