第四十話【授業開始】
翌日。
今日は授業が始まる日である。
一年Fクラス最初の教科は、魔法学。
今現在自分の席に座って、ローブを着た髪の長い女性教師の話を聞いているのだが‥‥‥正直言ってものすごく暇だ。
黒板に魔法学の公式っぽいのが書かれているけど、全く意味が分からん。
話の内容も分からないしな。
そもそも俺は二年生になって魔術師コースへ入るつもりはない。
一応魔法が使えない平民にも、魔法薬を作ったりするような就職先はあるらしいのだが、そんな所で働くつもりも勿論ない。
つまりこの授業は聞かなくても良いということだ。
よし、寝よう。
俺は教科書の上に顔を伏せ、眠りについた。
二、三限目、武術訓練。
日本で言うと体育か?
俺たちFクラスはそれぞれ体操服に着替え、広い運動場に集まった。
「おーし、お前たち全員集合したな? 今から授業内容を説明するからよく聞いておけよ?」
Fクラスの担任である、体がでかくて強面なクロード先生がそう言って生徒全員を見渡したあと、言葉を続ける。
「俺が教えていくのは基本的に剣術だ。今日ここに全員分の木刀を用意してあるから、説明が終わったあと取りに来い。今回は木刀同士の打ち合いだけで、体への接触は禁止とする。本来は最初に色んな型を教えていくんだが、このクラスにはシャーロット流剣術を扱う奴がいるからな‥‥‥俺も興味があるし一旦見せてもらうことにする。大丈夫か? シャーロット」
先生の問いに対し、十歳とは思えないほど大きな体の子は真顔で答える。
見せてやりますよ、とでも言わんばかりの表情だ。
「はい、いいですよ」
「よし、そうと決まれば相手を選ばないとな‥‥‥アルトリアでいいか。じゃあ二人とも木刀を持て」
「えっ!? どうして俺なんですか?」
突然の提案に、俺は思わず声を上げてしまった。
何でこんな平民を選んだんだ!?
しかもアルトリアでいいか‥‥‥って、俺に拒否権はないのかよ!
決定しとるやないか!
疑問を浮かべている俺の姿を見たクロード先生は、当然だと言わんばかりの表情で答える。
「お前はシャーロットと同じくらいの身体能力を持っているからな。ということで始めるぞ!」
シャーロットくんはやる気満々の顔をして、かごの中に入ってある木刀を一本手に取り、素振りをしている。
‥‥‥まぁいいや。適当に終わらせよう。
ルールは身体への接触禁止で、木刀同士の打ち合いのみ。
俺は木刀を手に取り、一度だけ軽く素振りをする。
あー、やっぱり剣を持ったら親父との特訓を思い出すなぁ。
俺の得意な剣術は、親父が独自に創ったもので、確かその中に相手の剣を払い落とす技があったはず。
あれを成功させるのはかなりの力が必要で、やり方は相手が持っている剣の丁度半分辺りの長さの部分を叩く。
そう、圧倒的な力で叩き落とすのである。
親父らしい技だぜ。
まあとにかくそれを使ってシャーロットくんの木刀を地面に落とし、手早く終わらせよう。
そう考えつつも、シャーロットくんと一定の距離を取る。
「よし、どちらも準備は整ったな? それでは開始!」
俺は木刀を構えて先生の言葉と同時に地面を蹴って走り出し、相手の近くまで行くと、シャーロットくんの木刀の中心を自分の木刀の先端で叩き、吹っ飛ばした。
「いいかお前ら、シャーロットの剣をよく見て‥‥‥は!?」
先生の言葉が途中で止まる。
あらっ‥‥‥これってすぐに終わらせない方がよかったパターン?
