ヴァンパイア1
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林優也は、半年近く部屋からでていない。
彼は就活に失敗したのだ。別に彼の能力が劣っていたわけでも、コミュニケーション能力がない訳でも容姿が悪いわけでもなかった。
彼はただ、運が悪かったのだ。偶然、彼の志望した会社に彼以上の能力を持つライバルがいた。会社側はそちらを取った。それだけである。
しかし、この出来事は、生まれてから大学を卒業するまで、失敗という失敗をしたことのなかった彼の心に大きなダメージをあたえた。
彼が挫折し、部屋に籠ってしまう理由としては、十分だったのである。
彼はひとり暮らしで、親にはハローワークに通っていると嘘をついていた。
少ない仕送りで周りとの関係を断ち、一切の光を入れない窓を設置し暗い部屋の中ですごす。食事もデリバリーだのみである。
はらへったな...
この日も彼は、蕎麦の出前を頼もうとした。インターネットで注文し届くのを待つ。
電話を使わなかったのは、この半年間、誰とも話さなかったため、コミュニケーション能力が著しく低下したからである。
部屋の前に、お金と、『お金はおいておくので、商品はここに置いておいてください』という張り紙を設置し、部屋へもどる。
蕎麦を待つ間、彼は株の調子を確認する。
彼もただ部屋に籠っていたわけではない。株やFX、動画投稿などを試みた。しかし、どれも目がでず、それが彼を更に苦しめることとなったのだ。
「今日もだめか...」
彼は、誰もいない部屋でそうひとりごちた。
そうして、自分は何をしているのだろうか、と自己問答する。最後には自分は生きている必要が無いのではないかという暗い感情が沸き上がる。引きずり込まれそうな感情の渦に抵抗し、彼はその気持ちを振り切った。
毎日この繰り返しである。彼の精神はボロボロになっていた。
そのうちに、玄関の方から物を置くおとが聞こえた。人が居なくなったのを確認し、彼は蕎麦をとりにドアを開けた。
その時だった。彼は外の雰囲気にいつもと違う異様物を感じたのだ。
眩しい。
そう、眩しかったのだ。時間は夕暮れ時。眩しいと感じるなんておかしい。
自分がおかしいのか周りがおかしいのか、彼は少し不安になりながらも部屋に戻る。少々の違和感はあるが、その程度でどうこうなる話ではないとたかをくくっていた。
しかし、蕎麦を食べた瞬間違和感は無視でき無いものとなった。
まずい。
かつて蕎麦をこれほどまずいと感じたことなどないというほどまずかったのである。
これにはさすがの彼も病気を疑った。
直ちに病院に行く必要がある。こうして彼は半年ぶりに外出するのだった。
ーーーーーーー
結果から言うと彼は病院にたどり着けなかった。
それどころか、今、銀髪紅眼の美女と相対するという状況が発生している。
ことのあらましを説明しよう。
家をでてすぐに、彼は極度の空腹感に襲われた。それだけではなく、道行く人々を『美味しそう』と感じるようになったのだ。この人たちを襲ってしまいたい。そんな感情が徐々に膨らんでいく。
これはヤバイ
原因はわからないが確実に良くないことが起きている。このままではまずいと思い人気のない路地に駆け込んだ。
その時である
「強い力が生まれる気配を感じてはるばるきてみましたが、こんなものデスか。残念デース」
声のする方を振り向くと銀髪紅眼の美女が立っていた。
こうして先ほどの、状況が生まれたのである。