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第六十七話【彼女との会話】

 俺とリランディさんは周りからの視線を若干集めつつも校舎外へ出ると、食堂に移動した。

 

 そう、今は昼休みである。

 昼休みは学校生活の中でもかなり好きな時間だ。

 何故かというと、昼ご飯を食べることが出来るからな。

 俺は言わずもがな昔から食事が大好きだ。

 この食堂は何を食べても幸せな気持ちになれる。

 値段の割には量もそこそこあるし、まじで最高。


 爆食いをしていると未だに周りからの注目を集めるが、それももう慣れた。

 欲しい物を欲しいだけ食らう。

 その行為が、俺の強さを支えているとも言えるだろう。

 実際トレーニングをしても、食べないとあまり体は成長しないのだ。

 その為、俺は毎回気持ちが悪くなるほど食べるのである。

 

 

「あら、いらっしゃい。今日も彼女と仲良く食べるのかい?」


 中に入ると、カウンターの方からそんな声が聞こえて来た。

 

 向いていると、いつものおばちゃんがこちらを見ている。


 食堂のおばちゃんは俺のことを覚えてくれていて、よくカウンター越しで話をしたりするのだ。

 どうやら俺はたくさん食べる為、初対面の時からインパクトがあったらしい。

 そして、そんな俺の彼女であるリランディさんも最近顔を覚えられた。


 あくまで『俺の彼女』という認識らしいが。

 まあたくさんの生徒がいる中で覚えられる方が珍しい。

 

 おばちゃんの言葉に対し俺は、会話をしている邪魔くさい女子グループを避け、カウンターに向かいながら、

 

「うん、そうだよ。じゃあ今日もいつもの量をおすすめで」

「あいよ」

 

 俺は最近注文をすべておばちゃんに任せている。

 食べる量は大体把握してくれている為、その量の料理を適当に出してもらう。

 わざわざ注文をしなくてもいいからめちゃくちゃ楽だぜ。


「レインくん。今日もたくさん食べるの?」

 

 隣にいるリランディさんが呆れたような表情で聞いて来た。


「ああ、食べないと強くなれないし。‥‥‥えーっと、リランディさんは何を食べる? 俺が買ってあげるけど」

「じゃあ‥‥‥野菜スープとパン一つ!」


 俺が問いかけてすぐリランディさんがカウンターのおばちゃんにそう言った。

 するとおばちゃんは微笑みながら答える。

 

「あいよ。ちょっと待ってな」


 リランディさんのこの行動は、少々厚かましく見えるかもしれんが、俺は気にしていない。

 むしろこのくらいのほうがいい。

 正直言って、無駄に遠慮される方がうざい。

 よく分からんダイエット中アピールをして来たり、彼氏の前だからと言っていつも通りに食事をしない女子は嫌だね。

 

 その後、俺とリランディさんはそれぞれ料理を受け取ると、空いていた席に座って食べ始める。

 

 うむ。

 やはり美味である。

 目の前に美少女がいる為、いつも美味しい料理が更に美味しく感じるぜ。

 

「ねぇ、最近騎士コースの授業はどう?」


 彼女が野菜スープを口に運びながら、そう尋ねて来た。

 

「まあ、いつも通りかな。今日の一限目でクロード先生に頭を叩かれたことを除けばだけど」


 実話である。

 

「えっ? レインくんって去年のFクラスでよく叩かれていたけど、まだやられてるの?」

「うん、あの先生は俺が授業中に寝ているだけで、拳骨を入れて来やがるんだよ」


 するとリランディさんは鼻から空気を出しつつも笑う。


「ふふっ、それはレインくんが悪いからでしょ? 全く、相変わらずね」

「この前なんてさ、殴られたあとに筋肉熊って呟いたら、黒板から俺の席まで拳を握りしめて猛スピードで戻って来たんだぜ? 全く陰口を呟く暇すらありゃーしないよ」


 実際頭の中心を殴られた程度じゃそこまでダメージはないのだが、結構脳が揺れる。

 あの巨体で思いっきり振りかぶりやがるからな。

 思った以上に視界がドロドロになる。

 だから、出来ることなら体を殴って欲しいわ。

 

「ふふふ、そうなんだ」


 彼女はとても楽しそうだ。

 なんか話している俺も嬉しくなって来るぜ。

 

「あ、そういえばリランディさん?」

「どうしたの‥‥‥? というか、私をいちいちそう呼ぶのは面倒くさくない?」


 あ、確かに。

 普通よりかは長いな。

 正直三文字くらいがいい。

 でも、

 

「他になんかいい呼び方ある?」

 

 そんな俺の問いかけに、リランディさんは顎に手を当てつつも視線を横に向ける。


 そしてしばしの沈黙が流れた。

 

 ……これって本来、俺が考えるべきなのか?

 

 ふっ。

 俺はこう見えてネーミングセンスには自信がある。

 例えばリランディだから‥‥‥。

 ランディー。

 リン。

 ラン。

 ディン。


 苗字も組み合わせてみよう。

 彼女の苗字はリーフだから。

 フーリ。

 ディーフ。

 フリン。

 

 ‥‥‥おい、今彼女の名前にフリンとかつけたの誰だ?

 おーん!?

 不倫されるだろうが、こら!

 潔く名乗り出て来いよ!


 て、俺か。

 

「───リディ」


 不意に彼女がそう呟いた。

 

 ほぉ~う。

 リディか。

 中々いいじゃねぇか。

 この俺のネーミングセンスを超えて来るとは‥‥‥お主、何者じゃ?

 

 でも、まじでいい名前だと思うわ。

 可愛い。

 

「じゃあ、リディさん。今日の放課後って暇?」

「うん、暇だよ?」


 よし。

 

「少しだけ街中へ遊びに行きたいなと思って。どうかな?」

「勿論! 行きたい!」

 

 授業が一通り終わってから、正門が閉められるまでは大体二時間ちょっとくらいある為、近場であれば出かけることが出来る。


「でも、どこに行くか決めていないんだよね」


 俺の言葉にリランディ‥‥‥リディさんは口を尖らせる。


「もう! ちゃんと決めておいてよ。こういうのは男子がエスコートしてくれるものよ?」

「はい、すみません」


 少し怒っているような表情をしているものの、どこか嬉しそうでもある。


「まあ、いいけど。因みに私はカフェとかに行って紅茶でも飲みたいな」

「俺の奢りで?」

「うん、奢らせてあげるから、感謝してね?」

「ありがとう! ‥‥‥じゃねぇよ?」

「ふふっ」


 なんで奢ってあげてお礼を言わないといけんのだね?

 そっちのペースに持ち込もうとするなよ。

 俺は自分のペースで話を進めたいんだよ。


「じゃあ商店街に美味しい所があるから、放課後に行こう」

「ほんと? ありがと!」


 そう言って手を合わせて喜ぶリディさん。


「あ、そういえば。野菜スープとパンだけじゃ足りないでしょ? この中のやつを好きに食べていいよ?」

「食べれないのに注文しすぎてごめんなさいは?」

「はい、申し訳ありません‥‥‥……いや、食べれるわ!」

「ふふふ」


 とても嬉しそうに笑いやがる。

 感覚で分かる。

 この子はSだ。

 攻めることに快感を覚える子だ。

 そして将来、夫を尻に敷くタイプ。

 

 う~む。

 じゃあこのまま行ったら、俺って尻に敷かれるのか‥‥‥。

 

 それはそれでいいかもしれん。

 この子になら‥‥‥って、あまりこういうことを考えるのは止めておこう。


 

 やがてすべての授業が終わり、とうとう放課後がやって来た。

読んでくださりありがとうございます。

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