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閑話8~初めてのバイト(4)仲良きことは健全なのか~

「イヅナさん・ミシェルさん攻略のための作戦は、これで間違いありません!」


 じゃがいも、人参、玉ねぎ…… 

 街中のスーパーマーケットにて、キャンプのための食材を次々とカゴに入れていくサクラの手つきには、一切の迷いがない。

 その様子に、エリザが首をかしげた。


「何を作る気なの?」


「『カレー』 です」


「え? 『ナレー』 じゃなくて 『カレー』 ?」


 『ナレー』 はリアルの地下の街で一般的なレトルト食品で、ピリッと辛みのある茶色のスープ。ご飯かパンと一緒に食べる。俺も妹も、けっこう好きな食べ物だ。


「もともと 『ナレー』 は 『カレー』 からの派生だったはずよ」


「ああー! ばあちゃんから聞いたことある、ような……?」


 確か、最初は 『カレー』 という商品名だったのが、祖母世代の人たちが 『こんなのカレーじゃない』 と猛反発したとかなんとか。


 それで 『なんちゃってカレー』 略して 『ナレー』 になったんだったかなぁ……?


「『カレー』 も 『ナレー』 と同じく、具材を煮込み、小麦粉と油脂でとろみをつけ、スパイスで味付けした料理ですが……

 そのスパイスの種類が 『ナレー』 とは全然違うんだそうですよ」


「あー…… 小麦粉はプランクトン代替品で何とかなってるけど、スパイスのアレコレは研究途上、だったっけ……?」


 幼稚園の頃からスパイスといえば日陰トウガラシ、と思ってきた俺たちにはピンとこないが、ばあちゃんなんかは時々 「コショーたっぷりのチキンソテーとか、一度は食べさせてやりたいよ」 なんてことを言う。

 ――― きっと、よほど美味いものなんだろうな。


「ともかく」


 サクラが少し背伸びして棚の上から 『ラブカレー』 と書かれた小箱を取り、買い物カゴに入れた。

 『ナレー』 と良く似た料理が描かれたパッケージの売り文句は 『好意値♡激上げ♡』 だ……。


「キャンプといえば、伝説の料理 『カレー』 が鉄板なのだそうです」


「へぇ……」


「ナレーもソコソコ美味しいですが 『カレー』 は味・香りともにその比ではなく、何でも成長期の少年とスポーツマンの胃袋を掴むのに最適の料理であるとか…… あっ、これは味付けが違いました」


「とってやるよ。どれ?」


 一度カゴに入れたカレーの小箱を棚に戻して、よく見れば、『ラブカレー』 の味は3種。

 『激しい情熱』 『ほどほどの愛』 『お近づきのしるし』 だ……。


「えっと、値段がけっこう違うな。上から840マル、500マル、250マルか…… 間をとって 『ほどほど』 くらいかな?」


「もちろん 『情熱』 よ」 「 『情熱』 にしてください」


「をんをんをんっ」 「くぅーん」 「きゃんきゃんっ」


 エリザとサクラ、そしてガイド犬たちの満場一致で、カレーの味は 『激しい情熱』 に決まった。


「辛そうだな? ミシェルとか泣いちゃわないかな?」 


「いえ、あの子はああ見えて辛いの得意な気がします」


「言えてるわ」


「うーん。絶対泣くと思うんだけどなぁ?」


 きっと、顔を真っ赤にしてハァハァ舌出しながら 『お姉ちゃーん、からいよぉ』 とか言ってくるんだろうな…… あれ。


 なんか、可愛いんじゃないか、それ?


 想像すると見たくなってきた…… だけど、だけど。


 お姉ちゃんは、ミシェルを苦しめたいわけじゃ、ないんだよなぁぁっ!?


 ――― 誘惑に抗うか、屈するか。

 それが、問題だ。


「『情熱』 が高価(たか)いのは、それだけ好意値の上昇幅が大きいからですよ。辛いかどうかは、食べてみないと分かりませんけど……」 


「あっ、じゃあソレでいいや」


 俺は、あっさり降参したのだった。





「意外とお金余ったなぁ!」


 ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、キノコ、牛肉と米、それからコーヒーのドリップパックと紅茶パック。


 買い物カゴいっぱいに買ったのに、使ったお金は5,000マル弱。3人で精算したら、ぴったり 1,650マルずつになった。

 俺の料理修行用の卵と米と鶏肉を合わせても、使ったお金はたったの3,350マル…… ジョナスからもらったバイト代より、全然安いぞ。


 こうなれば買い物後のお茶は 『ミスド』 ではなく、豪勢にケーキ屋で決まりだな!


