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第一章 半信半疑

受験生はきついよ....(´;ω;`)

 

 夜。蛍達が飛び回る寺の前で、私は目を覚ました。自分の体にかかっていた毛布をどけて地面に足をつける。だが靴が見当たらず、素足で地面につくような形になってしまった。

 靴、靴...とブツブツ呟きながら辺りを見回していると、そこに。


 「目を覚ましたか」


 先程、というか、日が暮れるころに会った彼がいた。急に出てきたので私はファッ!?と間抜けな声を出して後ろに尻もちをついてしまった。手を差し出されたのでとりあえず掴んで立ち上がったが、すぐに手を離した。

 

 「怖がるな。そなたを喰ったりはしない」


 そう言うなら、まずそのお面を外してください。そう言おうとは思ったが、止めた。


 「......」


 私は何も言えず、その場に立ち尽くしてしまった。恐怖、というよりかは、警戒していると言ったほうが正しいだろうか。だって、自分は大天狗だとかなんとか言って...確かに、あの竜巻を見て驚いちゃったけど、でもまだ信じられない自分がどこかにいる。信じてはダメなんだと、そう言い聞かせる自分がいる。

 それが消えない限りは、この人とまともに話すことは不可能だろう。

 にしても、相変わらず階段は消えっぱなしだし、身内の誰一人として助けにくる気配がない。多分、今目の前にいる人が私を寺の前に寝かしてくれたんだ。だからさっさとお礼を言って、出口を探さなければ。


 「...抜けることはできぬぞ、人間」


 「え?」


 今後の予定について色々と考えていると、ふと彼が呟いた。その言葉はまるで、私の考えが手に取るように分かっているような。

 本当に、神なの?


 「そなたはここから出ようとしている。そして、私を信用していない。...はて...その問題を、どこから解決するべきか...」


 「待ってください!!」


 異常イレギュラーな状況に、私はつい声を荒げてしまった。急に口を開くようになった私に少し驚いたのか若干後ろに上半身が反り返っている。仮面を被っているので表情までは窺えない。


 「やっとまともに口が利けるようになったな」


 フッと鼻で笑ったような声がした後、彼は私に近づいてきた。それにびっくりしたのでつい後ずさりをする。逃げるな、と言われできるだけ止まるように頑張ってみたが、うん。怖いな。


 「何を警戒している?お前を助けてやったのは私だ」


 それは分かっている。分かってるけどさぁ......。

 

 「......何で服が血塗れなんでしょうか」


 さっきから警戒していたのはそのせいだ。どす黒い血に染まった彼の服を見て、私は警戒している。返り血...だ。彼に傷が見当たらない。だ、誰の血!?


 「?あぁ、これか?」


 ハハッと声を出して笑い、彼は上着のようなものを一枚脱いだ。

 ならばそうと早く言えばいいのに、と彼は言った。言いにくいでしょ!?血塗れですよ、なんて日常会話じゃあり得ない話だからね!?普段から血塗れの人なんていたらもう警察行きだよねぇ!?


 「先程、食べごろの熊が見つかってな。綺麗に避けきれずに返り血を浴びてしまったのだ」


 「へ、へぇ...」


 たべごろの熊って......。貴方はいつの原始人ですか。本当にこの人は天狗なの...?

 半信半疑の目で私は彼を見つめていると、額にデコピンをかまされた。


 「お前も往生際の悪い奴だな。いい加減信じろ」


 若干切れ気味で言われ、私は大人しく信じざるを得なかった。

 ...確かに私は、神や妖怪の類を信じるほうだけど、でも...実際に会いましたとなると...正直なぁ......。

 その日、日が完全に落ちて天狗さんに呼ばれるまで、ずーっとその場で固まっていたのでした。

次回更新予定:10月中

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