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12-12. キャンプ村モニターのバイト(12)~魚釣りと温泉~

「釣れなかったらすぐ移動! 釣れたらまたすぐ移動! これが渓流釣りのポイントですよっ」


 ミシェルの助言に従って、俺たちは次々と場所を変えていく。

 餌とオモリがついた 『仕掛け』 を投げ込むのに良いのは、(さわ)の水が岩にあたって、ジャブジャブ白く泡だっているような場所だそうだが……。


「にしても、思ったより全然釣れないな」


 森の景色はきれいだし、緑の匂いがする空気やそよ風や川のせせらぎに鳥の鳴き声は気持ちいいし、そんな中をどんどん移動していくので退屈ではないが、それにしても、魚が掛からない。


 少し前に、イヅナとサクラのペアが宝石みたいなアマゴを1匹釣り上げただけで、それからはまたサッパリだ。


【釣れる確率は時間帯により設定されておりましてww】


 チロルが、をんっ、と吠えて、ふさふさの尻尾を軽く振った。


【この時期は、朝早めと夕方が最も確率が高いですw 雨上がりで確率が+(プラス)20% に設定されているのですがww 今日のこの状況は確率、最低ランクですねwwww】


「え? じゃあ何で虫採りから魚釣りになったの? 明日の朝でも良いじゃん!」


「あ、朝は朝で朝に採りやすい虫がいるんですよっ」


「ふぅん」


 ミシェルのやつ、何慌ててるんだろうな?

 首をかしげた、その時。


「あっ、アタリ! ほら手首、上!」


 ミシェルの注意に、慌てて手を上に動かす。


「おおっ、魚だ……!」


 川の水面に、暗い青色の斑点が浮き上がってきた…… と思ったら、水を割ってバシャッと跳ね上がる!


 飛び散ってキラキラ光る白い水しぶきと、その中から 『ポケット妖怪』 の水龍みたいに雄々しく姿を現す魚…… なんていうか。


「かっこいい! 美しい!」


 ミシェルが素早く網で掬い上げてくれたのを見ると、流線型のボディーに、金色に輝く細かな鱗、芸術的な斑点…… まさに、『美しい』 って言葉がピッタリの魚だった。

 大きさは30cmくらいだろうか。


「お姉ちゃんすごい! 大きいヤマメだよっ! こんな大きいの初めて見たよボクっ」


「これがヤマメか…… へぇぇぇ」


 すごい、感動だな。


 向こうの方ではエリザが 「あたくしがっ…… ああっ」 と叫んでる。

 どうやら、逃げられたみたいだな。


「ほらー、エリザ、見ろよ!」


 釣ったばかりの魚が泳ぐバケツを、少し斜めにして見せびらかすと…… 返ってきたのは特大の 「ふんっ」 だった。


「あたくしのツキはこれからよっ……!」


「おう、頑張れー!」


「言われるまでもないわね!」


 それからもずっと、少しずつ移動しながら釣りを続けて、イヅナとミシェルがもう1匹ずつ、エリザがエルリック王子に助けられながら1匹…… それなりに釣り上げた頃に、俺のお腹がぐぐぅ、と鳴った。

 そういえばまだ、現実の方でお昼を済ませてなかったな。


 魚の泳いでるバケツを交互に持って、テントに帰る。

 テントで簡易ログアウトして、現実の方でお昼とオヤツと夏休みの宿題の今日やる分と夕飯とシャワーを済ませて…… 再ログインは、夜の7時半の約束だ。


「夜遊び、ひゃっほう!」


「それまでに、魚を食べられるようにしておいてやるよ」


「ありがとう、イヅナ!」


 夜は、キャンプで薪を囲んで、焼き魚を食べて星空を眺めて、皆でお喋りだったな。

 楽しみだーーーー!




 ◆♡◆♡◆




 ―――― で、現実の方でのアレコレをめちゃくちゃ急いで済ませて再ログインした俺たちは、焚き火に当たる前になぜか、皆で温泉に向かっている。


 昼に確認した時に通った蝉の森も夜は静かで、時々寝ぼけたらしいのがジ、ジ、と鳴く程度だ。


「温泉って明日の朝行く予定じゃなかったのか?」


「夜は夜でいいんですよ! 絶対に損はしませんからっ」


 道々のミシェルの説明は多くはないが、どうやら夜も入ってみてほしいらしい。


 着いたところは、丸太を組み合わせて作ったログハウス風の建物だった。周りに湯気が立っているのが、いかにも温泉っぽい。

 現実の方ではもちろん、こんな風呂だけの建物になんて、お目にかかったことはないわけで…… あれ。


 ここに来て、はっ、と気づく俺。


「なぁ…… 温泉って、つまり大きい風呂だろ?」


「当然でしょう。それとも、そのようなこともご存知ではなかったのですか」


 ジョナスの氷の魔王然としたツッコミにも、かまっていられない程の重大事に、俺は気づいてしまっている。つまりは。


「…… みんなで一緒に、風呂に、入るのか!?」


「おうっ、いいぞー♪ 開放的な風呂で一緒にのんびりすると、親近感が湧くというか、なぁ?」


「そうだね。王城の浴室もそこそこ広いが…… 仲間と入るというのは、やはり楽しいと思うよ」


「露天の方だと、たまにおサルさんも入りに来てるんですよー? かわいいですよ!」


 口々に肯定するNPC(男の子)たち。

 エリザとサクラも 「1周目はスキーで入ったわね」 「私もです。好意値上がるんですよね」 とか、平然と言っているが。


 つまり。


「もちろん、エリザもサクラも入るんだよな?」


「あっ、そうです。NPC(ぼくたち)だけで入っても意味ないですしね!」


 ミシェルが無邪気に微笑み、仕上げにチロルがほんのちょっと湿った鼻面を、俺の脚に押し付けて 「くぅーん……」 と甘えてきた。


【つまりは 『混浴』 ですねwwww】



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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[良い点] (゜∀゜) 混浴期待ですねwww [一言] >確率、最低ランクですねwwww 運営! もちょい釣らせてあげなさい!ww (;'∀')
[一言] 次回、まさかの混浴回ですと!? …………高温の浴場で草でバシバシ叩き合ってバーニャ! な展開にならないかな(金神(ォィ
[一言] 『混浴』キターーー!!!!(大歓喜) これがホントの全裸待機( ˘ω˘ )
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