「よっし、久々に 『ねこねこねこん』 行こうぜ!」


「どうしてそう、お金を使う方に行くのかしら」


 口ではディスり気味ながら、スタスタと小運河の桟橋の方に歩いていくエリザ。


「舟代はあたくしが持って差し上げるわ」


「いよっ、大将! 太っ腹ぁ!」


「まっ……! 姫君とお呼び!」


「……。姫君、ありがとうございます」


 サクラが不意に真面目な表情になり、エリザに向かって頭を下げる。


「素晴らしいお心遣いに感謝します、姫君」


「……っ! わ、わかってれば良くてよっ!」


「はい。姫君は最高です。素敵です」


「ふ、ふんっ! それほどでも、あああるわよっ!」


「全世界で一番です、姫君」


「ととととと当然よっ!」


「サクラ…… それくらいにしといてやれよ」



 エリザの顔を隠した扇の陰で、隠れきってない耳が赤くなってる。


 清楚可憐系美少女に誉められまくって照れまくってる、高貴華麗系美少女…… 俺としても美味しいシチュエーションではあるが。

 …… 楽しそうなサクラに比べて、身から出た錆で 『いい加減におしっ!』 とも言えずに少々プルプルしてるエリザが、ちょっとかわいそうだ。



「それより、舟乗ろうぜ舟!」



 こうして、久々に乗った隣街への乗り合い舟。


 相変わらず風が気持ちいいし、川沿いにゆったり流れていく景色が面白い。


「こっから見る街ってまた、別だよなぁ…… おっ、『ミスド』 だ…… って、あれ?」


「どうしたんですか?」


「今、ジョナスとエルリックが入ってった!」


「気のせいじゃないの? どうしてNPC同士が 『ミスド』 に行く必要があるのよ」


「うーん、そっかぁ? 似てた気がするんだけどなぁ? ……ま、いっか!」


 エリザのツッコミも、もっともだしな。


「もしかしたら、わたしが運営に出したリクエストが通ったのかもしれません」


 嬉しそうな顔になったサクラによれば、その要望(リクエスト)とは。


 『NPCたちが仲良くつるむシーンがもっと見たい』 だそうだ。



「牽制し合いも良いものですけど、やはり最終的に目指したいのは健全な逆ハーレムですから」



 ――― 皆が仲良く和気あいあいとしていてこその逆ハーレムです! …… というサクラの力説を、俺は……



 とりあえず、深く考えないことに、した。



 週末のキャンプ、楽しみだなぁぁぁっっ!!!


読んで下さりありがとうございます!


さてこれにて閑話バイト編終了です。

いえ、本当は、ジョナスからのバイトのあとにミシェルからのバイトが入る予定だったんですけどね……?

既にご存知の通り、ミシェルったら急に 『キャンプ』 とか言い出すから! 次回は本編でがっつりキャンプ編、再開予定は年明けなるべく早めに……したいです(願望)


それはそうと、キャンプなんて…… 作者…… 実は小学生の自然学校以来、してないんですよね(爆)

そんなワケで、キャンプのネタある方は教えていただけるとめっちゃ嬉しいです! もしかしたらパクるかもしれませんが(←をい) 広い心でお許しいただければ有難いです。ぜひぜひ、宜しくお願いしますm(_ _)m


ではーー!!

いつも感想・ブクマ・応援☆いつもめちゃくちゃ感謝しております。


お風邪などにお気をつけて、良いお年をお迎えくださいませーーー!



Merry     /⌒〇

 Christmas (二二ニ) コソーリ

       (・ω・`)

  _ ∧,,∧._田⊂  ヽ

  | .(-ω-`) | .しーJ

  ./⌒∪⌒∪⌒/|

 /⌒⌒⌒⌒⌒//

./⌒⌒⌒⌒⌒//

|⌒⌒⌒⌒⌒|/



~・~・~・~ 


この度、円さまからレビューをいただきました。

円さま、どうもありがとうございます!


⇒円さまのマイページはこちら

https://mypage.syosetu.com/2042080/

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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 実は、こーゆー現実の地下世界のリアルな食糧事情とか出てくるの好きなんですよねー。 そーかー、コショウはないのんかー……。 「ナレー」になる過程の話もいいっすね。ありそう。
[一言] いやいや、ここは、辛いものが得意そうに見えて意外と食べられずに、でも言えなくてメガネの下はほんのり涙目のジョナスが可愛いのでは?!(唐突にジョナスをぶっ混んでくる、ジョナス推し) いやもう…
[気になる点] 向こうの世界も次回はカレーじゃなかったけ? (゜∀゜)/~♪w [一言] をんをんをんっ カレーの辛さ段階の表現に爆笑しました (*´▽`*) キャンプの経験といえば、ご飯が上手に炊…
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