表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/59

1 「探索」

「……レベッカ?」


『一触即発の三色丼』と書かれたメモを置き、ふと周りを見回したところ一緒にコンビニに入ったはずのレベッカがいなくなっていた。


 近くにいる気配は無いし、外に出たのか?


 だとしたら一言声をかけてくれてもいいと思うが、何故か俺はレベッカに嫌われているようだしなぁ……。


 まぁとりあえず、もし出たのなら俺も外に出よう。

 ここ臭いし。


「あっ。高希っ。コンビニの調査は終わったのっ?」


 外で弁当を食べながらゾンビが来ないかを見張っていた大友さんがコンビニから出て来た俺に気づき声をかけて来た。


 もう1人の見張り役である椛の背にまたがりキャメルクラッチをしながら。




 説明しよう!

『キャメルクラッチ』とは、うつ伏せになった相手の背中に乗り首から顎を掴んで相手の体を反らせるプロレス技の一種だ!

 おもに背骨と腰にダメージを与えるぞ!

 因みに和名は『駱駝固め』・『馬乗り固め』だ!!

 これらはテストに出ないから忘れてしまって構わないからな!!


 ……しまった。あまりの意味不明な状況に我を忘れてプロレス技の説明をしてしまった。


「あー……いや、調査が終わったから出て来た訳じゃなくて、レベッカが見当たらなくなってな。外に出てきてないか?」


「いや、出てきてないと思う」


「マジか。どこ行ったんだレベッカ」


「おい待て高希! 悠長に会話してねぇで俺様を助けろ!!」


 大友さんの下から椛が悲痛の声をあげ助けを求めてくる。


 だが大友さんが椛にキャメルクラッチをしているのはきっと理由があっての事だろうし、椛がなにか悪いことをしての制裁だと思うから助ける気は一切ない。


「外に出てきてないならコンビニの中にいるのは確実よね。トイレじゃないの?」


「あーそっかトイレか」


「どうする? 高希はこのままレベッカがくるまでここで待ってる?」


 椛の降参と言う意味のタップを無視しながら大友さんが聞いてくる。


 確かにトイレなら外で待っていればすぐにレベッカも出てくるだろうし、なにより異臭のするコンビニの中には戻りたくは無い。


 ……戻りたくは無い、のだが。


「いや。このまま戻ってコンビニの中を調べるよ。なんだかんだいって俺はまだコンビニの調査をしていないからな」


 レベッカとはなりゆきとはいえ一緒にコンビニを調べることになったんだからしっかり仕事はしないとな。


 今のところ俺がしたのは料理の名前をただ読んでただけだし。


「そっか……。頑張ってね」


「おう」


 そうして俺は何故か少し残念そうな顔をした大友さんと、その下で気を失い泡を吹いている椛に背を向けてまた異臭のするコンビニの中に戻った。


 割と大きいコンビニの中は相変わらず薄暗く、奥に行けば行くほど外の明かりが商品棚に遮られ見にくくなっている。


 ……さて、とりあえずトイレにいるであろうレベッカに声をかけるか。

 

 このコンビニは初めて入るが、コンビニはどこも似たような構造をしているだろうからという予想の元トイレを探す。

 大体トイレはレジの反対側、奥の方にあるようなイメージなんだが……。


 そうして奥に進みながらトイレを探していると、『STAFF ONLY』という文字が書かれた扉が隅にあるのに気づいた。


 これはあれだ。従業員の人しかはいっちゃいけない聖域だ。


 子供の頃に好奇心で入ったら中にいた従業員のおっさんにすごい迷惑そうな顔をされたのを今でも覚えている。

 そんな経験から普段だと入ってはいけない場所と意識から除外していたが、調査と言うのだからこういうところも念入りに調べた方が良いのだろうか?


 そう思い試しにドアを押してみると、何の抵抗もなくドアは開いた。


 開いたのなら、調べない訳にはいかないよな……。


 誰もいないし状況が状況だからというのは分かっているが、やはり普段は入っていけない場所に足を踏み入れるというのは少しだけ罪悪感がわいてしまう。


「……今は緊急事態だから仕方ないということで、おじゃましまーす」


 記憶の中にいる迷惑そうな顔をしたおっさんに言いわけをしながら『STAFF ONLY』と書かれた扉をくぐる。


 扉の奥はいっそうと暗くなっており、かろうじて段ボールやら何やらがあるのが見えるくらいだった。


「すみませーん。誰かいませんかー?」


 入って来た扉を閉めてしまうと殆ど暗くて何処に何があるか分からなくなるので、扉は開けたまま誰かいないかと声をかける。


 しかし返答は無いようで、生存者は元よりレベッカもいないようだ。


 ゾンビがいないというのは嬉しいが、こう暗いと中に何があるのか分からないから少し怖い。


 少し触れたら壊れてしまうようなものとかいきなり大きな音が鳴るようなものはないよな?


 そう考えて中を注意深く見回していると、どこからか外の光が差し込んでいるようで一か所だけ明るいところがあるのを見つける。


 なんとなくそこに向かうと、沢山の段ボールに隠されるように2階に繋がる階段があった。


 どうやら上の階にある小さな窓から光が差し込んでいたようだ。


 大きいコンビニだとは思っていたが、まさか2階があったとはな。


 もしかしてレベッカもこの階段を見つけ、上の階の調査をしているのかもしれない。

 それならば俺が下で探していても見つからないはずだよな。


 差しこんでいる光りを頼りに階段を上がる。

 階段は割と短くすぐに上の階まで来れたが、上った先には扉が1つポツンとあるだけだった。


『休憩室』と書かれたその扉を何気なく開く。


 そして一番に飛び込んできた光景はレベッカが縄で身動きができないように椅子に縛られ口をガムテープで覆われた姿だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