第65話【紳士と老人】
TIPS【この街の富裕層は大体優しい】
高級住宅地を歩くクハル。
見渡す限り豪邸、豪邸と庶民に喧嘩を売っている街並みだった。
「見事な邸宅じゃのぉ・・・」
嘗ての相棒は狩りまくって名を上げて豪邸に住むのだと息巻いて居たなと思い出す。
結局はその夢は途中で頓挫するのだが。
自分の夢は何だっただろうと思い出すも昔過ぎて思い出せない
己の事ながら不思議だなとくすりと笑う。
「・・・まぁ、仕方のない事かっ!?」
転んでしまうクハル。
「あたたた・・・」
「大丈夫ですか?ご老人?」
通りすがりの紳士が手を差し出す。
「いやいやすみませんね、考え事をしていたもんで・・・恥ずかしい」
クハルは手を取って立ち上がる。
「ご老人、見かけない顔ですが何方から?」
「都から来ました」
「都からですか、良いですね、ご旅行ですか?」
「いやいや仕事ですよ」
「こんなお歳になっても仕事ですか!!」
「ははっ、いやいやぁまだまだ若いもんには負けないつもりですよ」
「所でお仕事は何を?」
「今日はですね、人探しに来たんですよ」
「人探し?ローブ君ですかな?」
驚くクハル。
「な、何で知っているのですか?」
「え、えぇゴーン家のリンさんは彼の事を何時も想っていらっしゃいまして
ローブ君が居なくなった時は半狂乱になったんですよ」
「半狂乱!?そこまで取り乱すのですか!?」
「えぇ、リンさんはキツイ事を言う性格ですが悪い人じゃないんですよ
結構そそっかしくて言葉足らずで誤解される事が多いですが・・・」
「そうなんですか・・・それでローブ君の居場所は・・・」
「残念ながら私は存じ上げないんですよ」
「そうですか・・・残念です」
「では、御仕事頑張って下さいね!!」
「はーい、貴方もお気を付けてー」
にこやかに笑う紳士を見送るクハル。
「さてと、それじゃあ次は・・・街中に行ってみるか・・・
誰も行かなかったし貧民街の方に行くか・・・」
ごーん、と鐘の音が聞こえる。
「?・・・この街には鐘は無い筈だが・・・空耳かの?
だが・・・何だか悲し気な音色じゃったな・・・」
首を傾げながら路地裏に向かい貧民街に行こうとするクハル。
この時、クハルが貧民街に行ったのは半ば運命だったのかもしれない。
或は鐘の音の導きか、何れにせよこの仕事の一助となったのは間違い無かった。
TIPS【昔、鐘の音が怖かったなぁと思い出す】




