外れた天気予報
空から落ちる人と目があった。
一瞬だけだったけど、どこかで見た事のある人だなぁって思った。
少し考えてから、今年の生徒会長の人だったと思いだす。
結構ハキハキとものを喋る人で、これからの学校を盛り上げていきたいとか、全校集会の時に人当たりの良い笑顔で喋ってたっけな。
そんな人が上から下に一瞬で通り過ぎて行き、なんだったんだろうって思いながらも僕は机に頬杖をつき青空を見上げ続ける。
するとまた何人かの人が空から落ちて来た。
うーんおかしいなぁ。
空はこんなに晴れているのになぁ。
今日の天気予報は晴れ時々人間なんて言っていない。今日はずっと晴れているはずだ。
そんな事を考えていると、今度は隣からガランガランと椅子の倒れる音がした。
青空から隣の席へと視線を移すと、僕と同じく外を見ていた2人の友人のうち1人が立っていた。どうやら座っていた椅子が倒れるほどの勢いで立ち上がったようだ。
椅子の倒れる音でクラスの皆が僕達に注目する。
遺憾だが、クラスの皆は『またあの3人が変なことでも始めたのか?』という顔をしてる者が多い。
だがそんな顔をしたクラスメイト達も今日の天気に気がついたようだ。
まぁ天気というか、未だに落ちてくる人間にだが。
一瞬の静寂。
そして、静寂の次には爆発したかのように様々な声がクラスに溢れた。
甲高い悲鳴や疑問の叫びがクラスを支配し、机や椅子が倒れる音もちらほらと聞こえだす。
「た、助けにいかなきゃ……」
そんな嵐の中心のようなクラスにいながらも、隣の立ち上がった友人の口から出た言葉は確かに僕の耳に届いた。
僕は、首を左右に振って言う。
「ここは3階だよ?」
つまり、彼ら彼女らは学校の4階か屋上から落ちているということになる。
まず生きてるわけがない。
「か、関係ねぇよ!」
だが僕の言葉を一蹴し、友人は教室の出入り口へ走り出そうとする。
しかしすぐに座ったままだったもう1人の友人に腕を掴まれ止められた。
「待てよ!! どこに行く気だ!?」
「どこにって下にだよ!!」
「バカなのかお前は!? 明らかに異常事態だろこれ!? 動くのは何でこんなことが起きてるか確認してからで、というかまず先生達に報せた方がいい!!」
「そんなことしてる場合かよ! まだ何人も落ち続けてるんだぞ!?」
「だからってなんで下に行くんだよ!? まさか落ちてくる人でも受けとめる気か!?」
「そうだよ!!」
「バカだなお前は!!」
言い合いを始めた友人2人から僕は視線を外し、また青空を眺める。
……きっとこういう、すぐに他人の心配ができて動ける奴や、異常事態に直面しても冷静さを失わないで頭を動かし考えられる奴が漫画や小説なんかじゃ主人公として書かれるんだろうなぁ。
そう思いながらも、僕は動かないし考えない。
僕は主人公になりたいのではなく、僕らしくありたいのだから。