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閑話 7~お化け屋敷(11)エリザ・ヴェリノ・チロル~

「うわっ、もう死ぬー!」


『トワイライトゾーン』 で、大量の水に押し流された俺たち。


 ここでゲームオーバーなのか!?

 それはないぜ……! 

 俺はまぁ、厨2心でつい水の量を盛りまくってしまった張本人だから、仕方ないとしても。


「エリザ、本当にすまん……! もし新アカウントで(転生して)出会った時は、10回くらい殴ってくれていいから……っ!」


「バカね」


「ふっ…… 全くだ。バカなヤツだった、俺は…… 力に狂い、世界を滅ぼすような大魔法をぶっ放してしまうなんて…… …… あれ?」


 なんで俺、水の中なのに喋れてるんだろう?

 息も全然苦しくないぞ!


 目の前を、色鮮やかな熱帯魚の群れが泳いでいった。


【押し流されて、珊瑚礁の海に着きましたww 水中でも息ができて喋れる親切設計ですよw】


 うごうごと前足を動かして、青や赤やオレンジの小さな魚と泳ぐチロル…… これもサービスなのか? レアな光景な上に、かわいいぞ!


【スチル撮ってもいいですよww】


「残念。カメラ、新しいの買いに行ってないや」


 サクラやエルミアさんがパシャパシャ撮って送ってくれるから、カメラの必要を感じたことなかったんだけど…… こういう時には、要るんだなー。


【ほら、カメラならそこでw 売ってますwww】


 タイミング良く、首からスチルカメラの入った箱ぶら下げたイルカが、すいー、と寄ってきた。

 そして、つぶらな瞳でこっちを見ている!


 なるほど、親切設計…… だが、値札。


「1,000マルは高いよ!」


【観光地価格ですw】


 イルカは相変わらずつぶらな瞳でこっちを見つめている。


 そして、水中に現れる 『買いますか?』 の文字と 『YES/No』 ボタン…… いや、めちゃくちゃ 『No』 押し辛いんですけど!?


 だがここで1,000マルも使ったら…… 後で土産店で泣くことになるのは、目に見えている。


「ごめん、ごめんな…… お前らのことは、一生忘れないから……」


 チロルとイルカさんの両方に謝りつつ、『No』 に手を伸ばそうとした時。


「ええい、情けないわね!」


 シャウトと共に、白い手が素早く、 『YES』 を押した。


「エリザっ……!?」


「お金なら、あたくしが出すわよ!」


「エリザ……!」


「勘違いしないでよね。あたくしはただ、熱帯魚と泳ぐチロルは、スチルとして残す価値があると思っただけですから!」


「うんうん、しないしない! エリザって、ほんといいヤツだなー!」


「ばっ……」


「よし! じゃあカメラは俺と共有ってことで。エリザもチロルと一緒に撮ろうな!? はい、チーズ」


「あたくしは、カメラに向かって笑ったりしなくてよ!」


「知ってるー。いつも通りツンツンしてくれてても可愛いから! OK、OK」


「なななな、なによっ」


 新しいスチルカメラは25枚撮り。

 エリザの親切さは、有り難すぎて拝みまくるレベルだぜ……!


 エリザは最初、顔を扇で隠していたが、5枚くらい撮ると、やっと扇をどけて、つーんと横を向いてくれるようになった。

 …… 前向いてくれるには、あと15枚くらい必要かな。


 ま、いいか。横向きのがエリザらしいし!


「よっし、もう1枚!」


『アタシも撮ってー…… ご利益あるよー…… 』


「ええっ、まじ!?」


 急に背後から聞こえた不思議な声に振り返れば、そこには。

 声以上に、不思議な生き物がいた。


 パッチリした四角い目に、若草色の長い髪、嘴、手には水かきがついてて、キラキラ光る虹色の鱗で覆われてる。3つに分かれたヒラヒラのしっぽを上手に動かして、泳いでるんだな。


【アマビエですよw 姿を写して人に見せると、病を退散させるという、レア妖怪ですw】


「こんなのまで引き寄せるなんて…… 」


【あっ、このお化け屋敷内の海での出現率は、ノーマルクラスですww】


「…… ふんっ!」


 チロルが、をん! と吠え、エリザが再びそっぽを向き、アマビエは虹色の鱗を俺の腕にスリスリしておねだりしてきた。


『ねぇー、撮って撮ってぇ……』


「おうよ、もちろん! じゃあ皆、並んで……」



 ひとしきり撮影大会をした後、アマビエは俺たちを、出口へ案内してくれたのだった。




 そして、次に着いたのは、江戸っぽい世界。


「ふぅーっ、戻ってきた感!」


 海の世界は楽しいけど、やっぱり俺らは地上に馴染んでるんだなー、って実感する。


「あっ、伊右衛門!」


 不意にエリザが、知らない男の名を呼んだ。


「逃がさないわ……!」


「あっ、おい待てエリザ!」


 駆け出すエリザを追いかけながら、俺は珍しく、非常にモヤモヤした気分を味わっていた。


 ――― なぜなら、伊右衛門とかいう名のソイツは、めちゃくちゃイケメンだったからだ。

読んで下さり、ありがとうございます。


11/10 誤字訂正しました! 報告下さった方、どうもありがとうございます! いつも助けられておりますーm(_ _)m


急に寒くなりましたね。温かくしてお過ごしくださいー!

感想・ブクマ・応援☆いつもめちゃくちゃ感謝しております!

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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

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― 新着の感想 ―
[良い点] >やっと扇をどけて、つーんと横を向いてくれるようになった。 可愛い (*´▽`*) [一言] >【観光地価格ですw】 うははw こういう商売はどこにもありますよね。 記憶に残っているの…
[良い点] 「観光地価格」という便利な言葉、断りづらい売り子、そして極悪な値段設定……。 ここぞとばかりに搾り取るとは、まるでヤのつく人たちのシノギ! 怖え!(笑) そして、伊右衛門の存在がまた嵐を…
[一言] 観光地価格www リアルwww からのヴェリノたんの嫉妬キターーー!!!! いいぞいいぞ( ˘ω˘ )
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