静かな中、木刀が地面に落ちた時の、カランッ! という音が響く。
「‥‥‥勝者アルトリア‥‥‥ってお前今何した!?」
クロード先生が厳しい表情をしてこちらに近付いて来る。
「あ、これはお父さんとの訓練中に自分で編み出した技です」
本当は、親父の技です。
本当は、ただ単に力で吹き飛ばしただけです。
俺の言葉を聞いたシャーロットくんは地面に落ちている木刀を拾うと、こちらに向かって歩いて来る。
「今の技‥‥‥俺の知っている中にもないぞ?」
「へぇ、でも適当に創った技だから、正規の剣術にないのは普通だと思うよ?」
「は? 適当に創っただと!? アルトリアみたいな体格の小さい奴が、俺のように大きい相手の持っている剣を落とす技をか?」
なんかおおごとになって来ているような‥‥‥。
「あ、うん。編み出した本人も成功確率が低いから、人に教えたりするのは無理なレベルだけどね」
あとで教えてくれとか言われたら面倒くさいので、先に釘を刺しておく。
俺の回答に、クロード先生とシャーロットくんは納得していないようだったが、まあいいだろう。
そこでふと赤髪ロストくんが視界に入って来た。
‥‥‥彼は俺を睨んでいるようだ。
うん、無視しておこう。
とそこで、ロストの近くにいる金髪でロングヘアーの女の子が視界に入って来た。
あんな子‥‥‥うちのクラスにいたっけ?
人数が多すぎて全然把握出来てないわ。
てかめっちゃ可愛いんだけど。
大きめの目に、俺と同じくらいの身長。
その子はキラキラとした目で、俺を見つめている‥‥‥ような気がする。
あくまで勘違いかもしれないけどさ、あの子って俺のことかっこいいって思っているんじゃね?
とても可愛いし、かなりストライクゾーンだからちょっとマークしておこう。
その後俺たちFクラスは、一度シャーロットくんの剣術の型を見たあと、先生による基本的な騎士の剣術を教わっていった。
うん、今度からは親父流剣術を使うのは止めておこう。
目立ってしょうがない。
四限目、美術。
これは美術室で受ける授業である。
何の偶然だろうか美術室の隣の席の子は、さっき俺がマークしていた金髪ロングヘアーの女の子だ。
やばい、めっちゃ嬉しいんだけど。
うひょー。
黒板に貼られている紙に書いてあった席順の名前を見た感じ、彼女はリーフ=リランディというらしい。
‥‥‥う、美しい。
見た目のみならず、名前まで綺麗だとは。
因みにこの授業の先生は、ピンク色の髪でいろんな色の絵の具がついている白衣を着ている女性だ。
ものすごくカラフルやん。
雨上がりに出て来る虹か!
そんな先生は、Fクラスの生徒全員が席に着いたのを確認した後、口を開いて話し始める。
「はい、みなさん。席に着きましたね? あ、私の名前はカラルと言います。気軽にカラル先生と呼んでくださいな‥‥‥えーっと、それじゃあ早速授業を始めましょう。みんなの目の前にペンと紙があると思うのでそれを使って隣の子の似顔絵を描いていってね」
おぉ、まじか。
絵を描くこと自体あまりないけど、結構自信あるぜ?
俺はペンを手に取り、金髪ロングヘアーことリランディさんの顔を確認する為に横を向く。
すると目が合った。
向こうは俺の顔を見るなり、にっこりと笑う。
「君、さっきの武術訓練でシャーロットくんに勝っていた子だよね?」
うわ、話しかけて来た。
俺は緊張でかなり動揺しつつも答える。
「あ、うん。‥‥‥そうだよ」
「やっぱり! 君とてもかっこよかったよ?」
‥‥‥あれ? この子、俺のことが好きなんじゃね?
やばいくらい可愛いんだけど。
正直ハーレムどころか、可愛い彼女の一人すら出来ないんじゃないかと諦めていたけど‥‥‥いけそうじゃない?
俺は自分の耳が赤くなっているのを実感しながらも、作り笑いをして口を開く。
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」
その後俺は、リランディさんと会話をしつつも似顔絵を描いていった。
いや~、リランディさんってまじでいい子だわ。
他愛もない会話をしていただけなのだが、彼女はどんな話題からも面白さを引き出してくれたりした。
俺、美術の授業好き。
日本の学生時代の頃からイラストを描くのは大好きだったし、何よりリランディさんと話が出来るからな。
読んでくださりありがとうございます。




