第九十八話【冒険者との会話】
「わ、私?」
「はい。お願いしたいです」
どうせついて来てもらうなら美人さんがいい。
もしかしたら帰り道の間に、恋が芽生えるかもしれん。
「え、でも……私のことが怖くないの?」
怖い?
「どうしてですか?」
「さっき初めて君と出会った時……かなり威圧したんだけど」
あー、なるほどねぇ。
それでちょっとだけ圧を感じたのか。
少し怖かったもん。
けど、美人だからそんなのは中和されてしまうぜ。
実際俺は殺気やら威圧やらに慣れているんでな。
うちの親父やら裏闘技場やらと関わっていたら、慣れない方がおかしいわ。
「確かに少し息苦しかったですけど……別に悪い人には見えませんし。とても綺麗ですよ?」
純粋な子供アピール。
いや、実際にも純粋だけどね?
「そ……そっか」
少し頬を赤らめて嬉しそうなレイナさん。
おぉ、好感触。
このまま行けば……いい関係になれるかもしれん。
そんなことを考えていると、
「いや、悪いがだめだ。青い閃光レイナが抜けると戦力に影響が出る」
カールさんが水を差して来やがった。
おいっ!
いい加減にしろよ、おっさん。
言っていい冗談と悪い冗談があるだろうが。
その後も話し合いが続いた。
しばらくして。
どうしてこうなった?
俺は今、植物がてんこ盛りの山の中を移動している。
横には女性冒険者。
お世辞にも美人とは言えない容姿。
緑髪で眼鏡を掛けている。
なんでこいつやねん!
話し掛けて来るから鬱陶しいし。
もっと別の人がよかったわ。
欲を言えばレイナさんがよかったわ。
あの赤らめた顔……可愛かったなぁ。
俺のお母さんと同等レベルの容姿かもしれん。
青い閃光っていう名前もかっこいいし。
レイナさんと比べたら、学校内で可愛い、美人などとおだてられている女子なんて大したことない。
そんな女性と一緒に街まで戻れる予定だったのに……気付いたら緑眼鏡さんになっていた。
何て日だ!
「ねぇねぇ、君ってどこに住んでいるの?」
緑眼鏡さんがそう質問して来た。
答えたくねぇなぁ。
「個人情報なので……」
「へぇ、案外しっかりしてるねぇ。……そういえば君って確かCランクだったよね? 冒険者はいつから始めたの?」
興味津々の眼差し。
まあ、これくらいなら答えてもいいか。
あまり何も言わないっていうのも不自然だ。
「十歳の時。……俺の家はかなり貧乏で好きな物も満足に買うことが出来なかったので、お小遣い稼ぎをしようと思ったのが発端です」
適当な作り話である。
自分で言うのもなんだが……俺っていつの間にか嘘を付くのが上手くなっているな。
なりたくないのに。
「そうなんだ。大変だったんだね」
悲しそうな顔をする、緑眼鏡さん。
同情するなら金をくれ。……たくさん持っているけど。
俺は返事をすることなく、歩みを進める。
「あのさ、名前なんて言うの?」
うぜぇ。
「個人情報なので、お答え出来ないです」
「まあそう言わずに。……私、誰にもばらさないから」
「そうは言っても、教えたくない」
「えぇー、冷たい」
こいつ、しつけぇ。
俺は返答することなく、歩みを進める。
「ちょっと顔を見せてもらってもいい? 声からして、ものすごい可愛い気がするんだけど」
はいはい、そうですか。
「嫌です」
俺はそう答えて、フードを更に深く被ると、歩みを進める。
「彼女さんとかいるの?」
……。
「いえ、いません」
「そうなんだ。なんかいそうな雰囲気だったんだけどなぁー」
歩みを進める。
少しして。
……この女、まだ質問を続けて来てやがる。
しつこすぎるわ。
「どんな女の子がタイプなの?」
「……」
「まさか、さっきの青い閃光レイナさんとか?」
「まあ、そうですねぇ~」
質問攻めがうざいので冗談っぽく本音を言ってみると、緑眼鏡さんは目をパッと開け、同時ににやけ始めた。
「へぇ~、じゃあ今度伝えておいてあげるね」
STOP!
「いや、止めてくださいよ?」
「言っちゃうもん! ……全く、隅に置けないねぇ~」
本当にうぜぇ。
いい歳こいて何が、もん! だよ。
全然可愛くねぇよ?
読んでくださりありがとうございます。




